本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『顔のないヒトラーたち』

終戦後のドイツが、どのように歴史の反省を始めたかがわかる映画をご紹介します。

 

  • あらすじ
  • 反省の歴史が始まる前のドイツ
  • 封じ込められていた真実
  • 辛い記憶と秘密
  • 何が普通の人々を変えてしまったか
  • おわりに

 

あらすじ

戦争の記憶が薄れ始めた60年代の西ドイツ。正義感の強いフランクフルトの新人検事ヨハンは、交通違反など軽微な事件ばかりこなし、仕事に対する熱意を持て余す日々を送っていた。

ある日、アウシュヴィッツで勤務していた男が現在教職に就いていることが判明し、彼は上司からナチスの犯罪に加担していたその男を起訴する手続きをするよう言い渡される。

右も左も分からない中で証拠集めを始めたヨハンだったが、やがて彼が想像もしなかった悲惨な強制収容所の実態を紐解いていくことになる。

ナチス戦争犯罪を自国検察から糾弾した人物たちの実話を基にしたフィクション。

 

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Sex and the Cityと東京タラレバ娘2

で、ドラマ中盤で賛否両論の議論がやや巻き起こったりもしていた東京タラレバ娘について、前回書いたSex and the Cityと比較してレビューしたいと思います。盛大にネタバレしながら。

 

  • あらすじ
  • SATCとの共通点
  • SATCとの相違点

 

あらすじ

売れない脚本家の倫子、ネイリストの香、父の居酒屋を手伝う小雪は、全員30歳で東京在住の独身女性。頻繁に3人で集まっては女子会を開いている。

ある日、3年後に迫った東京オリンピックの時に独身でいたくないと思ったこと、また、若く見目麗しい青年KEYから女子会を「行き遅れ女の井戸端会議」となじられたことをきっかけに、3人は一念発起してそれぞれ恋活・婚活に取り掛かる。

 

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Sex and the Cityと東京タラレバ娘

映画の記事がほとんでですが、今週最終回を迎えた『東京タラレバ娘』を見るたびにSATCを思い出していたので、この機にネタバレを盛大にかましながら書いてみようと思います。

 

  • Sex and the Cityについて
    • あらすじ
    • 何歳になっても人生を楽しむドラマ
    • メインロールの個性
    • 華やかだけど共感を掴むヒロイン

 

Sex and the Cityについて

あらすじ

ニューヨークに住む恋愛コラムニストのキャリーは「恋愛至上主義」を人生の信条に掲げ、暇を見つけては女友達と街に繰り出し、独身生活を謳歌しながら新たな恋を探している。

キャリーに加えて3人の女友達(弁護士のミランダ、PR会社経営者のサマンサ、ギャラリーのマネジャーであるシャーロット)も含めた、仕事や様々な人生の一場面を描く恋愛群像劇。

 

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映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

ドイツ映画でおすすめは、と訊かれたら、筆頭に挙げたい作品です。

コメディ映画でおすすめを訊かれた時も、絶対にこれを挙げたいくらい、かっこよくて楽しくて切ない映画です。

ロードムービー界でも間違いなくトップです。

 

 

あらすじ

2人の若い男性マーティンとルディは、不治の病で余命僅かと宣告された。

まだ一生で一度も海を見たことがないというルディに海を見せるため、

マーティンは彼を連れて病院を脱走し、何度も差し向けられる追っ手を間一髪で振り切りながらドイツ北部の海へと向かう。

 

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映画『ミス・ポター』

イングランドが誇るうさぎ、ピーター・ラビットの作者の半生を描いた映画のレビューです。

 

 

あらすじ

ビアトリクス・ポターは書きためていた絵と物語を作品にするため各所を訪ね回っていたが、ある日小さな出版社との交渉に成功する。

担当編集者との出版プロジェクトはおぼつかない足取りで始まったものの、やがて彼と深い信頼関係を築き、作家として絵や物語を発表していくことになる。

また、妙齢にも関わらず独身だった彼女に対する家族の認識も変わっていく。

絵や自然と戯れていられれば幸せだったビアトリクスの考え方にも、新しい人間関係の中で変化が訪れる。

 

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映画『くちびるに歌を』

『沈黙』に続き九州ネタでお送りします。

 

 

あらすじ

五島列島の中学校に、美人で気だるげな音楽教諭・柏木ゆりが赴任してくる。

彼女が東京の音大を出たプロのピアニストだとわかると学校中が湧き立つが、当の本人はピアノは決して弾かないと言い放つ。彼女の影響で突如男子部員を受け入れることになった合唱部の女子部員たちは当初反感を持つものの、ゆりの内面を知るにつれ互いの溝が埋まっていく。

また、ゆりも15歳の生徒たちがそれぞれに葛藤を抱えた人間であることを理解し、彼らへの関わり方を徐々に変えていくことになる。

 

アンジェラ・アキの『手紙〜拝啓 十五の君へ〜』をモチーフに、合唱部の部員たち先生たちの群像劇を描くドラマです。この曲は、過去実際にNHK合唱コンクールの課題曲になったことがあります。

 

十五歳の葛藤

中学生の頃の、知識や情緒はどんどん発達していくのに、自分で決められることやできることは全然増えていかない苛立ちとか、住んでいる世界を全然変えることができない無力感とか、色々思い出してしまいました。

爽やか生徒たちのぶつかり合いと成長、という美しいところばかりでなく、大人の事情に揉まれ振り回されながら生きていく苦しさも描写されています。部員を「こども」ではなく1人の人間として扱っている感じがします。

ヒロインの柏木ゆりは最初部員たちに対し冷淡な態度を取りますが、言わば最初から手加減なしだったという意味で、観ていくうちにだんだん評価が高まっていきます。笑

 

大人になっても続くもの

さらに、生徒たちの青春葛藤ドラマだけでなく、大人になってからも悲しいことや悩みには向き合っていかなければならなくて戦いは続くのだ、というメッセージも込められていると思いました。『手紙』の歌詞に忠実に沿った内容です。

年齢が年齢なので生徒たちよりもゆりの方に感情移入してしまい、ガッキー演じるゆりが辛い過去と向き合う場面では思わずしんみりしました。

 

おわりに

群像劇の伝えるメッセージということを差し引いても、細かいディティールでくすっとしたり、各登場人物のキャラクターを楽しく観たり、伏線回収に感心したり、五島の風景を楽しんだりするだけでも充分に楽しめる映画だと思います。

人生の色々を乗り越える登場人物たちを観て、ポジティブになれる邦画が観たいなーというときにお勧めしたい作品です。

 

   

  

くちびるに歌を

くちびるに歌を

 

 

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映画『沈黙』

公開からしばらく経っていますが、せっかく観たので感想を書き残したいと思います。

また、長崎の隠れキリシタンの歴史や関連作品についてご紹介します。

 

 

あらすじ

ポルトガルにいる2人のイエズス会の宣教師は、日本で布教活動をしていたイエズス会の宣教師フェレイラが、迫害に屈して棄教したという知らせに驚愕する。

誰よりキリスト教に身を捧げていた師フェレイラが信仰を捨てるはずはないと思った彼らは、真相を確かめるため長崎に上陸した。

案内人のキチジローとともに小さな島や村を巡るうちに、彼らは隠れキリシタンの信仰の実態や、江戸幕府による迫害を目の当たりにし、やがて自らも棄教・改宗を迫られる。

凄惨な状況に向き合う中で、宣教師は「信仰のため試練に耐えている彼らを前に、神はなぜ沈黙しているのか?」と自問し続けるようになる。

 

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