本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『マイ・インターン』

観終わったときにスカッとして元気がもらえる、ニューヨーク発のお仕事ものコメディをご紹介します。

本作『マイ・インターン』は、同じくニューヨークを舞台としたお仕事ものコメディ、『プラダを着た悪魔』の姉妹編として紹介されることが多いです。

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メインの人物を同じアン・ハサウェイが演じていますが、ストーリーは完全に独立しており、まったく違う人物が主人公となっています(前作は出版社秘書、本作では起業家)。

ネタバレでお送りします!

 

 

あらすじ

リタイアして妻も亡き後、穏やかな一人暮らしをしていたベンは、ある日シニア・インターンの求人を見つける。

西海岸にいる息子家族との交流や、趣味では埋められないものを感じていた彼は、新たな生きがいを求めて応募。

見事合格し、ブルックリンでアパレルのオンライン販売を手掛けるスタートアップ企業に採用されたベン。

社長のジュールスを筆頭に、若い同僚ばかりの職場に始めは戸惑うも、徐々に彼らとの親交を深めていく。

そんななか、公私ともに苦境に陥っていたジュールスも、しだいにベンを頼るようになっていく。

 

年齢を越えた友情

本作の見どころは何と言っても、ベンと、ジュールスをはじめとした同僚たちとの年齢を越えた絆です。

彼らが働くアパレル企業は、ブルックリンの中でもお洒落に再開発されたダンボ地区にあります。

そして、ジュールスが起業して数年のスタートアップ企業の同僚たちは、20代と思しき若者ばかり。

ベンにとっては子ども以上に年の離れた人々で、最初は戸惑いがちです。

採用活動の一環で、「自己PR動画をここにアップロードしてね」という指示に手こずる場面なんかもリアリティがありました。

しかし、謙虚な姿勢で、年の功からのアドバイスをしてくれるベンに、徐々に若者たちが信頼を寄せていくように。

実際はこんなにフラットに若者に接してくれる人はなかなかいないと思いますが、違う世代同士でもこんな風に仕事仲間になれたらいいな、と思わせる描写です。

尊敬する人に会うときのファッションチェックや、好きな人へのアピールの仕方など、冷静になればわかることが、若い時には意外と実践できなかったりします。

年長のドライバーの不祥事を諫めたりするのも、若者にはなかなかしづらいことかも。

それを的確に指摘してくれるベンが、人生の先生役として描かれていました。

そして、ベンが疎いIT機器の使い方や、職場のルールなどを同僚たちが丁寧に教えてくれるのも温かかったです。

年齢を越えてフランクに交流できるこの会社自体が、すごく良い職場なんじゃないかなと思えました。


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明るいお仕事コメディ

穏やかで謙虚なベンと好対照をなすのが、ちゃきちゃきの創業者ジュールスです。

若くてパワフルな彼女は、母親との関係が悪いせいか、年上の人との人間関係を築くことに苦手意識を持っています。

ベンが直属の秘書に配属されても、大した用事を頼まず避けがちに。

しかし、そんな状況でもできることを見つけて働こうとする彼に、しだいに心を開いていきます。

彼女との関係に関して、ベンの歩み寄りが素晴らしいですね。

孫ほど若い女性に距離を置かれたら、自分だったら早々に心が折れる自信があります……

それでも洞察力を駆使してジュールスのニーズを汲み取り、具体的に行動するベンの姿は、ジュールスのみならず周りの同僚の信頼を勝ち得ていきます。

ジュールスが非常に優秀な実業家であることは随所から伝わってきますが、同時に成長中の若い企業ならではの問題も色々抱えています。

そうしたリアリスティックな問題や、ジュールスの人間的なエピソード(ママとの関係、家庭の問題)などのバランスが良く、奮闘する彼女と見守るベン、という構図が非常に安定感あるものとなっています。

また、中盤の山場である「ママのメール事件」でベンと愉快な仲間たちがジュールスのために一肌脱ぐ姿も、本人たちは真剣だけど面白かったです!

 

人生の決断

ジュールスは仕事とプライベートにそれぞれ課題を抱えています。

仕事の上では、急成長した会社のビジネスの中で、彼女の目の届かない部分が増えてしまっていること。

外部からCEOを迎え入れることで、より彼女のやりたいことに集中できる環境を整えるよう、投資家から促されています。

しかし、ジュールス自身は自分で経営や管理を行いたいという希望が強いため、誰かに会社トップを任せることに抵抗を覚えています。

いっぽう、CEO雇い入れを考えたのにはもう一つの理由があります。

それは家族との時間を確保するため。

ジュールスには専業主夫となって彼女を支える夫マットと、小さな一人娘がいます。

二人との時間を確保するには、経営者としての業務を誰かに任せたほうが良い、という気持ちがあるわけです。

そして実際、マットの心がジュールスから離れつつあると知った彼女はショックを受けます。

それでも、自身のキャリアを捨てて家庭に入ってくれたマットを突き放す気になれず、今の家族のかたちも失いたくないジュールス。

ベンに打ち明け話をし、どちらもかけがえのない仕事と家族について真剣に考えることになりますが……

二人で状況に向き合った結果、どのような決断がされるのか、ぜひ見守っていただきたいと思います。

 

おわりに

お仕事もの、コメディ、ヒューマンドラマなど様々な要素が詰まった珠玉の名作です。

仕事に邁進すれば家庭との両立に悩む、引退したあとの生きがい探しに戸惑う、年齢の離れた人との関係を築くのに奮闘するなど、映画を観ている私たちにもどこかリンクしそうな状況が巧みに描かれています。

それらが爽快に、だけどリアリティを残して解決していく様子にスカッとしますし、観終わった後元気になれる作品です。

爽やかなコメディ映画をお探しの方にお勧めの映画です。