本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『ホワイトアウト』

ダムを占拠したテロリストとの戦いを描いたアクション邦画のレビューです。

ダムを乗っ取るテロリストのリーダーを佐藤浩市、彼らと戦う電力会社社員の富樫を織田裕二が演じています。

 

 

あらすじ

日本一の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムの運転員・富樫は、冬のある日、同僚の吉岡とともに遭難者の救助に向かい、自分は助かったものの吉岡は悪天候のなか命を落としてしまう。

数か月後、吉岡の婚約者だった千秋がダムを訪れるが、不審な車両に乗った男たちが唯一ダムに通じるトンネルを爆破。

侵入していたテロリストたちとともに、ダムに閉じ込められてしまう。

ダムの水をすべて放流すれば、下流地域に甚大な被害をもたらすため、テロリストは何万人もの人質を取ったも同然だった。

たまたま難を逃れた富樫は、他の運転員や千秋、流域住民の命を守るべく、決死の覚悟でテロリストたちに戦いを挑む。

 

和製アクション巨編

国内でアクション映画が撮られることはあまりないと思いますが、本作はその中でも屈指のスケールを誇る大作です。

撮影は関西電力黒部ダムを使って行われたということで、規模感は申し分なし。

黒部近郊の冬の厳しい自然も、台詞だけでなく映像で余すところなく語られています。

電力所やダムの中で、銃や刃物、あるだけの武器を使ってテロリストと戦う場面、

雪山でスノーモービルやヘリコプターが入り乱れる場面も迫力・見ごたえがありました。

また、序盤から出し惜しみがなく展開が速いため、最後まで飽きさせないストーリーになっています。

設定の大胆さに引いてしまう人もいるかもしれませんが、ダム設備に関する知識を総動員して富樫が闘っている場面などでは、ただ単にダイナミックな映像だけを狙った映画ではないと感じられます。

テロリストたちは大量の爆薬や銃器を持っていますが、運転員たちや千秋はもちろん丸腰です。

富樫もほぼ身一つで逃げ出してきたため、武器らしきものは持っていません。

相手に勝てるのはダムに関する知識だけという状態で、必死に突破口を見出していきます。

原作は真保裕一による同名の小説ですので、原作の緻密さが引き継がれているのかもしれません。

 

後半に明かされる謎

テロリストたちの正体は過激派組織『赤い月』であると判明しますが、地元警察の署長はダム占拠の目的が腑に落ちない様子です。

金銭と逃走手段の要求は定石どおりですが、彼らはなぜか仲間の釈放を要求しない。

また、ダム乗っ取りのメンバーには電力会社の元社員がいたのですが、彼は『赤い月』のテロ行為で家族を失ったことがあると分かり、そんな人物がテロを行っているのがますます不可解でした。

しかし、富樫が伝えた彼らの行動と、徐々に集まってきた情報から、署長は一つの答えを導き出します。

現場で闘う富樫に加え、この警察署長が陰の主人公のような活躍を見せています。

 

おわりに

Yahoo!の映画レビューでは評価が大きく分かれていましたが、個人的には充分見ごたえのある映画でした。

ハリウッド映画と比較してどうこう言いたい気持ちより、「よくこんな映画を日本で作れたなあ」という感動のほうが遥かに大きいです。

富樫が知恵と体力を頼りに奮闘する場面は見ていて緊張感が途絶えなかったし、邦画にありがちな展開の薄さ・遅さ、台詞が不明瞭で聞き取れないと言った点を完全にクリアしていたのも安心感が高かった。

ただし、吉岡との雪山登山で鍛えているとはいえ、「富樫不死身すぎだろ」「そんなことしたら死ぬよ」というツッコミは不可避です。

冬の北国の雪山は恐ろしいところですから…。

とはいえ、そうした部分はハリウッド映画にも少年漫画にもよくある話なので気にせず楽しんでました。

主な役を固める俳優さんたちが実力派ぞろいで、安定した演技力だったのも完成度を高めていました。

特にテロリストのリーダーを演じた佐藤浩市さんからは、常識の箍が外れた人物の恐ろしさが如何なく伝わってきます。

織田裕二さんも「事件は会議室で(以下略」の時ばりの熱血職業人ぶりが印象的でした。

日本のアクション映画が観たいという方に、真っ先にお勧めしたい映画です。

 

 

ホワイトアウト [DVD]

ホワイトアウト [DVD]

  

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村