ドラマ『ハウス・オブ・カード』のレビュー第二弾です!
前回はシーズン3までの内容を中心に書きましたので、今回はシーズン4からシーズン6(最終シーズン)をネタバレでご紹介します。
あらすじ
副大統領職のポジションから、さらに大統領職へと王手をかけたフランク。
選挙を経ずに大統領となった彼が、いよいよ大統領選に挑む時期がやって来る。
党の指名争いを経ての、共和党擁立候補ウィル・コンウェイとの一騎打ち、クレアとの絆の揺らぎに対峙するフランク。
さらに、手段を選ばず敵を蹴落とし、味方を利用してきたフランクを、これまで負ってきたつけを払わせるかたちで次々に危機が襲う。
自由世界で最高の権力を維持することはできるのか――物語は、誰も予想しなかった結末を迎える。
シーズン4
今までで最も泥沼度の高いシーズン。
つまり一番面白かったです笑
民主党内での大統領候補指名獲得、まさかの副大統領巻き込み、共和党候補のコンウェイとの暗闘など、魅力的なアトラクションが詰まっています。
クレアとの絆が揺らぐ中で、フランクが銃撃を受け命の危機にさらされる展開は、シーズン4のみならず全体を通してのハイライト。
手術で一命をとりとめるものの、危機的状況は変わらず、肝臓移植を受けなければ数日以内に死亡すると宣告されます。
序盤から展開が大盤振る舞いすぎない?と言いたくなりますが、終盤ではさらに畳み掛けるようにイベントが大発生。
次のシーズンがめちゃくちゃ気になる終わり方です。
始めと終わりに比べたら穏やかな中盤も、ちゃんとこの先への不吉な予感とか後半の怒涛の展開への下地になっていました。
これまでのシーズンでフランクの足蹴にされてきた人たちも、ただの噛ませ役ではなく、それぞれの運命を辿りながら逞しく再登場。
一人一人が辿る変遷やキャラクターにリアリティがあって、本当に骨太な脚本だな……と思わせます。
大統領選を控えたアメリカの状況と重なったのもあって、個人的に盛り上がりました。
ちょうどスーパーチューズデーの少し前に見ていたので。
シーズン5
大統領選に向けてバキバキの緊張感で突き進むシーズン4がすごく面白かったぶん、若干停滞します。
これはもうある程度仕方ないですね。
前半は、スピードとしては落ち着いてくるものの、マークやデイヴィスと言った新しい人物が存在感を増してくる。
そして、シーズン4で「これヤバくない?」と言いつつ始めた作戦が切羽詰まってくきます。
後半は新たなレジームで新たな火種を残して終わる。
このあとワンシーズンでどう解決するんだ、と茫然としました笑
強欲で非情で「金より権力」とか言っちゃうし、知り合いにいたら絶対関わらないようにするはずのタイプの主人公を、ここまで特に嫌いにならないのは、主演俳優と脚本力のなせる技です。
事実はドラマより奇なりというか、スーパーチューズデーで激突して結果はグダる展開が、2020年大統領選の混沌を予言したかのよう。
しかしコンウェイは、大統領やるには少しメンタル繊細すぎる気がします。
軍務中のPTSDで、という伏線がこの形で活きてくるとは。
マークとデイヴィスが怪しすぎて、この二人が誰なのか、どういう関係なのかがこの先の鍵になりそうです。
割とまっとうに働いてたリアンやセスが恋しくなりました。。。
シーズン6
カメラ目線で視聴者に語りかける役を、クレアやダグが継承してて嬉しい。
ただ他の方もみんな書いてる通り、ケヴィン・スペイシーの許されざる降板により、ストーリーが完全なる不完全燃焼になっています。残念。
急に出てきたシェパード兄妹が噛ませ役感が漂ううえに、彼らとの闘争もこれというカタルシスを迎えないまま終わりました。
相変わらず映像のクオリティは高いので、そこは安心して没入できますが。
今作は、MeToo運動とケヴィン・スペイシーの過去の悪行を受けた、問いに答えるパートとして見るべきシーズンでしょう。
つねに性暴力の危険にさらされて生きてきても、母親からすら「美しい娘は自分の美に責任を持つ」と突き放されたクレア。
幼少期にも、若年期にも暴力に見舞われた彼女は、自らの女性性を前面に押し出し、大統領になってから寄せられるミソジニックな脅迫にも、徹底して立ち向かいます。
それだけでなく、職務においても強いメッセージを発信。
閣僚全員を女性にして組閣したり、「ミソジニスト(女性嫌悪主義)の反対語を知ってる? 知らないのは誰も使わないから」(ミサンドリストと言います)と部下たちに演説したり。
やりすぎじゃない?という感想を持つ人もいると思います。
しかし、「閣僚全員女性」なら驚く人は多いですが、全員男性なら驚く人はあまり多くないのではないでしょうか。
現代の先進国なら、「あれ? 女性ひとりもいない?」と思うくらいでしょう。
全員男性なら対して驚かない、というか、十年前、二十年前の世界なら当たり前だし、何なら日本は今でもそれに近い状態。
女性権力者が暴走してると「これだから……」と思うけど、男性権力者が暴走しても「絶対的な権力は絶対的に腐敗するから」としか思わないなとか。
そうした、自分の中にある偏見に気づかせてくれる面がありました。
ストーリーは、シーズン5と6のあいだに死去したフランクの死の謎、死後もまといつく彼の悪事の影、シェパード兄妹との闘争を中心に進みます。
そういう意味ではまだフランクの影が濃いのですが、回想シーンなどはなく、音声すら登場させないという徹底的排除でした。
おわりに
政治サスペンスというジャンルを初めて視聴しましたが、一話一話が濃くてものすごい密度でした。
元ネタは実は英国の物語らしいのですが、そちらもいつか観てみたいです。
社会を作り、運営する政治の仕組みを、人間が握っていることの危うさを、ドラマチックに描き出した作品です。
「野望の階段」という副題がこれほど似合う作品もないですね。
頭脳明晰だけど善人ではない主人公が活躍する知的なパワーゲーム、ぜひ多くのかたにご覧いただきたいです。
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