本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

ドラマ『シャーロック』2

 

 

名脇役たち

主人公シャーロックやワトソンだけでなく、彼らの周囲の人々も忘れがたい個性を放っています。
シャーロックの兄マイクロフトは、頭脳戦においてシャーロックと渡り合える数少ない人物の一人です。
イングランド人らしい皮肉とウィットに富んだ言い回しで、視聴者を翻弄します。
モルグで働く医師のモリーは、シャーロックに思いを寄せているものの、相手が相手なのでばっちり気づかれつつも相手にされない毎日を送っています。
彼女の純情さは観ている者の惜しみない同情を誘います。
シャーロックとワトソンが住む下宿の大家であるハドソン夫人は、 2人がゲイだと信じて疑いません。笑
こうしたイギリス的小ネタも余念がないんですね。
そして、それらすべてのディティールは原作の小説の設定が活きるように、あるいは、原作の良さを殺さないように配置されているのが絶妙です。

 

原作のシャーロック・ホームズ

ホームズは世界で最も名前の知られている名探偵と言ってもいいと思います。
1884年に最初の小説『緋色の研究』が出版されて以来、たくさんのエピソードが書かれた推理小説シリーズの主人公です。
私はドラマを観た後『シャーロック・ホームズの冒険』や『緋色の研究』を読んだのですが、原作のディティールがドラマシリーズへいかに効果的に取り入れられているかを知って驚きました。
例えば、シャーロックの活躍をワトソンがブログに書いたことから世間に存在が知られるという展開があります。
原作のワトソンは、医師でありながらシャーロックの助手であり伝記作家と言う位置づけですから、この設定の現代への組込みが巧みだなーと感心しました。

 また、ワトソンがアフガニスタンの復員兵だという設定や、女性に対して惚れっぽいと言う特徴も原作にあります。
これらも、彼がアフガン戦争に軍医として行っていたことや、次々と劇中の女性に恋してしまう事実としてドラマに引き継がれています。
実を言うと、シャーロック・ホームズシリーズのトラックは、アガサ・クリスティー作のエルキュール・ポワロシリーズやマープル夫人シリーズと比べると、現代にそのまま導入するのは無理があるものが結構あります。
この点はクリスティ先生がすごすぎるから比べてはいけないポイントかもしれませんが(他の名探偵エラリー・クイーンなんかでも、現代で

ミステリとしてやるにはちょっと、というエピソードはあるので)。
それらの点はうまく改変した上で、舞台を現在に置き換えることにも成功しています。

おわりに

本作は1話あたり90分、1シーズンあたり3話というシリーズです。
現在、本国では第4シーズンまでの公開が終わっていますが、日本の地上波世界ではまた第4シーズンを待っている状態です。
第3シーズンでは新展開がありましたが、第4シーズンもメインロールに新たな展開が訪れるようです。
キレキレの頭脳と個性を持つシャーロックの活躍から今後も目が離せません。
できるだけ長く続いてほしいと心から思うシリーズです。