本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

エリン・ブロコビッチ

五月病になりがちなこの季節、仕事する元気が出るかもしれない映画をご紹介します。

社会人だけじゃなく、学生さんが観てもモチベートされるハリウッド映画です。

エリン・ブロコビッチを演じたジュリア・ロバーツは、この作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。

主人公が仕事で活躍する映画を探している方にお勧めしたい一作です。

 

 

あらすじ

シングルマザーのエリン・ブロコビッチは、自分と子ども3人を養うための仕事を探していたが、ある日何とか法律事務所の事務員の仕事にありつく。

法律の知識が全くない中で慣れない仕事をこなすうち、エリンはある書類の束に小さな疑問を抱く。

書類の内容を調べるうちに明らかになったのは、巨大エネルギー企業であるPG &E社が、住民に健康被害をもたらす環境汚染をしていると言う事実だった。

 

実話に基づいたドラマ

国史上最高額の和解金を勝ち取った、実際の裁判に基づいた映画です。

この和解金を勝ち取るのに大活躍した女性エリン・ブロコビッチは、法曹関係者でも何でもなく、大学で法学部にいたわけでもありません。

法律事務所で事務をすることになった女性が、不動産関係の書類と健康診断の書類が一緒に綴じられていたことにたまたま疑問を抱いたところが話のスタートになっています。

書類の持ち主である女性ドナと話してみると、健康診断の書類は、付近の土地を買い取ろうとしているガス電力会社PG&Eが彼らの健診料をなぜか毎年支出しているために、住民がひとまとめにして保管していたものだと判明。

 健康診断には、人体に有害な六価クロムが検出されたか、六価クロムによる健康障害がみとめられるか、などの項目がありました。

専門家を訪ねたエリンは、六価クロムが人間に重大な健康影響を与えること、発電設備のメンテナンスに使われることを聞かされます。

更に水道局の資料により、ドナたちの住む地域ヒンクリーの水から六価クロムが検出されていることが明らかになりました。

PG&Eの工場から垂れ流された有害物資が付近の水環境を汚染し、健康被害をもたらしている。

しかしPG&Eは、地域住民に対して工場で使われているクロムは健康に影響のない三価クロムだと説明し、環境汚染と健康被害の関係を隠蔽しようとしていたこともわかります。

情報収集を始めると、次々に判明していく住民たちの健康被害

悪性腫瘍で乳房や子宮を摘出せざるを得なくなった女性、脳腫瘍で動けない10歳の少女など、がんをはじめとした深刻な疾患が明らかになりました。

巨大企業を相手取った、数百人の原告団による集団訴訟が始まることになります。

 

エリンの得意なこと

エリンの武器は行動力と対人能力です。

ふとした疑問を「まあいっか」と心の中にしまわず、様々な人に会いに行き、自分の足を使って答えを探します。

住民たちの健康被害の全容を明らかにし、集団訴訟を提起するためには多数の被害者たちの協力を得なければなりませんが、簡単によそ者の話を聞いてくれるわけではありません。

あなたのことが知りたい、役に立ちたい、という姿勢を見せて、友好的に人間関係を作る能力が不可欠です。

 高学歴でバリッとスーツを着た弁護士が、農家のおっちゃんとのコミュニケーションがままならず戸惑うシーンや、病気で学校に行けない女の子をエリンが巧みに励ます場面は象徴的ですね。

仕事柄田舎に行って各地の人と話したりすることがありますが、エリンのように人間対人間として信頼を築ける人材の力が不可欠なのを実感します。

高学歴が何の意味もなさないのも頷いてしまいます。

都会で力を持つ記号も、場所を変えると全く通じません、時たま逆も然りだけど。

エリンとの意思疎通が図れたヒンクリー住民たちは、自分たちの受けた健康被害について闘うことを決めますが、勝訴ではなく調停を狙うという方針転換に際して揉めたり、一筋縄ではいかない状況が続きます。

 

情熱の源泉

エリンが裁判に向けて奔走するのは、被害者たちに寄り添う思いがあるためです。

最初に話を聞かせてくれたドナや、脳腫瘍に苦しみながらも質問に答えてくれた少女アナベルなど、地域住民と人間対人間のコミュニケーションで距離を縮めたのち、彼女たちの健康状態やどんな人物かについて正確に向き合い、闘う決意を固めています。

「まあまあことを荒立てなくてもいいじゃない」と言うかのように、PG&E社の弁護団が被害者の頬を札束ではたきに来た時も、エリンはエドたちと共に交渉を拒否し、強烈な台詞を叩きつけます。

自分の脊髄に値段がつけられる?

あなたはいくらで自分の子宮を売るの?

言葉に窮して卓上の水を飲もうとした弁護士に、さらに言い放ちます。

それはあなたたちのために用意した、ヒンクリーの水よ。

弁護士はグラスを口に運ぼうとしていた手を止めました。

弁護団の交渉を突っぱねると同時に、PG&Eがしていた悪事(人間の飲料を取水できない有害な水環境を作った)に「健康への影響はなかったなんてしらばっくれるつもりはないだろうな」と啖呵を切った場面でもあります。

このシーンを名場面として挙げる人は多く、エリンの正義感と情熱を象徴する一コマと言っていいでしょう。

 

周りのサポート

エリンを突き動かすのは、健康被害を受けた被害者に寄り添う気持ちと強い正義感ですが、そんな彼女を様々な人が支えています。

彼女が働いている間子どもたちの面倒を見てくれる恋人ジョージや、彼女の仕事を指導したりサポートしてくれる上司の弁護士エドです。

特にエドは、エリンが情熱と正義感で突っ走るのは冷静に支える役目として重要です。

被害者たちに寄り添う情緒的な部分はエリンが持ち前の行動力とコミュニケーション能力でカバーしていますが、大企業と法的に争うことを考えたときの現実的な側面については、エドが弁護士としてアドバイスやサポートをしています。

彼の存在によってこの映画は、単なる感情的な正義を伝える物語ではなく、法律による正義を勝ち取るためには何が必要だったか、を知ることのできるストーリーになったと思います。

 

ジョージの存在も、ワーキングマザーとしてのエリンを支えてくれる人物が必要だったことを伝えています。

実話を基にしているからこそ、ご都合主義で正義が勝つ物語にはならず、1人の人間が職業人としての壁や家庭人としてのハードルにぶつかりながらも懸命に進んでいった様子に共感できる作品になっています。

 

おわりに

シェリル・クロウのEveryday is a Winding Road がエンディングテーマとなっていますが、映画の内容にぴったりでした。

住民たちに寄り添ってがむしゃらに取り組むエリンの姿や、それを支える周りのサポートに感動させられる映画です。

辛いことがあっても、うまくいかない時があっても、エリンのように自分の信念や直感を大事にして突き進める職業人になりたいと思いました。

 

  

 

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