本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『カティンの森』

ポーランド史における大事件を描いた映画をご紹介します。

 

 

あらすじ

第二次世界大戦下のポーランド

西はナチス・ドイツから、東はソ連から侵攻され、ポーランドは国家としての姿を失った。

独ソ不可侵条約で手を握ったドイツとソ連は、ポーランドを分割統治することとなったのだ。

ナチスが忍び寄るクラクフから逃げてきたアンナは、ソ連側へ連行される直前の夫アンジェイに会うことができた。

逃亡を勧めるアンナだったが、アンジェイは軍への忠誠からそれを拒否する。

連行されて行った数多の軍人たち、その家族たち、そしてすべてのポーランド人にとって、長い苦難の歴史が始まろうとしていた。

 

 

カティンの森事件とは

第二次世界大戦中、ソ連占領下のエリアで20万人以上のポーランド軍捕虜が行方不明になりました。

ロンドンへ移転していたポーランド亡命政府からの再三の問い合わせにも、ソ連側は「全員釈放した。手続きや輸送の関係で所在判明が遅れているだけ」と回答します。

しかしスモレンスク近郊のある村では、1万人以上のポーランド人捕虜が森の中で銃殺されたとの噂がありました。

やがて独ソ不可侵条約が破られ、独ソ戦が勃発し、この地域がドイツ支配下に入ります。

噂の真偽を確かめに調査に入ったドイツ軍は、森の中で大量の遺体が何層にもわたって7つの穴に埋められているのを発見。

近くにあった覚えやすい名前の集落にちなみ、カティンの森事件と名付けられました。

ナチスドイツは、この事件を報じればソ連側に打撃を与える広報戦略が打てると考え、赤十字へ調査を依頼します。

ソ連側の犯行であることを明らかにし、残虐行為を糾弾することが狙いでした。

しかし、自らの犯行が非難されることを恐れたソ連側は、調査協力を拒否。

自国民の行方を知るため調査を望んでいたポーランド亡命政府へも「ナチスドイツの犯行だと言え」と要求します。

しかし、拒否されたため断交を通知しました。

ソ連の立会いなしで行われた調査では、ソ連の犯行である可能性が濃厚とされました。

ところが、ソ連が連合国側だったことから世界に向けて発表されることはありませんでした。

 

大国に翻弄される歴史

戦中、ポーランド国民はナチスドイツによって、カティンの森事件ソ連によるものだと伝えられていました。

当然のことながら、自分の国に対して行われた蛮行にポーランド国民は驚愕し戦慄します。

しかし戦争が終わり、ソ連が東側世界を束ねるようになると、彼らは再び「真実を教える」と言われ、カティンの森事件ナチスドイツの仕業だったと告げられます。

自国民に対する大量虐殺が行われたばかりでなく、真実を真実として知ることすらできない。

相手の都合で事実がいつでも書き換えられる。

どれだけ蔑ろにされ、大国に翻弄されなければならないのか。

西側列強と、大国ロシアに挟まれたポーランドは、この場面以外でもたびたび運命を他国に書き換えられてきたはずです。

しかし、苦悩に苛まれる登場人物の表情をみると、真実を奪うことの残酷さを特に実感せざるを得ません。

 

淡々と過去に向き合う

ポーランドの人々がひたすら大国に翻弄される過程を描いているものの、描写はあくまで淡々としています。

苛烈な被害者意識や、激しい言葉は含まれていません。

あくまでも冷静に、起こったことを淡々と伝えています。

しかし、だからこそ遺族が向き合わざるを得なかった事態の異常さが際立っていました。

また、緊迫感を伝えるに余りある迫力も印象的でした。

 

おわりに

本作はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の作品です。

2016年に惜しまれつつ世を去りましたが、ポーランド史に深い洞察を加える映画を数多く発表しています。

『抵抗』三部作と呼ばれる『世代』『地下水道』『灰とダイヤモンド』が特に有名です。

まだ本作以外の映画は観られていませんが、いずれ観ていきたいです。

短いですが、今日はここまで。

 

  

 

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