本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『サバイバルファミリー』

久方ぶりに邦画のご紹介です。

家族の絆に焦点を当てたサバイバルコメディです。

「西日本編」以降の項目が核心ネタバレになります。

 

 

あらすじ

鈴木家は、サラリーマンの父、専業主婦の母、大学生の長男・賢司、高校生の長女・結衣の4人家族。

東京で何不自由なく暮らしているが、親の心子知らず、子の心親知らずな、ありふれた家族だった。

しかしある日突然、世界から電気が消えてしまう。

会社や学校は全く機能しなくなり、やがて日常生活を送るにも支障が出始める。

大阪なら電気が使えるという噂を聞いた一家は、思い切って自転車で東京を脱出することを決める。

 

 

鈴木家の生活

日本のどこにでもいそうな鈴木家は、経済的には不自由ないけれども、仲がいいかというとそうでもありません。

子どもたちはスマホばかり見ている一方、威張りちらすばかりのお父さんの薄っぺらさを見透かしています。

お互いに無関心で、天然で朗らかなお母さんなくしてはすぐに空中分解しそうです。

しかし、電気を失った以上は知恵を出し合って協力しなければ生きていけません。

 

電気なしの社会

当初は電気だけが止まったと思われていましたが、ガス、水道も止まり、車も動かず、電池で動く機械すら使えなくなります。

ガスや水道のインフラも、電気がなくなったことで動かせなくなったのでしょう。

浄水・下水処理・ガス精製を行うプラントも、電気なしでは立ち行かないためと思われます。

何日経っても原因不明の大停電が続き、会社も学校も休業状態。

生きるのに必要な水や食べ物の価値は高騰し、水1本で何千円もするようになります。

普段は都市部の人口を養うために大量の食物や水が運ばれているのに、それが一瞬で止まってしまったので影響が甚大です。

車も電車も使えないので自転車を買おうとしても、数万円が当たり前。

銀行でお金を引き出そうとしても長蛇の列。

電気を失ったことで、大都会を支えていたモノやカネの流れが消失し、必要なものを食べて暮らして行くことも困難になります。

 

東京脱出

大阪では電気が使えるという不確かな噂を耳にした鈴木家は、自転車で大阪へ向かうことを決めます。

本当に辿り着けるのか、大阪で電気が使えるというのはデマではないのか、と不安を訴える子どもたちに「俺についてくれば大丈夫」と言い切る父。

不安は消えないながらも、待つだけでは解決が見込めないのがわかっているので、出発を決めます。

しかし、長距離の旅路では今まで以上に過酷な生活を強いられます。

高速道路をたよりに何とか関西方面へ向かう鈴木家ですが、同じことを考えた人で高速道路は溢れていました。

トンネルを通るにも明かりがなければ進みようがなく、何千円ものマージンを取る地元のおばちゃんたちに案内してもらえなければ進めません。

お母さんや賢司の機転にも助けられつつ、寒い中必死で歩を進めます。

 

西日本編

ようやく大阪に辿り着いた鈴木家ですが、目にしたのはシャッター街と化した町。

大阪なら電気が使えるという噂は、やはり根拠のないデマでした。

既に忍耐力と体力が限界に達していた鈴木家で、一番年下の結衣は父に対して泣きながら怒り出します。

「大阪なら電気があるって言うから来たのに!」

「『俺についてくれば大丈夫』って言ったよね!」

10代の都会の女の子がサバイバル生活を強いられ、いつ状況が改善するかもわからなければ心が折れるのも当然のことですが、

此処に至ってもプライドが捨てられない父は「親に向かってなんだその言い方は」というのが精いっぱい。

賢司も黙ってはいられず、「だったら少しは親らしいことしろよ」とド正論で結衣を援護。

これまで、道すがら出会ったサバイバー仲間たちの前でも見栄を張り続けたり、偉そうにするだけで行動しないという点を、

子どもたちは冷静に見ていて、一人の人間としての評価を父親に対して下していました。

いつも家族を繋ぎとめていたお母さんが口論に割って入ります。

「そんなこと言ったってしょうがないじゃない!」

「あんたたちだって分かってるでしょう!」

「お父さんは、そういう人なんだから――!!」

 

家族の行方

関西も停電は変わらないので、鈴木家は母の実家である鹿児島を目指すことにします。

釣った魚をいつも送ってくれた鹿児島の家なら、都会の物流に頼らず食べ物を確保できるはず。

大阪で当てが外れて心を挫かれ、いよいよ体もボロボロになってきた鈴木家ですが、西日本に入ってからは様子が違っています。

ずっと一緒にいたはずの家族の本音を初めて聞いたお父さんが覚醒するためです。

心身の状態はますます辛くなっているのですが、思わぬ人から助けを得たこともあって元気を取り戻します。

その後も何度もピンチが訪れるものの、これまでのぎこちなさがなくなり、事態を乗り越えるごとに成長しているように見えました。

 

便利さが覆い隠すもの

劇中の、電気がなくなった世界の設定については、科学的には整合しないところもあります(まず、世界同時に全電源喪失したら、冷却機能を失った原子力発電所が事故を起こしてしまいます)。

しかし、電気がなくなった世界を舞台としたSFを描くのが主題ではありません。

電気がない世界で鈴木家は、これまで無関心だった家族と助け合わなければならなくなります。

突然やろうとしても上手くいきません。

便利だった頃は、それほど仲良くない人ともスマートフォンなどで何となくつながっていられます。

対照的に、非常時に助け合える人は、普段から強いつながりを持っている人たちです。

家族と言えば強いつながりの象徴ともいえますが、鈴木家の実態は互いに無関心。

こんな親であってほしい、こんな夫であってほしいという意思の疎通もしていません。

それでも何事もなく暮らしていけました。

そんなことをしなくても生きていける、便利な場所にいたからです。

都会であればあるほど、「一人で生きていける」ようにするためのモノやサービスは充実しています。

スーパーに並んだものを買い、ボタン一つでお湯を沸かし、パソコン一つで情報収集も購買活動も自分の意思で可能です。

だからこそ、誰とでもつかず離れずの付き合いができます。

しかし、電気なしに生き延びるためには、今まで一人でできていたことを他人と助け合って進めなければなりません。

一転してサバイバルをすることになった鈴木家は、ようやく生身の感情でぶつかり合うことになりました。

そうした状況での家族のヒューマンドラマを、丁寧だけどコミカルに描いた作品だと思います。

 

おわりに

東京での生活がだんだんと崩壊を迎えていく過程を見ると、都会の人口を支えているのは地方からのモノの流れであることを実感します。

(首都圏の穀倉地帯ともいえる千葉県や茨城県だったら、風景はかなり違っていたでしょう…)

インターネットを使えば一人で何でも調べたり買ったりできますが、その状態は到底「自力で生きている」と言えないのだとも痛感させられました。

よそよそしくも家族の体裁を保っていた鈴木家が、極限状況での感情のぶつかり合いを経て、どのように冒険を乗り越えていくか、ぜひ沢山の方に目撃してほしいです。

正直なところ、予告編ではドラマ的面白さがそれほど伝わってきませんでしたが(ふーん面白そうな設定だねという位)、観てみると色々な発見や笑いがありました。

お父さんに小日向さん、お母さんに深津絵里さんというのが素敵なキャスティングです。

特に小日向さんを父役に据えたのは神がかり的采配と言うしかありません。笑

賢司と結衣も、今回初めて目にした俳優さんでしたが、オーディションで選ばれただけあって違和感がなく、演じている役にぴったりでした。

良質な邦画コメディをお探しの方に、ぜひお勧めしたい作品です。

 

  

 

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