本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

フィッツジェラルドの短編を基にした映画をご紹介します。

大物主演2人の演技が心に残る作品です。

核心部分はネタバレせずにお送りします。

 

 

あらすじ

ハリケーンが近づくニューオーリンズの病院の一室で、死の床に伏す老婦人が娘キャロラインに日記の朗読を頼む。

日記には、ベンジャミン・バトンという男性の人生が綴られていた。

第一次世界大戦終結した日に生まれたベンジャミンは、父の手によって近隣の老人福祉施設に置き去りにされる。

施設の経営者夫婦に拾われた彼は、老人のように皺だらけで、関節も弱く、長くは生きられないと思われていた。

しかし、ベンジャミンは年とともに若返り、様々な場所で多くの人に出会いながら人生を送っていくこととなる。

 

若返る人生でも変わらないこと

人はみんな歳を取ると肌が皺だらけになり、歩けなくなり、内臓が弱り、健康が保てなくなって死を待つようになります。

ベンジャミン・バトンは反対に、80歳の老人のような状態で生まれ、車いす生活を経て、杖での歩行ができるようになり、やがて杖なしで歩き出しました。

顔も体も年月を経るごとに若返っていきます。

しかし、それでも映画を観る人が彼に共感せずにいられないのは、

親との素朴な思い出や、お酒や異性との初体験、

自活して一人前になること、初恋や大人の情事など、

誰もが人生で通過する出来事を、一つずつ経験する過程が描かれているからでしょう。

上映時間が2時間45分と長いのも、人生の経過を丁寧に描写した結果です。

体の変化が普通の人と反対であっても、心の成長は誰もが一緒なのかもしれません。

小さなころに愛ある人に囲まれて成長できたこと、

美しく成長した幼馴染と再会して変化に戸惑うこと、

別の人生を選んだ人と再会して寂しさと嬉しさを分かち合うこと、

そうした記憶や状況に出会うのは何もベンジャミンだからというわけではありません。

色々な経験をしたベンジャミンが、観た人の誰もと少しずつ共通の体験を見つけられる、というのがこの映画の魅力だと思います。

 

若返る人生の苦しさ

そんな中でも、ベンジャミンが若返る人生の辛さと向き合わなければならなくなる時が訪れます。

家族を持った時です。

友人や恋人は、いわば人生のうち一場面を共有する人たちですが、

家族とは人生のうち長大な年月を共有することになります。

同じ人生の流れを経験できないベンジャミンは、自分は家族を持つに相応しい人間なのか悩み、一つの結論を出します。

「誰もが通る道」を積み重ねたような前半から、後半はベンジャミンだけの悩みと向き合う展開が出てきます。

 

人生の素晴らしさとは

様々なことを初めて経験しながら、人は10代、20代に人生の基礎が作られていき、

色々な人との出会いの中でその体験を共有し、関係を作っていきます。

若いうちには互いの人生の違いがまだはっきりしていないので、友達や恋人を作ることは比較的簡単です。

しかし、年を取っていくごとに「自分にしかわからない悩み」ができたりして、

人と共有できることが少なくなったり、あるいは共有のハードルが上がったりします。

自分と全く同じ人生を送ってきた人はいないからです。

それでも、人生の全部でなく一部分でしかなくても、誰かと大切な記憶や経験を共有できることは尊くて、自分で生きていくしかない人生を支えてくれるものなのではないか。

自分と、自分でない人との間には、埋めることのできない違いがいつもあります。

だからと言って人は常に寂しいわけではなく、孤独を忘れさせてくれる人や経験に出会いながら生きていくことはできます。

人とは決定的に違う人生を送っているベンジャミンの姿を見て、そのことを実感させられました。

 

おわりに

飛びぬけてドラマチックな演出はない映画ですが、人が生きていくこととは何なのか、

考えさせてくれる作品でした。

また、ブラッド・ピットケイト・ブランシェットの若い場面・年を取った場面それぞれのメーキャップがそれぞれ精巧で、物語にリアリティを与えていたのが印象的でした。

じっくりと時間をかけて観たい映画です。

 

 

 

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