本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

邦画

映画『萌の朱雀』

『殯の森』に続き、河瀨直美監督作品をご紹介します。 同じく監督の故郷・奈良(こちらは吉野)で撮られた作品です。 短く素朴なストーリーと、現地に身を置いているかのような雄弁な映像が印象的な映画です。 カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています…

映画『キサラギ』

邦画のコメディミステリをご紹介します。 過去の事件を、限られた空間でメイン数名が語り合いながら解決していくという、密室安楽椅子探偵風ストーリーですが、めちゃくちゃスピード感があります笑 ネタバレ要素を含みます。 あらすじ 明らかになる人間関係 …

映画『殯の森』

河瀨直美監督が、故郷の奈良を舞台に撮影した映画をご紹介します。 カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した、国際的にも評価の高い作品です。 ネタバレします。 あらすじ 大切な人を亡くしたのち、奈良県東部の山あいにあるグループホームで働き始めた介護…

映画『花束みたいな恋をした』

「カップルで観に行くと別れる映画」として、話題を博した恋愛映画をご紹介します。 どこかにいそうな感じがする二人なのに、レビューがたくさん出てくるのは、いろんな「あるある」を詰め込んだ作品なのだと実感します。 ネタバレでお送りします。 あらすじ…

映画『ひとよ』

ここ数年、話題の作品を発表し続けている白石監督の秀作をご紹介します。 重い過去を負った家族の、ぶつかり合いと再生を描いた作品です。 最後までネタバレします。 あらすじ 家族の崩壊 家族の再生 新人運転手の葛藤 家族とは おわりに あらすじ 茨城県大…

映画『嫌われ松子の一生』

邦画のなかでトップクラスにおすすめな作品をご紹介します。 海外の邦画ファンからも絶大な支持を誇る名作です! いろいろネタバレしております。 あらすじ 松子という女性 コミカルなミュージカル仕立て 松子と出会った人々 キリスト教の愛の概念 松子の一…

映画『おおかみこどもの雨と雪』

細田守監督のアニメ映画のレビューです。 ファンタジーと家族ドラマの融合を、北陸の美しい自然とともに綴る秀作です。 ネタバレでお送りします。 あらすじ 実在の風景とのつながり 子育てという日常を非日常に 主人公の描き方 成長する雪と雨 おわりに あら…

映画『新聞記者』

実在の事件をモチーフに、政治とメディアの在り方を描いた邦画をご紹介します。 緊張感のある脚本と映像に、目が離せないまま終わる作品です。 いつも通りネタバレします。 あらすじ 現実社会の投影 国という組織 メディアの在り方について 大学の謎 おわり…

映画『黄泉がえり』

竹内結子さんの訃報を聞いて再鑑賞しました。 草彅剛さん、竹内結子さんの二人がメインキャストです。 観たのが大昔だったのでかなり忘れていました。 いつも通りネタバレでお送りします。 あらすじ 死と癒やしを見つめるヒューマンドラマ 辛い別れのなかで…

映画『幸福な食卓』

三浦春馬さんの訃報を聞いて、しばらくして思い出した映画。瀬尾まいこさんの小説が原作の、ある家族のお話。 一度は壊れかけた人と家族が、透明感ある優しさでつながり、再生していく過程が、長野の美しい自然を背景に綴られます。

映画『羅生門』

白黒映画史上屈指の映像美と、人間のエゴを浮き彫りにする脚本が国際的な注目を浴びた黒澤明監督作品のレビューです。 今は亡き三船敏郎さんの名演も特筆すべき特徴です。 ネタバレしながらお送りします。 あらすじ 映像の美しさ 脚本の妙 おわりに あらすじ…

映画『蜜蜂と遠雷』

人気音楽小説の映画化作品をご紹介します。 原作を読んだから、松岡茉優ちゃんが好きだから、というある意味安直な理由で観てみた本作ですが、これが大当たりでしたー。 原作より素晴らしいと思った映画化作品は初めてかもしれない。 映画館で観てから時間が…

映画『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』

以前紹介記事を書いた小説がパワーアップされて映画になっていましたのでご紹介します。 イマドキの子なのに憎めない素直な主人公に、だんだんと感情移入してしまう珠玉の名作です。 ネタバレを含みます。 あらすじ 原作との比較 細部に宿る監督の魂 新米社…

映画『ラヂオの時間』

自粛中だからこそコメディで笑いたいなと思い観てみたら、想像以上に面白かったのでご紹介します。 三谷幸喜監督作品で、若かりし頃の唐沢寿明が大活躍しています。 遠慮なくネタバレします。 あらすじ ラジオドラマの生放送に向けてリハーサル中のスタジオ…

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』

不思議な展開で先の読めない邦画をご紹介します。 最後までネタバレしますのでご容赦ください。 あらすじ 七海という女性 不思議な仕事と真白 真白の母と安室 人とつながること おわりに あらすじ 派遣で教師の仕事をしていた皆川七海は、学校での仕事に身が…

映画『万引き家族』3

思いが有り余る『万引き家族』のレビュー3記事目です。 これまでの記事はこちら。 映画『万引き家族』 - 本と映画と時々語学 映画『万引き家族』2 - 本と映画と時々語学 本記事では亜紀について書きます。 亜紀と祥太について書くつもりが、亜紀ソロで一記…

映画『万引き家族』2

前記事に引き続き、主人公家族の一人一人について書いていきます。 前記事はこちらです。 映画『万引き家族』 - 本と映画と時々語学 信代 信代は元夫のDVから救ってくれた治と内縁関係で、母親からの愛情を受けられなかった子ども時代を生き直すかのように、…

映画『万引き家族』

どうしても書きたかったので書いてみました。 自然な演出は、他の是枝監督作品と同様に健在です。 『誰も知らない』より身近なテーマを扱ったストーリーでしたので、より多くの人の感情や思考を揺さぶったり考えさせる作品だったと思います。 有機的ながら、…

映画『勝手にふるえてろ』

邦画屈指の鬱屈ラブコメをご紹介します。 ヒロインの松岡茉優ちゃんが好きということもあり、最初から最後まで楽しかったです。 妄想好き陰キャには間違いなく共感の嵐になります。 あらすじ 今まで誰とも付き合ったことのないOLのヨシカには、中学生の時か…

映画『そして父になる』

今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督が、前回カンヌで賞をとった作品です。 ネタバレです。 あらすじ 何不自由なく暮らし、一人息子・慶多の教育に力を入れる野々宮家と、 裕福でも教育熱心でもないが愛情を持って琉晴をはじめとする子ども…

映画『月曜日のユカ』2

『月曜日のユカ』のレビューの続きです。ネタバレです。 矛盾と解放 日曜日の幸せ 体と心の愛 ユカが求めていたもの 映像の表現について おわりに 矛盾と解放 修は、仲直りのために花を家に届けたら迎えにきてくれたし、プロポーズしてくれたし、ユカの母も…

映画『月曜日のユカ』

日活の名作、加賀まりこの代表作と言われた60年代の邦画をご紹介します。 フランスのヌーベルヴァーグに影響を与えたとも言われる中平康監督作品です。 ラストまでネタバレします。 あらすじ ユカの信念 ユカと母 ユカと恋人 あらすじ 18歳のユカは、横浜の…

映画『百万円と苦虫女』

平凡なヒロインのちょっと不思議な成長物語をご紹介します。 ネタバレします。 あらすじ 自立しそうでできない若者 そこに人間がいる限り 自分と向き合うためには 居場所と自分 おわりに あらすじ ルームシェアするはずだった知人に逃げられ、赤の他人と同居…

映画『ホワイトアウト』

ダムを占拠したテロリストとの戦いを描いたアクション邦画のレビューです。 ダムを乗っ取るテロリストのリーダーを佐藤浩市、彼らと戦う電力会社社員の富樫を織田裕二が演じています。 あらすじ 和製アクション巨編 後半に明かされる謎 おわりに あらすじ 日…

映画『紙の月』

実在の横領犯をモデルとした邦画のレビューです。お金で幸せや自由は手に入るのか、大人しいヒロインを変えたのは何なのか、最後まで目が離せない作品です。

映画『君の膵臓をたべたい』

今更ながら今年の有名どころ邦画をご紹介します。切ないけど元気づけられる、住野よるの小説が原作の青春映画です。 あらすじ ヒロインの桜良 主人公の反応 彼女が彼を選んだ理由 お勧めしたい理由 おわりに あらすじ 高校生の主人公は、ある日病院でクラス…

映画『サバイバルファミリー』

久方ぶりに邦画のご紹介です。 家族の絆に焦点を当てたサバイバルコメディです。 「西日本編」以降の項目が核心ネタバレになります。 あらすじ 鈴木家の生活 電気なしの社会 東京脱出 西日本編 家族の行方 便利さが覆い隠すもの おわりに あらすじ 鈴木家は…

映画『めがね』

久々に邦画のレビューです。 『かもめ食堂』の小林聡美、もたいまさこを迎えて作られた、ゆるやか非日常映画です。 kleinenina.hatenablog.com 劇中の風景が初夏や夏に観るのにぴったりだなーと思いながらご紹介します。 あらすじ 春先の南の島に、スーツケ…

映画『ハゲタカ』

硬派経済ドラマの劇場版作品です。 NHKドラマで人気を博した作品で、原作は真山仁の経済小説『ハゲタカ』シリーズです。 本作はシリーズ3作目『レッドゾーン』を下敷きに映像化されています。 制作中にリーマン・ショックが発生し、元々の脚本が全く現実社…

映画『桐島、部活やめるってよ』

話題になった朝井リョウの小説を映像化した邦画作品のご紹介です。 原作小説は、小説すばる新人賞を受賞した、朝井リョウ氏のデビュー作で、短編5編のオムニバス形式。 原作は未読ですが、短編の集合だったことがわからないくらい、自然に統合された長編と…