本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画

今こそ見てほしい、中東欧やロシアが舞台の映画

ロシアによるウクライナへの侵攻のニュースに毎日じりじりしている中で、今までに観た映画やドラマの場面が頭をよぎることがあります。 断片的でも、間接的でも、今こそ中東欧を知るために役立つかもしれない映画について、まとめてみることにしました。 チ…

映画『フォレスト・ガンプ 一期一会』

年末年始にぴったりの、心温まる映画をご紹介します。 戦後アメリカの歴史を駆け抜けた架空の人物の活躍を軸に、人生や人の出会いについて考えさせられる名作です。 それでいて押しつけがましさが一切なく、爽やかで温かいファンタジーを観たような不思議な…

映画『マイ・インターン』

観終わったときにスカッとして元気がもらえる、ニューヨーク発のお仕事ものコメディをご紹介します。 本作『マイ・インターン』は、同じくニューヨークを舞台としたお仕事ものコメディ、『プラダを着た悪魔』の姉妹編として紹介されることが多いです。 klein…

映画『萌の朱雀』

『殯の森』に続き、河瀨直美監督作品をご紹介します。 同じく監督の故郷・奈良(こちらは吉野)で撮られた作品です。 短く素朴なストーリーと、現地に身を置いているかのような雄弁な映像が印象的な映画です。 カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています…

映画『キサラギ』

邦画のコメディミステリをご紹介します。 過去の事件を、限られた空間でメイン数名が語り合いながら解決していくという、密室安楽椅子探偵風ストーリーですが、めちゃくちゃスピード感があります笑 ネタバレ要素を含みます。 あらすじ 明らかになる人間関係 …

映画『殯の森』

河瀨直美監督が、故郷の奈良を舞台に撮影した映画をご紹介します。 カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した、国際的にも評価の高い作品です。 ネタバレします。 あらすじ 大切な人を亡くしたのち、奈良県東部の山あいにあるグループホームで働き始めた介護…

映画『麦の穂をゆらす風』

アイルランドの歴史の一場面を切り取った、ケン・ローチ監督の映画のレビューです。 最後まで余すところなくネタバレしていきます。 主演は近年ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』シリーズで活躍したキリアン・マーフィです。 あらすじ 徹底的に戦うという…

映画『花束みたいな恋をした』

「カップルで観に行くと別れる映画」として、話題を博した恋愛映画をご紹介します。 どこかにいそうな感じがする二人なのに、レビューがたくさん出てくるのは、いろんな「あるある」を詰め込んだ作品なのだと実感します。 ネタバレでお送りします。 あらすじ…

映画『ひとよ』

ここ数年、話題の作品を発表し続けている白石監督の秀作をご紹介します。 重い過去を負った家族の、ぶつかり合いと再生を描いた作品です。 最後までネタバレします。 あらすじ 家族の崩壊 家族の再生 新人運転手の葛藤 家族とは おわりに あらすじ 茨城県大…

映画『世界一キライなあなたに』

めちゃくちゃ泣いてしまうのに元気をもらえるイギリス映画のレビューです。 ネタバレでお送りします。 あらすじ ルーとウィル ウィルの変化 自分の人生を決める権利 他作品との比較 幸せとは おわりに あらすじ 地元で働き、家計を支える若い女性ルーは、あ…

映画『リリーのすべて』

世界で初めて性別適合手術を受けた、デンマークの人物を主人公とした映画のレビューです。 男性の身体に生まれ、女性の心を持った画家が、妻とともに本当の自分を模索していくストーリーです。 思いっきりネタバレします。 あらすじ 実在の人物リリー・エル…

映画『レディバード』

カリフォルニア州の田舎町を舞台とした、ある少女の成長物語のレビューです。 高校時代独特の背伸び感やイタさ、混乱の感覚を思い出して「あるある……!」となってしまう秀作でした。 アメリカ本国でも高い評価を受けています。 色々ネタバレしてます。 あら…

映画『嫌われ松子の一生』

邦画のなかでトップクラスにおすすめな作品をご紹介します。 海外の邦画ファンからも絶大な支持を誇る名作です! いろいろネタバレしております。 あらすじ 松子という女性 コミカルなミュージカル仕立て 松子と出会った人々 キリスト教の愛の概念 松子の一…

映画『おおかみこどもの雨と雪』

細田守監督のアニメ映画のレビューです。 ファンタジーと家族ドラマの融合を、北陸の美しい自然とともに綴る秀作です。 ネタバレでお送りします。 あらすじ 実在の風景とのつながり 子育てという日常を非日常に 主人公の描き方 成長する雪と雨 おわりに あら…

映画『17歳の瞳に映る世界』

ある少女の中絶手術の経緯を負った、ロードムービーのレビューを書きました。 過剰な演出はなく、多くを語らない淡々とした構成ながら、観終わったあともずっと考えこんでしまうタイプの映画です。 男女問わず、多くの方に観ていただきたいです。 遠慮なくネ…

映画『モスクワは涙を信じない』

人生初ロシア映画のレビューです。 ソビエト連邦時代の1980年に製作され、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。 タイトルはロシアのことわざだそうですが、冷たそうな響きと裏腹に、とても温かい映画でした! ネタバレでお送りします。 あらすじ あ…

映画『灰とダイヤモンド』

第二次世界大戦終戦を迎えたポーランドで、激動の歴史の一場面を切り取った映画をご紹介します。 ポーランドの黒澤明ともいうべき、アンジェイ・ワイダ監督の作品です。 ネタバレでご紹介します。 あらすじ 映画の背景 検閲対策 ポーランドの分断 隅々まで雄…

映画『新聞記者』

実在の事件をモチーフに、政治とメディアの在り方を描いた邦画をご紹介します。 緊張感のある脚本と映像に、目が離せないまま終わる作品です。 いつも通りネタバレします。 あらすじ 現実社会の投影 国という組織 メディアの在り方について 大学の謎 おわり…

映画『セントラル・ステーション』

人生で初めて観たブラジル映画のレビューです。 ヒューマンドラマでありながら、ブラジルという国の多様性と自然の雄大さを伝える映像にも圧倒される作品でした。 かなりネタバレしてます。 あらすじ 極悪ではないが善良でもない主人公 踏んだり蹴ったりの旅…

映画『黄泉がえり』

竹内結子さんの訃報を聞いて再鑑賞しました。 草彅剛さん、竹内結子さんの二人がメインキャストです。 観たのが大昔だったのでかなり忘れていました。 いつも通りネタバレでお送りします。 あらすじ 死と癒やしを見つめるヒューマンドラマ 辛い別れのなかで…

映画『サンセット大通り』

歳を取るのが怖くなる要素を詰め込んだ、フィルム・ノワールの秀作をご紹介します。 脚本の神様ビリー・ワイルダーによる作品です。 ネタバレがありますので、ご注意ください。 あらすじ ノーマという狂気 後悔すらできないこと ジョーという人物 映像作品と…

映画『西部戦線異状なし』

第一次世界大戦を若い兵士の視点から切り取った名作のレビューです。 派手な演出はないながら、粛々と不戦を訴える内容に高い評価を得た作品です。 あらすじ 反戦映画の代表格 第一次世界大戦とヨーロッパ 戦地を離れて おわりに あらすじ 第一次世界大戦下…

映画『幸福な食卓』

三浦春馬さんの訃報を聞いて、しばらくして思い出した映画。瀬尾まいこさんの小説が原作の、ある家族のお話。 一度は壊れかけた人と家族が、透明感ある優しさでつながり、再生していく過程が、長野の美しい自然を背景に綴られます。

映画『市民ケーン』

たびたび名作と紹介されるモノクロ映画の一つ『市民ケーン』のレビューです。 ある富豪の生涯を追ったストーリーを、ご紹介・解説していきます。 あらすじ 出会いと別れ ケーンと「買う」こと ケーンと「愛する」こと バラのつぼみ おわりに あらすじ フロリ…

映画『羅生門』

白黒映画史上屈指の映像美と、人間のエゴを浮き彫りにする脚本が国際的な注目を浴びた黒澤明監督作品のレビューです。 今は亡き三船敏郎さんの名演も特筆すべき特徴です。 ネタバレしながらお送りします。 あらすじ 映像の美しさ 脚本の妙 おわりに あらすじ…

映画『gifted/ギフテッド』

大好きな映画だけど複雑すぎてなかなかレビューを書けなかった一作です。 天才的な頭脳を持って生まれた女の子と、彼女にとってベストな環境を探る叔父の絆に考えさせられる作品です。 ネタバレでお送りします。 あらすじ 天才的な子どもということ イヴリン…

映画『トールキン 旅のはじまり』

『ロード・オブ・ザ・リング』原作者の半生を追った映画のレビュー・紹介記事です。 基本的には『ロード・オブ・ザ・リング』を観た方、原作の『指輪物語』を読んだ方向けのお話です。 私は映画視聴済み、原作読了済みなので、もちろん隅々まで堪能してまい…

映画『パラサイト』

今年のアカデミー賞作品賞受賞作をご紹介します。 ネタバレせざるをえないのでネタバレしながらレビューいたします。 あらすじ 前半と後半のメリハリ 比較と不幸 金持ちだからこそ おわりに あらすじ 半地下の薄汚い住居で暮らす四人家族、キム一家は、全員…

映画『蜜蜂と遠雷』

人気音楽小説の映画化作品をご紹介します。 原作を読んだから、松岡茉優ちゃんが好きだから、というある意味安直な理由で観てみた本作ですが、これが大当たりでしたー。 原作より素晴らしいと思った映画化作品は初めてかもしれない。 映画館で観てから時間が…

映画『17歳』

フランソワ・オゾン監督による、ある少女の一年を追った映画をご紹介します。 たくさんの人にあまねく響く内容ではないかもしれませんが、個人的にはかなりポイントの高い映画です。 性的描写の多い映画なので、苦手な方はスキップして頂いた方がいいかもし…