小説『マグマ』
才色兼備なヒロインが奮闘する経済小説をご紹介します。
- あらすじ
- 地熱発電とは
- 3.11以前に書かれたと思えない分析眼
- ヒロインのキャラクター
- おわりに
あらすじ
外資系コンサルティングファームに勤務する野上妙子は、ある日出勤すると、自分以外のチームメンバー全員が解雇されたと聞かされる。
そして、残された妙子は、大分で地熱発電事業を営む日本地熱開発の事業再生を任された。
突然の地方案件に戸惑う妙子だったが、日本地熱開発社長の安藤とともに初めて知る事業領域に足を踏み入れる。
よそ者の妙子に厳しい顔を見せる技術者たちだったが、やがて会社を救うための発電事業について、妙子や安藤とともに必死に道を探ることとなる。
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ドイツの音楽 Xavier Naidoo他
ドイツの音楽で、1人についてたくさんの曲を聴き込んでるわけじゃないけど単品でいいと思った曲をご紹介します。
- Xavier Naidoo
- Rosenstolz
- Jennifer Rostock
- おわりに
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映画『戦火の勇気』
湾岸戦争を背景にした映画のレビューです。
メグ・ライアンとデンゼル・ワシントンが主演を務めた作品をご紹介します。
戦場サスペンスという一面がありつつ、強いメッセージも持っている作品です。
原作小説の原書を読んだことがありますので、そちらにも簡単に触れたいと思います。
あらすじ
湾岸戦争中のクウェート領内で、部下の乗った戦車を誤射してしまったナサニエル(ナット)・サーリング中佐は、表彰候補者の調査を行う業務へ配置転換された。
仲間を殺してしまった罪悪感に苦しみながらも、表彰候補者となった女性カレン・ウォールデン大尉の調査を進めるナットは、やがて不審な点に気づく。
カレンの臨終に立ち会った兵士数人の証言の内容が一致しないのだ。
ある者は勇敢だったといい、ある者は臆病でパニック状態になっていたと証言する。
勲章授賞者というヒーローを生み出したい上から制止されながらも、ナットは独自に調査を継続することを決意した。
戦場サスペンス
1つの事象について皆が食い違う証言をするという、黒澤明監督『羅生門』のような構成になっています。
ディティールが違うどころか、異なる兵士から全く正反対の証言が出てきます。
それに加えて、全身をがんに犯されてまともな証言が取れなかった男のうわ言、証言をした後自殺を図った男など、事態は混迷を極めます。
ナットが戸惑いながらも調査を進め、最後に辿り着く証言ですべてが明らかになります。
戦場という極限状況の中で、自らの命が危険に晒された状態で、人間が何を感じどう行動したのか、映画を観ながら考え込まざるを得ません。
ナットの苦悩
敵の戦車と誤認し、親友に攻撃してしまったナットは、湾岸戦争から帰還してからも深刻な苦悩に見舞われます。
戦争だったとは言え、
特殊な状況だったとは言え、
人の命を奪ったという事実による罪悪感は計り知れないものでした。
そしてその姿は、生きて帰ってきたものの、ナットへの証言後に何らかの理由で自殺した兵士の姿と重なります。
詳しくは伏せますが、ウォールデン大尉と居合わせた他の兵士も深刻なトラウマに悩まされていました。
この描写から、戦勝国側で戦い、生きて帰れたとしても、戦場から何も傷つかずに帰ってくることなど出来ないのだと思い知らされました。
戦争に勝利しても、帰還を遂げても、誰かを殺した罪悪感や、人の死に立ち会った衝撃から逃れることはできない。
映画ではカレンの死にまつわる謎を追うことがメインテーマになりますが、
小説ではナットや帰還兵たちの苦しみがより詳しく描写されていました。
映画を観て興味を持った方は、是非小説も手に取られることをお勧めします。
その他の見どころ
帰還兵役で出演しているマット・デイモンは、やつれた若者を演じるため過酷な減量に挑んだそうです。
実際、命が心配になるレベルの痩せようで、終盤の迫力を否応なく増していました。
本作の監督はエドワード・ズウィックが努めています。
『ラスト・サムライ』『ブラッド・ダイヤモンド』など、他にも戦いをテーマとした作品を複数手がけており、特に『ブラッド・ダイヤモンド』は大きなテーマを扱った大作となっています。
おわりに
ラブコメの女王メグ・ライアンの女性兵士役ということで、ミスキャストと思う方もいたようですが、私は特段違和感なく観られました。
ラブコメの方の作品をあまり観たことがないからですが。
ナット役のデンゼル・ワシントンはこの人しかいないと思える配役でした。
シリアスなテーマについて考えたい時にお勧めの作品です。
映画『日の名残り』
人生の回想を軸とした、カズオ・イシグロ原作の映画をご紹介します。
原作の小説も読了していますので、そちらも意識しながらレビューを書きました。
ネタバレでお送りしています。
- あらすじ
- 仕事に人生を捧げた主人公
- 一人称の回想
- 回想に付随するテーマ
- おわりに
あらすじ
英国の美しい田舎にあるダーリントン・ホールには、この邸宅に長年使える執事のスティーヴンスがいる。
彼は、屋敷の新しい主人が与えた休暇を利用して、かつての仕事仲間であったミス・ケントンを訪ねることにした。
一人旅の道中で彼は、かつての主人だったダーリントン卿が第二次大戦前夜に開戦阻止のため奔走していたことや、ミス・ケントンとの思い出を回顧する。
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映画『モンスター』
実在した連続殺人犯であり、娼婦であった女性アイリーン・ウォーノスの半生を描いた映画です。
絵に描いたような美人のシャーリズ・セロンが大幅に体重を増やして殺人犯役に挑戦したことが大きな話題を呼びました。
彼女は本作でアカデミー主演女優賞を受賞しています。
ネタバレでお送りします。
- あらすじ
- アイリーン・ウォーノスという人物
- モンスターは最初からモンスターだったのか
- 踏みつけにされた女性性
- 誰がモンスターを生んだのか
- おわりに
あらすじ
娼婦のアイリーンは、ある夜偶然出会ったレズビアンのセルビーと恋に落ちる。
互いに好き合っているセルビーと一緒に過ごす金を稼ぐため、アイリーンは売春をしていたが、ある時暴行してきた客を殺してしまう。
売春以外の仕事を得ようとするも上手くいかず、収入がないことをセルビーに詰られたこともあり、結局は娼婦に戻ることになる。
しかし、理性の箍が外れていった彼女は何件も殺人を重ねていってしまう。
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ブログについて4
7月が終わりましたので、ブログについてまとめてみます。
7月の数字
7月のPVは、ひそかに目標としていた7500を超えることができました。
何度かはてなブックマークからの流入を獲得した記事があったようで、それらが貢献しての数字となりました。
また、7月31日時点で読者登録いただいている方の数は、140名以上となりました。
こちらも、前月末から40人ほど増加ということで嬉しい結果です。
記事総数は130を超えました。
これからも読んでいただける記事を少しずつ書いていきたいです。
ご紹介いただいた方々
7月は、3名の方にご紹介をいただきました。
ありがとうございます。
フランス映画の知識が少ないので、ニール・スキナードさん(id:lynyrdburittoさん)の記事の知識量に圧倒されています。
『シェルブールの雨傘』で好きになったドヌーヴの出演作品が沢山紹介されていましたので、それを観ていつか新たなレビューを投稿できればと思います。
ブックマークの多かった記事
7月は10以上のブックマークを頂いた記事が複数ありました。
最多は『ガタカ』の20ブックマーク。
SF映画のレビューは現時点でほとんど書いていませんが、今後も印象的な作品をまたご紹介できればと思います。
次点は『硫黄島からの手紙』の19ブックマーク。
スターはこちらの方が沢山いただいていました。
kleinenina.hatenablog.com
3位はドラマ『リベンジ』の17ブックマーク。
これまで全く人と感想を話したことのないドラマでしたが、コメントやブックマークを頂けて嬉しい驚きでした。
このほか、『道』が12ブックマークをいただきました。
ありがとうございました。
更新作業について
一日ほど途切れましたが、ほぼ毎日更新と言うルールは概ね守れました。
ただ、進めようと思っていたリライト作業が思うように進まず。
仕事柄、家におらずPCで作業できない日が多いため、更新作業で精一杯というときが長いです。
あまり文章の内容は変えず、体裁を整えるくらいですが、少しずつでも進めていきたいです。
映画『奇人たちの晩餐会』
フランス発のシュールなコメディ映画をご紹介します。
「パリジャンは嫌な奴」というステレオタイプを全力で体現したかのような人物が主人公です。
あらすじ
パリの出版社社長ピエールは、友人数人と、奇人変人を見つけては晩餐会に招き、その変わり者ぶりを眺めて悦に入る趣味があった。
彼は、ある日マッチ棒で模型を作ることに傾倒している税務局員フランソワ・ピニョンを晩餐会に招待する。
しかし、会の直前に腰を痛めたうえ、喧嘩をした妻クリスティーヌに家出されてしまった。
キャンセルの連絡が間に合わず、ピエール宅まで来てしまったピニョン。
ピエールは彼に頼んで医師を呼んでもらおうとするが、それはこの夜を通して続く喜劇の始まりであった。
シュールなドタバタ喜劇
主人公のピエールは非常に嫌な奴です。
奇妙な人を見つけて笑いものにする晩餐会をわざわざ開く意地の悪さの持ち主です。
妻のクリスティーヌもそんなところが嫌いだと言い、出て行ってしまいます。
そんな彼がピニョンの巻き起こすドタバタ喜劇で踏んだり蹴ったりの災難に見舞われるのが本作のメインストリームです。
戻って来てくれた妻が追い返されるわ、愛人と決裂するわ、昔の恋敵に情けない姿を見られるわ、散々な目に遭います。
最初はピエールを意地悪な奴だなと思っていても、あまりの受難ぶりに途中から憐みすら覚えます。
しかし、すごく良い人がトラブルに巻き込まれる話だと、観ている方は可哀想と感じてしまうので、「嫌な奴が報いを受ける」くらいの仕上がりにした本作は正解だったのかもしれません。
呼び出されてこの喜劇に参戦するジュストが、常識人ポジションを取っているのも絶妙なバランスです。
コンパクトに展開するコメディ
一夜の出来事としては信じられない密度の展開が繰り広げられますが、
空間的にはほとんどピエールの自宅を出ることなく話が進みます。
これだけの喜劇を一つの家の仲で引き起こすなんて凄いと感じたのですが、
そもそもこの映画の原作は舞台演劇なのだそうです。
映画の表現は、空間の縛りというものから大抵無縁に展開しますが、舞台演劇の場合は様々な制約がある中で、壮大なストーリーや長い時間に渡る出来事を表現していること、その凄さを間接的に実感しました。
派手なところはないけれど、喜劇が喜劇を呼ぶ前後のつながりや、ピニョンのキャラクターによってしっかり笑える展開になっているところが秀逸です。
おわりに
おそらくは仕事もそれなりに成功し、妻との家庭も築いて人生順調だったピエールに突然降りかかる災難の数々が、ピエールには申し訳ないけど笑いを誘います。
文化的背景や知識を問わず、その場の展開を楽しんで笑うことのできる、素朴だけど完成度の高いコメディです。
小さいおっさん・ピニョンの巻き起こす波乱の数々に目を奪われつつ、ピエールを生温かい目で見守るのが良いかと思います。
短いですが、今日は此処まで。