本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

ブログについて7

最近めっきり更新頻度が落ちてしまいました。

公私共にバタついておりまして、スター返しもおぼつかない状況です。

そんな中でも見てくださっている皆様、本当にありがとうございます。

 

もうリミッターが外れて映画レビュー専業ブログになっております。

本のことはもしかしたらたまーに書くかもしれませんが、語学のことを書くとしたら別のブログを立ち上げようと思います。

しかし、実際いま、それほど語学のことで書きたいことはないので、映画を理解するのに外国語の知識を役立てるくらいにしようと想定中です。

  

今年に入って書いた記事の数はあまり多くないのですが、フランス映画とイタリア映画を少しでも強化できるように頑張りたいです。

あと、白黒時代までさかのぼる昔の名作も。

U-NEXTという渋めの動画サービスを閲覧しているからこそ、このへんに集中的に取り組みたいです。

 

はてなで色々な方の映画ブログを観ていると、古今東西世界にはいろんな良作があるんだなと思い知らされます。

ツイッターでも最新作の情報が山のように入ってきて、死ぬまで映画に飽きることはなさそうです。

いやー映画ってほんっとにいいもんですね。

 

映画もブログも好きなので、またガシガシ更新できるようになりたいと思いつつ、当面はローペースで続けてまいります。

短いですが、今日はここまで。

 

 

 

映画『(500)日のサマー』

最後まで見入ってしまう、お洒落でほろ苦い恋愛映画をご紹介します。

サブカル界隈に絶大な人気を誇る理由が観てみてよくわかりました。ネタバレです。

 

 

あらすじ

ロサンゼルスでグリーティングカードの制作会社に勤めるトムは、不幸せではないが地味な日々を送っていた。

たった一人の運命の女性とでなければ恋愛は有り得ないと信じている彼は、会社に秘書としてやってきたサマーに夢中になる。

トムは小さなきっかけでサマーとの距離を縮めることに成功し、彼女に告白するも、特定の恋人を持つつもりがないサマーから「友達になりましょう」と振られる。

しかしその後、2人きりで会う時間は蓄積していき、一緒に悪ふざけをしたり、イケアで夫婦ごっこを楽しんだりしていた。

サマーの部屋に招かれたトムは、恋人関係に近づいたと感じていたが、現実には別れが近づいてこようとしていた。

 

サマーという女性

サマーは身長や体重や能力はごくごく平均的な女性です。

ハリウッド女優さんをこう言うのも変ですが、絶世の美女タイプではありません。

常に強烈な存在感を放つわけではないけれど、思わず目で追ってしまう、30秒に1秒くらいはっとするほど可愛らしい表情を見せる感じです。

そして振る舞いや言動を含めた総合点、すなわち、笑顔、明るい雰囲気、行動の予測のつかなさ、特定の恋人を作らないつれなさ、いたずらっぽさなど、あらゆる要素で男性ていましたを虜にし。

彼女は会社のパーティーでトムたちに恋愛観を吐露します。

「自分自身でいたいの」

「恋愛関係は面倒だし傷つくのもイヤ

 …愛は絵空事よ」

とは言いながら、トムとの関わり方は(後に彼自身から指摘されるように)恋人そのものです。

このへんが、同性を憤らせる小悪魔感の核心と言えます。

 

運命と偶然

サマーと対照的に、トムは運命の女性とでなければ幸せになれないと思っています。

サマーと喧嘩別れした彼は、幸せとの縁が断たれたと煩悶していました。

妹レイチェル(頭脳明晰)から「他にも相手はいる」と諭されるも信じられません。

更にサマーの婚約を知ってやけくそになり、割と最悪な形で会社も辞めます。

とどめにサマーから「夫には(それまで信じていなかった)運命を感じた」と言われ、これまでのことは一体何なんだとなります。

トムが運命の相手と思っていたサマーは、トムに対してそんな感情は抱かなかったのに、他の人にはあっさり運命を感じて結婚してしまった。

だけど最後にトムは、本来やりたかった仕事を改めて探す中で、運命なんてないと吹っ切れます。

「偶然 それがすべてだ」

「偶然だけだ」

運命が決まっていて変えられないなら、誰かに出会うための努力も、好きになってもらうための試みも、一緒に過ごそうとする気持ちも、意味がないことになってしまいます。

でも、すべてが偶然の産物なら、一つでも多くの偶然を捕まえに行こうとすることで、人生や恋愛を変えられる可能性はきっとあるでしょう。

踏んだり蹴ったりなトムの状況の認知をまるっと変え、希望が持てるようになる、発想の転換です。

偶然の機会を逃すまいと、面接で見かけた女性に声をかけたトムは、相手の名前がオータムだと知って驚きます。

ここでようやくタイトルの意味がわかりました。

500日間の夏(サマー)が終わって、次の季節である秋が始まるかのような、少しはっとする場面で映画は終わります。

偶然と運命と、どちらも感じるのは現実の恋愛でもそうかもしれません。

 

お洒落で軽快な映像作品

小気味よい脚本の巧みさもさることながら、映像作品としてのお洒落さも本作の魅力の一つです。

サマーといた500日間の「〇〇日目」という回想がランダムに切り替わりながら話が展開しますが、場面の転換が速いので間延びも飽きも全くありません。

また、サマーがいつも青色の何かを身につけている一方、トムの服装はいつも地味な色にまとめられていたり、色使いにも派手過ぎない遊び心が見られます。

サマーとの距離を一気に縮めたとトムが歓喜した日、妄想の中に様々な色合いの青い服をまとった人々が大量に登場するなど、青はサマーを象徴する色です。

オータムのファッションが、そんなサマーとは全く違うベクトルであるところも印象的でした。

 

おわりに

サマーの行動が理解できんと議論を呼びがちな本作ですが、思い出が楽しいからこそのほろ苦さの描写はピカイチです。

お洒落な映像を観ているだけでも楽しかったし、テンポよく少し短めなところも 、まだまだ観たい気持ちにさせる映画でした。

ほろ苦くお洒落な恋愛映画をお探しの方にぴったりな作品です。

 

 

 

映画『マグノリアの花たち』

年齢も家族構成も異なる女性たちの友情を描いた作品のレビューです。

タフな人生を生き抜くために、女性たちが互いを激励しあいながら進んでいきます。

ネタバレします。

 

 

あらすじ

アメリカ南部の小さな町チンカピンでは、結婚式の準備が行われていた。

花嫁シェルビーとその母マリン、式に参列するクレリーは、美容院で身支度をする。

美容院の女主人トルーヴィと、美容師として働くため引っ越してきた新人アネルが、彼女たちと様々な話に興じながらヘアセットにあたる。

花婿となるジャクソンのこと、市長の未亡人であるクレリーの今後のことなど、お喋りの種は尽きることがない。

結婚式が終わったあとも、糖尿病を患う彼女の出産や、病状を慮る母マリンの葛藤、内気だったアネルの変貌、クレリーとウィザーの奇妙な友情など、人生の様々な場面が交錯していく。

 

物語の背景

本作はもともと舞台作品で、メインロールの6人の女性だけが登場する密室劇でした。

物語が書かれたきっかけは、書き手の実の妹が1型糖尿病を患い、命を賭して出産し、その後亡くなったことだそうです。

妹の人生は映画の中でシェルビーに投影されており、命を守るため妊娠を避けてほしいと思っていた母マリンの葛藤や、母娘を見守る友人たちの人生も描かれています。

マグノリアは、アメリカ南部を象徴する花で、原題もSteel Magnoliasです。

直訳は「鉄のマグノリア」で、花のように美しいけれど鉄のように強い南部の女性、という意味が込められています。

現実離れした展開や、ドラマチックな設定はありませんが、お互いの心情を分かち合いながら前に進んでいく彼女たちの姿に元気づけられる作品です。

 

シェルビーの人生

シェルビーの抱える1型糖尿病について、劇中では専門的な説明はありません。

しかし、妊娠は避けるように医師から言われている、と母マリンが話します。

妊娠・出産で命が危険にさらされること、体調が劇的に変わってしまうかもしれないことをシェルビーも知っています。

それでも、愛し合って結婚したジャクソンの子どもが欲しいこと、養子を申し込んでも体調がネックで認められないことから、出産を決意しました。

空っぽの長い人生より30分の充実した人生を

と言い切るシェルビーは、妊娠を喜んでくれないマリンに苛立ちを覚えます。

親と子は別の人間であり、望むことも違うのは当たり前だけど、娘の命を失いたくないマリンの葛藤は消えることはありません。

発作に襲われ亡くなったシェルビーの葬儀で、マリンは辛さを友人たちにぶつけます。

どうして娘が天国に行かなければならなかったのか、どうしてこんな悲しいことが起こらなければならないのか理解できない、と言う彼女に、

今のままではマリンや息子を守ることはできないから、いつでも皆の傍に居て、守ってあげられる場所に行ったんだ、とアネルが言います。

自分よりずっと若い、聖書マニアのアネルに言われて、マリンは到底納得してはいないのですが、誰もがどうにかして辛いことにも理由や区切りをつけ、進んでいかなければならないことを象徴する場面でした。

その後、クレリーの機転(≒悪知恵)や、シェルビーの息子の成長、アネルの妊娠など、新しい展開を迎えて人生が進んでいきます。

 

シェルビーとマリンを取り巻く人々

母娘を取り巻く4人は、控えめに言って個性が濃すぎですが、2人を支える以外にも重要な役割を演じています。

美容院の女主人トルーヴィは、冒頭で彼女の信念を口にします。

「生まれつきの美人はいない」

「だから美容院の仕事が成り立つの」

Steel Magnoliasの原題に象徴されるのは美しさと強さですが、トルーヴィの言う通り美しさが生まれつき備わっている人はいないのと同時に、強さもまたそうではないでしょうか。

人生の中で様々な出来事に向き合う中で身に着けていくものです。

女性たちはトルーヴィの美容室で、美しさを整えると同時に、男性と一緒に暮らす社会から隔絶された女性同士のお喋りに興じます。

人生にもう一度立ち向かう強さを、お互いの出来事をさらけ出すことでもう一度充電しているかのようです。

クレリーとウィザーの2人も、たまに鬼気迫りつつ丁々発止のコメディを演じる、不思議な友情を披露しています。

正直クレリーはウィザーのことを面白がってたまに見下しているようなんですが、常に本気でぶつかって喧嘩も吹っ掛けてくるウィザーがいないとそれはそれでつまんないのではないでしょうか。

一番若く内気なアネルは、踏んだり蹴ったりな状態で町に引っ越してきますが、後半で明るく元気になり、家族も設ける彼女の活躍はとみに印象的です。

アネルの存在は、「自分次第でいくらでも人生は変えられる」というメッセージを持っていたのかもしれません。

 

おわりに

個性のベクトルが強烈ながらも、お互いを認め合いながら生きていく女性たちの姿に、しんみり勇気を貰える映画でした。

舞台作品としても非常に成功したコンテンツらしいので、世界中で色んな人を元気づけてきたことでしょう。

露骨な感動物じゃなくても、元気になれる映画をお探しの方にすすめたい作品です。

 

 

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映画『ひまわり』

今年強化すると宣言したイタリア映画、ようやく2本目。

添い遂げることを誓い合った夫婦が、戦争によって引き裂かれる悲劇を描く名作です。

ネタバレします。

 

 

あらすじ

第二次世界大戦下のイタリア。

ナポリ出身の女性ジョバンナは、海岸で出会った男性アントニオと恋に落ちた。

アントニオはアフリカ戦線行きを控えていたが、12日間の結婚休暇を目当てにジョバンナと結婚する。

夫婦で幸せな日々を過ごすうちに、お互いを本気で愛するようになった2人。

一緒にいられるようにとアントニオが精神疾患を装うことを画策したが、間もなく詐病がばれてしまう。

アントニオは軍紀を破った懲罰としてソ連戦線へ送られてしまい、そのまま行方不明となる。

雪原で行軍の最中に消息が途絶えたアントニオを、終戦後も探し続けたジョバンナは、ついにソ連へ彼を探しに行くことを決意する。

 

率直でまっすぐな愛

ジョバンナとアントニオの愛情表現はいつも率直でまっすぐです。

THEイタリア映画な表現と言っても良いでしょう。

出会ったばかりの時の海岸での場面から、出征による別れが訪れるまで、2人の間には隠し事もわだかまりもありません。

短い期間ではありますが、プレゼントを贈り、それに喜び、大量のオムレツを作ってはしゃいだり、食べきれなくて嘆息したり、他愛ない感情を全力で共有しています。

明るい南イタリアの風景とともに、明るく深い愛が伝わってきます。

 

終戦後も続く悲劇

突然過酷なソ連戦線へ送られることが決まったアントニオを、ジョバンナは不安と惜別とともに送り出します。

戦争が終わっても彼の消息はわからず、雪中行軍の際に置き去りにされたことだけが伝えられました。

ソ連でアントニオを探し始めたジョバンナですが、イタリア人兵の大量の墓標や、亡くなったイタリア人たちの骨が埋まっているひまわり畑などを見せられます。

町中で出会ったイタリア人に声をかけても、「私は今やソ連人だ」と意味深なことを呟かれ、立ち去られます。

それでも諦めずに探し続けた彼女はアントニオの家を探し当てますが、そこにいたのは若い現地の女性と小さな女の子。

彼は雪原の中で少女に命を助けられ、彼女と家庭を持っていたのでした。

予測できなかった結果に、ジョバンナとともに言葉を失ってしまう場面です。

町で会ったイタリア人男性の意味深な発言の意味が、ここで判明しました。

ジョバンナはアントニオの出征時に彼と共に過ごす時間を失っただけでなく、この場面でもう一度アントニオとのつながりを絶たれます。

彼女はアントニオを2度喪失しなければならなかったと言えるでしょう。

 

戦争と人間

新しい妻との生活を始めたときには、それまでの記憶を失っていたアントニオですが、ジョバンナと再会してすべてを思い出したのか、動揺した表情を見せます。

ジョバンナは彼を振り切って電車に飛び乗り、大声で激しく泣いて悲しみを隠しません。

この様子が後の場面との印象的な対比になります。

ジョバンナはイタリアに帰り、辛い決別の記憶を乗り越えてミラノで新生活を始め、新しいパートナーもできました。

彼とはしゃいで喜ぶジョバンナは、序盤のアントニオとの出会いの頃と同じくらい生き生きしているように見えます。

そして、彼女と話をしに来たアントニオと会っても、お互い今の生活を捨てることはしません。

ソ連に帰る彼をミラノ中央駅で見送るジョバンナは、ソ連で彼を見つけたときとは対照的に、声を押し殺して咽び泣きます。

ソ連で泣いていた時は、失った愛や時間に絶望した涙だったけれど、

ミラノでは今ある幸せを捨てて彼と元通りにはなれないこと、彼との別離の辛さを乗り越えて生きていかなければならないことを覚悟した、もっと複雑な涙だったでしょう。

この映画では、運命の相手と思いあった男女でも、戦争に引き裂かれ、幸せを諦めなければならなかった悲しい描写が印象的です。

しかしそれ以上に、 辛い過去や命の危機を乗り越えて、新しい生活を始め、新たな家族との絆を築き始めた2人の逞しさに心を打たれます。

また、ソ連での行軍の長い描写を経て、人間の命も心も追い込む戦争の過酷さが入念に表現されていました。

ソ連での戦いを経験した男性たちの表情が一様に暗いのも、戦争と言う圧倒的な暴力の前で、人間の心がいかに簡単に挫かれてしまうかを示唆しています。

 

おわりに

ジョバンナはアントニオを2度失い、アントニオは生死の境をさまよう苦しみを味わいます。

気力も記憶も打ち砕かれるような思いを味わいつつも、それでも続いていく人生を生き抜いた姿が淡々と描かれ、悲しいながらも人間の強さを感じさせてくれます。

そして、アントニオのように過去をなかったことにして生きた人や、ジョバンナのように辛さを乗り越えて新たな人生を始めた人が、戦争によってどれほど生み出されただろうか、と考えさせられました。

フランス映画『シェルブールの雨傘』との共通点も多く感じる、非常にヨーロッパ映画らしい作品です。

 

 

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映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』

親友の男性の結婚式を目前に、彼を振り向かせようと奮闘するヒロインの映画のネタバレレビューです。

コメディとしてもドラマとしても珠玉の名作です。

先日引退報道があったキャメロン・ディアスの若く初々しい姿も印象的。

 

 

あらすじ

キャリアウーマンのジュールスは、元彼であり長年の親友でもあるマイケルと、28歳になってもお互い独身だったら結婚しようと約束していた。

そのマイケルから、28歳の誕生日の直前に電話がかかってくるが、「結婚式を挙げるので参列してほしい」と聞き言葉を失う。

今更ながら彼への気持ちに気付いて愕然とするものの、ジュールスは奮起して現地に向かう。

会ってみると、若く美しい婚約者キンバリーは、彼女と正反対のタイプだった。

しかし、どうしてもマイケルを諦めきれないジュールスは、結婚式を阻止しようと、本番までの数日間に様々な手を使って奔走することになる。

 

アラサーあるある

働くことに慣れてきた頃、次々に友人たちが結婚していくのは日本でもよくあることです。

いつまでも一緒に会ったり騒いだりできると思っていた仲間が、自身の人生の選択をしていくのは、自然なことですが少し寂しい時もあります。

ジュールスのように、過去の大事な相手と、友情以上恋愛未満の関係になった人もいるでしょう。

しかし、相手の人生の選択に際して、本当の気持ちに初めて気づくとなれば、いくら人生経験があったとしても大混乱です。

本作では、ジュールスの奮闘がコミカルに描かれ、観ている側は笑ったりハラハラしたりしながら彼女の作戦の成否を見守らざるを得ません。

 

若さの脅威キム

マイケルの婚約者キンバリー(キム)は、20歳の初々しい大学生で大富豪の娘です。

世慣れてキャリアもあるジュールスと正反対なので、ジュールスの良さを再考してもらえるようにあの手この手で印象操作が行われます。

ところが、若さが不利になるかと思いきや、キムはいつもピンチをチャンスに変えていきます。

苦手なカラオケを歌わされても、一生懸命歌う姿で周囲の声援を勝ち取ったり、

マイケルのプライドを傷つける提案をしてしまっても、彼に素直に謝ることでより絆を深めたり、

ジュールスが想像もできない、彼女自身ではとても成しえない方法で事態を解決します。

一生懸命さや素直さは若い時特有の武器で、ある程度色々な能力を身に着けたジュールスにはかえって使いこなせないものです。

実際、全編を通じてジュールスの素直になれなさや、強がりが本当の気持ちの邪魔をしています。

若いのに持てる力を全て発揮してマイケルとの関係を築くキムと、経験を積んだからこそなかなか踏み出せないジュールスの対比が印象的でした。

でも、若いからと言って誰もが一生懸命さや素直さを発揮できるわけではないので、キムの人格こそがマイケルにとって魅力的だったのは間違いありません。

行動的で力強いジュールスと、従順で優しいキムの、人間としてのキャラクターの対比も巧みでした。

 

大人の現実

マイケルに気持ちを言えないジュールスは、その場に来てくれたゲイの友人ジョージが婚約者だと嘘をついてしまいます。

祝福する周囲ですが、マイケルにとっても、ジュールスは特別な存在なので少し浮かない顔です。

しかし、人生は一度しかないし、パートナーは一人しか選べません。

ジュールスとの思い出がありつつも、マイケルはキムと一緒に人生を歩むことを決めています。

ジュールスは順調な人生を歩みながら、チャンスはいつでもあるとどこかで無意識に思っていたから、マイケルとの関係を特に変えなかったのでしょう。

現実には、人の気持ちは変わるし、時間は有限です。

収入や能力は増えていったとしても、時間は減っていくし人生は待ってくれません。

ジュールスとキムのドタバタを眺めているうちに、自分の気持ちに素直に向き合い、持っているチャンスには言い訳せずぶつかっていかなければ、と思わされます。

人生に決まったルートはないからこそ、本当に求めているものは自分で見定めて、チャンスがあればタイミングを逃してはいけない。

自分の人生を後悔なく生きられるようにできるのは自分しかいないから。

よく引用されるこの台詞が、映画の核心を突いていると思います。

「"愛してる"と言え、そう感じたら大声で。さもないとその瞬間は過ぎ去る」

 

 

おわりに

名作ですが地味に古い映画なので、携帯電話が完全に平野ノラさんのあれです。

勝手に人の業務用PCを開けてメールを送れるとか、セキュリティ甘々なところも懐かしい。

なお、ジュールスが結婚阻止のために打つ手段は割と色々最低なのですが、必死さがありつつも重過ぎないコメディになっていました。

ツッコミを入れつつ核心を指摘するジョージなど、登場人物間のバランスも絶妙です。

エンターテインメントとしての面白さがばっちりな上、人生や愛についてのメッセージも素敵な作品でした。

思い出が増えてきたアラサー世代にぴったりの映画です。

 

 

 

映画『デンジャラス・ビューティー』

破天荒な女性エージェントが活躍するコメディをご紹介します。

報われず悪態をつきながらも毎日奮闘している社会人に観てほしい。

 

 

あらすじ

FBIの女性エージェント、グレイシー・ハートは常に捜査の第一線に立ってきたが、仕事一辺倒でお洒落やファッションには興味がない。

そんな中、ある事件の捜査でミスをしたことで、仲間をケガさせてしまい落ち込んでいた。

一方、全米を騒がせている爆弾魔「シチズン」からミス・アメリカ最終選考会での爆破予告が届く。

露骨な警戒態勢は取れないと判断したFBIは、グレイシーにコンテスタントとなって潜入捜査をするよう命じる。

ミスの挽回も兼ねて渋々任務を引き受ける彼女だったが、服も化粧も立ち居振る舞いもミスコンの基準に達していない。

グレイシーを潜入させるため、一大プロジェクトが立ち上がることになった。

 

キレキレのコメディ

コメディの名に恥じぬ笑いどころが随所に散りばめられており、退屈しないこと間違いなしです。

グレイシーのタフさ、賢さと、彼女が苦手なものすべてが詰まったミスコンの世界がぶつかり合い、大胆な不協和音のようなハーモニーのような内容になっています。

男社会の中、身だしなみも、お洒落も気にしてこなかった彼女が、半ば全否定され、徹底的に改造されながら、美しいミス・ニュージャージーに生まれ変わっていく様子は嘆息を禁じえません。

もちろん上手くいかないことも多々ありますが、「仕事だから」頑張るグレイシーの奮闘ぶりも明るく笑わせてくれます。

また、頭脳明晰なグレイシーは、おネエな美容コンサルタントのヴィクター、ミス・アメリカ主催者のキャシーから、女性らしさ皆無なことを詰られても、キレキレの皮肉で切り返します。

黙って改造されているだけでなく、もうひと笑いさせてくれるのが秀逸です。

現実感のなさは、こういう映画である以上諦めてもらうしかありません。

 

見たことのない世界

グレイシーは頭脳もフィジカルも逞しい優秀な女性捜査官です。

今の職場で実力勝負を続けてきた彼女は、ミス・アメリカコンテストのことを「頭が空っぽの女が出るバカ女の品評会」と言って憚りません。

そして、コンテスタントとしてのマナーや心構えを説くヴィクターやキャシーにもたびたび反抗します。

しかし、肉体改造やメイクアップに多大なる戦力が投入され、現状から他のコンテスタントに追いつくために様々な仕込みを受け、

さらに、他州のミスコンを勝ち抜いてきた候補者たちと会って過ごす中で、何かが変わり始めます。

FBIとフィールドは(かなり)違っても、努力を積み上げ、自分との戦いを続けてきた女性たちは、グレイシーが思い描いていたバカ女とは少し違います。

 

新しい気付き

仕事は頼りないけど私生活は遊んでいる、モテる同僚エリックという人物がいます。 

他の同僚と一緒にグレイシーをいじりつつ、何だかよく彼女に助けられている奴です。

ツッコミどころは色々ある男性ですが、意外と素直で優しく、頑張るグレイシーを援護したり、煮詰まっている彼女を励ましたりします。

君は賢い

こわもてだけど面白い

もっと力を抜けばいい

本当の君を知った人は君を好きに

男性社会に適応するべく頑張ってきた彼女に、いきなり女性らしくなれと言ってもそんなん今まで求められてきたことと違うし、

ていうかおっさんたち笑ってるけど、女性らしさを保つことがどんだけ不自然で大変なことかわかってんの?

君たち24時間働きながらスリムで禿げずに肌つやつやでいられるの?

…というフラストレーションが溜まりかけていた女性オーディエンスの気持ちを少しリリースしてくれる一言です。

仕事は頼りないけど、エリックはグレイシーのことを仕事仲間としても女性としても一人の人間としても、ちゃんと見ていてくれたのかなと思える場面でした。

仕事は頼りないけど。

 

おわりに

この映画の原題は“Miss Congeniality”で、「ミス・コンテストなどで、最も親切で一緒にいて楽しかった人として選ばれるタイトル」だそうです。

踏んだり蹴ったりな仕事に奮闘しつつも、想像もしなかったコンテスタントたちとの友情を築いたり、予想外の事件の結末を迎えたり、コメディ以外の要素も楽しい映画です。

グレイシーの奮闘ぶりと鋭い皮肉に笑った後は、「仕事頑張ろう」とまあまあ思えてきそうです。

 

  

 

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映画『ライフ・イズ・ビューティフル』

イタリア映画不朽の名作その2をご紹介します。

結構ネタバレします。

観たことがなくても名前は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

 

あらすじ

1939年、北イタリアの静かな町にやってきたユダヤ系イタリア人の男性グイド。

彼は、小学校の先生をしている女性ドーラに一目ぼれして猛烈にアプローチする。

明るいグイドの愛に応えたドーラは彼とともに駆け落ちして結婚。

その後生まれた一人息子ジョズエと幸せに暮らしていた3人家族だが、次第に第二次世界大戦の影が忍び寄る。

ユダヤ系のグイドと、彼の血を引くジョズエは収容所に連行されてしまい、母と離ればなれになったジョズエは寂しさを隠せない。

息子のために、グイドはある「壮大な嘘」をつくことを決める。

そして、2人の大切な人であるドーラもまた、重大な決意を固めていた。

 

愛する人のためのユーモア

グイドは陽気な人物で、愛するドーラを楽しませるためにあらゆるユーモアを駆使します。

まるでファンタジーの世界のように、グイドといる時は、ドーラを取り巻く出来事が全て明るく優しくなるかのようです。

ドーラは彼と恋に落ち、二人の子ジョズエも明るい家庭ですくすくと育ちます。

グイドの冗談もユーモアも、全ては愛するドーラを笑わせ、大切なジョズエを幸せにするためなんだと実感する場面が続きます。

しかし、ユダヤ系のグイドとその子どもジョズエ強制収容所へ連行されることに。

ドーラがいないわずかな間に連れ去られた2人を追って、ドーラは自分もユダヤ人たちが連行される列車に乗り込みました。

 

グイドの嘘とは

ドーラを恋しがるジョズエに、グイドはあることを言い聞かせます。

「これはゲームだ」

「1000点集めたら勝ち」

「優勝すると本物の戦車がもらえる」

グイドは収容所生活をゲームに見立て、怖がって泣いたり、我儘を言ったら減点だと教えます。

辛さや寂しさを耐える理由と、家に帰ってママに会うという目標を与えたおかげで、ジョズエは上手いこと毎日生き抜きます。

収容所のルールを兵士がドイツ語で説明する時、一言もわからないグイドが翻訳に立候補し、対ジョズエのゲームの説明に変えてしまう場面があります。

周りの大人があっけにとられる中で、ジョズエだけが納得していた様子が思わず笑ってしまいました。

 

悲しみに明るさで立ち向かう

収容所内では、男性と女性は別々にされているため、ドーラとグイドたちは会えません。

そんななか、放送室に忍び込んで「今日は君の夢を見たよ!」と全所内にグイドが放送し、それをドーラが聞く場面では号泣不可避です。

離れていてもドーラに思いを伝えるグイドが、本当に幸せそうだからかもしれません。

グイドは常にドーラとジョズエのことを一番に考えています。

二人の幸せが、彼の幸せにとって最も重要なことだからです。

人が幸せを感じるのは感情に他なりませんが、グイドは誰よりも真剣に、大切な人の感情に寄り添っていました。

妻や息子を幸せにするためなら、彼は冗談も言うし、嘘もつくし、真実を隠しておどけることもできます。

グイドのユーモアは、戦争という重い影がかかる世界で、多くの人が心を蝕まれていた喪失感や悲しみ、恐怖から何よりも強く2人を守っていたのではないでしょうか。

大切な人の命を守るだけでなく、心も守ることで、人間を人間たらしめる部分が真摯に取り上げられているとも言えます。

戦争映画なのに暗さを感じない本作を観て、権力でもお金でもなく明るさで家族を守るグイドの姿に心底衝撃を受けました。

 

おわりに

戦争映画ではありますが、現実の出来事を知るための作品ではなく、「社会全体が悲しみや恐怖で抑圧されている時、人間が人間を守るために何ができるか?」が伝えられている映画だと思います。

家族のつながりが強いイタリアらしい光景も微笑ましく、こんな家族いたらいいなと感じてしまいます。

爽やかに号泣できる映画と言えばまずこの作品をお勧めしたいです。

 

    

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