本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『ビフォア・サンセット』

恋愛映画の金字塔『ビフォア・サンライズ』の続編をご紹介します。

偶然すぎる運命の出逢いから9年後の2人を描きます。

ところどころネタバレします。

 

 

あらすじ

9年前のヨーロッパ旅行でセリーヌと恋に落ちたジェシーは、当時の思い出を小説に著して人気作家となった。

彼は著書のPRのためパリの書店を訪れていたが、スピーチの最中、店内に佇んでこちらに微笑みかけているセリーヌに気づく。

彼はイベント終了後すぐにセリーヌと話し出し、アメリカに帰国するフライトまでのわずかな時間をパリの街中で彼女と過ごす。

 

時間を感じさせない再会

2人でウィーンの街を歩き回ってから長い時間が経っていますが、序盤から前作のようにノンストップでひたすら話し続ける場面が続きます。

知的で自立心のある学生だなと思いながら『ビフォア・サンライズ』を観ていましたが、32歳になってもその点は変わっていません。

お互いに魅力を感じるポイントはそのままに再会し、会話のリズムもすぐに戻ってくるとあっては、前作以上にドラマを感じざるを得ません。  

 

9年経ったという現実

一方で、それなりの時間が経ってしまったこともストーリーの中に織り込まれており、現実感から離れすぎない構成になっています。

2人とも大学を卒業して働いているし、セリーヌはあの夏以降何人かの人と付き合っているし、ジェシーは結婚しています。

若者らしくどんな夢でも描けた23歳の頃とは少し様子が違っていますが、 そうしたディティールが物語に現実味を添えていて、大人も共感できる物語になっていました。

9年前と比べて本人たちもそれを実感しているのがわかります。

また、運命的で大切な思い出であっても少し忘れている部分があったり、そんなリアルさや時間の残酷さも描写されているところが秀逸でした。  

 

大人の甘酸っぱさ

生活の拠点はアメリカとフランスで遠く隔たっており、 それぞれ仕事や家族など生活の軸を築いている2人が、 お互いの変わらない魅力に喜びつつも、今の自分の状況を考えると戸惑いがあり、前作のラストでした約束が果たせなかったことを残念がります。

社会的しがらみが恋愛を阻むのも大人ならではの世界です。

学生時代と比べると、人生のステージを変えるチャンスや、残り時間も少なくなっています。

色々なことに対して「きっとまた素晴らしい機会が巡ってくるさ」と思いにくくなるのも事実です。

セリーヌが突如号泣会見してしまう気持ち、痛いほどわかる…。

前作は一晩の出来事を2時間にまとめていましたが、本作は80分弱の映像をほぼリアルタイムのストーリーにして撮っています。

パリを歩きながらのロマンチックな時間ではありつつも、大人特有の「時間のなさ」も捕らえているかのようです。  

 

物語の舞台について

この映画を思い出すとき、パリの夏の夕方の景色が目に浮かびます。

前作も夏の物語でしたので、このシリーズでは恋の舞台としていつも夏を選ぶことに決めているようです。

強く思うのは、物語のなかで前作と充分な時間をおいて続編を描いたこと、そのうえで現実的な要素を付加したことは名案でした。

前作と趣を変えつつも、一続きの作品として連続性を持たせるために重要なポイントだったと思います。

また、前作のウィーンも、本作のパリも、古今変わらない美しい街並みをそなえています。

もしも東京やベルリンのような現代的な街だったら、写り込んだ景色から撮られた時期がわかってしまい、普遍性が薄れてしまうかもしれません。

しかしウィーンやパリはずっとアンティークな景色を湛えていますから、比較的時代を感じさせずに観ることができます。  

 

おわりに

主人公たちは32歳ですから、30代になってから観たらまた違う感想が出てくるかもしれません。

次作についても同じことが言えそうです。

いずれにしろ、夏の夕方に観るのにぴったりの映画です。

是非シリーズ続けてご覧になってみてください。 

 

  

 

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