映画『スウィングガールズ』
邦画を代表する青春コメディをご紹介します。
よく、同じ矢口監督の『ウォーターボーイズ』と対で紹介されていますが、まさに邦画青春コメディ分野の双璧と言っていい面白さでした。
あらすじ
東北地方の田舎の山河高校に通う友子は、夏休み中の補習授業に辟易していた。
たまたま、野球部と吹奏楽部の試合出発に弁当の配達が間に合わなかったことから、補習をさぼりたい一心で試合会場までの配達をかって出る。
ところが、届けた弁当により食中毒が発生。
応援の吹奏楽部が全滅したことから、ピンチヒッターとして友子たちが演奏を試みることになる。
ダルそうにしつつも、唯一無事だった吹奏楽部員に導かれ、だんだんと音楽の楽しさに気付き始めた友子たちだったが…
自然体だけど個性派
主人公の友子たちには飾ったところが一切ありません。
面倒くさがりで知恵も体力も普通で、だけど何か特別なことを求めている、ごく普通の高校生です。
補習にうんざりし、弁当配達を買って出るも道草や迷子で遅刻、やはり補習をさぼるために代理演奏をすることになるも文句たらたら、とめちゃくちゃわがままです。
しかし優等生でもなくお淑やかでもない自然体なところが、肩の力を抜いて楽しく観られる最大の理由と言えます。
一部の迷いもなく一つのことに青春の時間を捧げられたり、何を犠牲にしてでも試合やコンクールで勝ちたいとか、そんな人々が主人公だったら、この映画の魅力はほぼゼロになってしまうでしょう。
少なくとも私なら、あーはいはい自分と縁のないキラキラした人たちの話ね、と思って絶対に見ません。笑
部活にも入らず、かと言って勉強や他の何かが得意なわけでもない彼女たちが主人公だからこそ、多くの人が共感できると言えます。
部活を頑張っていた人たちももちろん昔を思い出せるし、正統派部活動じゃないからこそ、青春したかったけどしそびれてしまった人にも感情移入しやすいのではないでしょうか。
こんな不真面目な子たちがそれでも取り組もうとするからには、きっとよほどジャズが好きになったんだろうな…と妙な説得力も生まれています。笑
音楽をやるための奮闘
部活に所属せず、自腹で楽器を買い、遠征費を広告で稼ぎ、演奏場所を探し回り、あくまでフリーランスで演奏を頑張りたいという奮闘ぶりは、正統派青春展開ではないけど新鮮で面白い重要な部分の一つです。
楽器を買うためのアルバイト、演奏する場所を求めての放浪など、音楽以外のところで次々に障壁が現れるところ、高校生なりの解決策を探していく過程を思わず応援してしまいます。
ここですんなり上手くいってたら現実感が足りないし、この過程が何倍も映画を面白くしていると言っても過言ではありません。
映画の本筋とは関係ないけど、部活動で好きなことができるって状況は、あらゆる面でサポートが整った環境なんだなと実感した映画でもあります。
また、竹中直人さん演じる先生のイキり方も何だかリアルで笑ってしまいます…子どもの立場からしたらおいおいってなると思いますが。
大人になってから音楽始めると、余計についた知恵やらプライドやらで、若い頃に始めるよりかえってハードル高かったりしますね。お金はあるんだけど。
盤石のコメディ
ベテランの竹中直人さん演じる数学教師を始め、(甲子園よりハワイに行きたい)吹奏楽部の顧問の先生、気の弱い吹奏楽部男子部員・中村、まだまだ甘えのある女子高生の友子、良江、ど近眼だけど思いはまっすぐな香織、とにかく個性の強いメンバーが揃っています。
人間味あふれる掛け合いが繰り広げられるたびに、思わず笑ってしまいました。
人間味の塊だし特別な能力はないけど、とにかく自分の感情に素直な若者たちの行動は見てて清々しいです。
日本の未来は大丈夫か…と思う一方で、高校生の時の正直ベースの思いを代わりに言ってもらっている気持ちにもなります。笑
泥臭い努力とか、主体的に考えるとか、やったこと ないけど、何か頑張って成し遂げるってことはしてみたい!という気持ちを思い出させられました。
突飛なコメディに見えつつも、実は丁寧な心理描写だからこそきっと思い切り共感してスカッと笑えるんですね。
ラストの演奏シーンは必見
そうした友子たちの奮闘を見守った仕上げに、ジャズファンじゃなくても一度は聞いたことのあるナンバーでまとめられた演奏シーンがやってきます。
ムーンライト・セレナーデに、シング・シング・シングで盛り上がり、最初は格好つけていた先生もだんだんとノリノリに。笑
音楽に詳しい人から見たら色々コメントはあると思いますが、ここまで頑張ってきた部員たちの集大成に目頭が熱くなりました。
ここだけを切り取った映像をみるだけで、なぜか泣きたくなっちゃうんですよね。。。涙腺緩い。
やりたいことを一生懸命やる大切さとか、夢中になって何かをした経験の尊さが去来します。
やっぱり青春映画っていいよね!
おわりに
たくさん笑えて、最後には胸がいっぱいになる青春映画の代名詞です。
今では大出世した出演者たちの、若さにそぐわぬ実力派な演技に支えられ、盤石のコメディそして青春映画となっています。
ちょうど夏休みから話が始まるところも今の季節にぴったりです。
夏や青春や音楽を感じたい方におすすめの映画です。