映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』
親友の男性の結婚式を目前に、彼を振り向かせようと奮闘するヒロインの映画のネタバレレビューです。
コメディとしてもドラマとしても珠玉の名作です。
先日引退報道があったキャメロン・ディアスの若く初々しい姿も印象的。
あらすじ
キャリアウーマンのジュールスは、元彼であり長年の親友でもあるマイケルと、28歳になってもお互い独身だったら結婚しようと約束していた。
そのマイケルから、28歳の誕生日の直前に電話がかかってくるが、「結婚式を挙げるので参列してほしい」と聞き言葉を失う。
今更ながら彼への気持ちに気付いて愕然とするものの、ジュールスは奮起して現地に向かう。
会ってみると、若く美しい婚約者キンバリーは、彼女と正反対のタイプだった。
しかし、どうしてもマイケルを諦めきれないジュールスは、結婚式を阻止しようと、本番までの数日間に様々な手を使って奔走することになる。
アラサーあるある
働くことに慣れてきた頃、次々に友人たちが結婚していくのは日本でもよくあることです。
いつまでも一緒に会ったり騒いだりできると思っていた仲間が、自身の人生の選択をしていくのは、自然なことですが少し寂しい時もあります。
ジュールスのように、過去の大事な相手と、友情以上恋愛未満の関係になった人もいるでしょう。
しかし、相手の人生の選択に際して、本当の気持ちに初めて気づくとなれば、いくら人生経験があったとしても大混乱です。
本作では、ジュールスの奮闘がコミカルに描かれ、観ている側は笑ったりハラハラしたりしながら彼女の作戦の成否を見守らざるを得ません。
若さの脅威キム
マイケルの婚約者キンバリー(キム)は、20歳の初々しい大学生で大富豪の娘です。
世慣れてキャリアもあるジュールスと正反対なので、ジュールスの良さを再考してもらえるようにあの手この手で印象操作が行われます。
ところが、若さが不利になるかと思いきや、キムはいつもピンチをチャンスに変えていきます。
苦手なカラオケを歌わされても、一生懸命歌う姿で周囲の声援を勝ち取ったり、
マイケルのプライドを傷つける提案をしてしまっても、彼に素直に謝ることでより絆を深めたり、
ジュールスが想像もできない、彼女自身ではとても成しえない方法で事態を解決します。
一生懸命さや素直さは若い時特有の武器で、ある程度色々な能力を身に着けたジュールスにはかえって使いこなせないものです。
実際、全編を通じてジュールスの素直になれなさや、強がりが本当の気持ちの邪魔をしています。
若いのに持てる力を全て発揮してマイケルとの関係を築くキムと、経験を積んだからこそなかなか踏み出せないジュールスの対比が印象的でした。
でも、若いからと言って誰もが一生懸命さや素直さを発揮できるわけではないので、キムの人格こそがマイケルにとって魅力的だったのは間違いありません。
行動的で力強いジュールスと、従順で優しいキムの、人間としてのキャラクターの対比も巧みでした。
大人の現実
マイケルに気持ちを言えないジュールスは、その場に来てくれたゲイの友人ジョージが婚約者だと嘘をついてしまいます。
祝福する周囲ですが、マイケルにとっても、ジュールスは特別な存在なので少し浮かない顔です。
しかし、人生は一度しかないし、パートナーは一人しか選べません。
ジュールスとの思い出がありつつも、マイケルはキムと一緒に人生を歩むことを決めています。
ジュールスは順調な人生を歩みながら、チャンスはいつでもあるとどこかで無意識に思っていたから、マイケルとの関係を特に変えなかったのでしょう。
現実には、人の気持ちは変わるし、時間は有限です。
収入や能力は増えていったとしても、時間は減っていくし人生は待ってくれません。
ジュールスとキムのドタバタを眺めているうちに、自分の気持ちに素直に向き合い、持っているチャンスには言い訳せずぶつかっていかなければ、と思わされます。
人生に決まったルートはないからこそ、本当に求めているものは自分で見定めて、チャンスがあればタイミングを逃してはいけない。
自分の人生を後悔なく生きられるようにできるのは自分しかいないから。
よく引用されるこの台詞が、映画の核心を突いていると思います。
「"愛してる"と言え、そう感じたら大声で。さもないとその瞬間は過ぎ去る」
おわりに
名作ですが地味に古い映画なので、携帯電話が完全に平野ノラさんのあれです。
勝手に人の業務用PCを開けてメールを送れるとか、セキュリティ甘々なところも懐かしい。
なお、ジュールスが結婚阻止のために打つ手段は割と色々最低なのですが、必死さがありつつも重過ぎないコメディになっていました。
ツッコミを入れつつ核心を指摘するジョージなど、登場人物間のバランスも絶妙です。
エンターテインメントとしての面白さがばっちりな上、人生や愛についてのメッセージも素敵な作品でした。
思い出が増えてきたアラサー世代にぴったりの映画です。