本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『くちびるに歌を』

『沈黙』に続き九州ネタでお送りします。

 

 

あらすじ

五島列島の中学校に、美人で気だるげな音楽教諭・柏木ゆりが赴任してくる。

彼女が東京の音大を出たプロのピアニストだとわかると学校中が湧き立つが、当の本人はピアノは決して弾かないと言い放つ。彼女の影響で突如男子部員を受け入れることになった合唱部の女子部員たちは当初反感を持つものの、ゆりの内面を知るにつれ互いの溝が埋まっていく。

また、ゆりも15歳の生徒たちがそれぞれに葛藤を抱えた人間であることを理解し、彼らへの関わり方を徐々に変えていくことになる。

 

アンジェラ・アキの『手紙〜拝啓 十五の君へ〜』をモチーフに、合唱部の部員たち先生たちの群像劇を描くドラマです。この曲は、過去実際にNHK合唱コンクールの課題曲になったことがあります。

 

十五歳の葛藤

中学生の頃の、知識や情緒はどんどん発達していくのに、自分で決められることやできることは全然増えていかない苛立ちとか、住んでいる世界を全然変えることができない無力感とか、色々思い出してしまいました。

爽やか生徒たちのぶつかり合いと成長、という美しいところばかりでなく、大人の事情に揉まれ振り回されながら生きていく苦しさも描写されています。部員を「こども」ではなく1人の人間として扱っている感じがします。

ヒロインの柏木ゆりは最初部員たちに対し冷淡な態度を取りますが、言わば最初から手加減なしだったという意味で、観ていくうちにだんだん評価が高まっていきます。笑

 

大人になっても続くもの

さらに、生徒たちの青春葛藤ドラマだけでなく、大人になってからも悲しいことや悩みには向き合っていかなければならなくて戦いは続くのだ、というメッセージも込められていると思いました。『手紙』の歌詞に忠実に沿った内容です。

年齢が年齢なので生徒たちよりもゆりの方に感情移入してしまい、ガッキー演じるゆりが辛い過去と向き合う場面では思わずしんみりしました。

 

おわりに

群像劇の伝えるメッセージということを差し引いても、細かいディティールでくすっとしたり、各登場人物のキャラクターを楽しく観たり、伏線回収に感心したり、五島の風景を楽しんだりするだけでも充分に楽しめる映画だと思います。

人生の色々を乗り越える登場人物たちを観て、ポジティブになれる邦画が観たいなーというときにお勧めしたい作品です。

 

   

  

くちびるに歌を

くちびるに歌を

 

 

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