本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

人を好きになることを教えてくれるファンタジー小説 日独英代表選

人を好きになることや恋が描かれているジュヴナイル向けファンタジー小説をご紹介します。

ドイツ、イギリス、日本発の渾身の一作を取り上げます。

 

 

クラバート

孤児のクラバートは、ある日不思議な夢に導かれて訪れた水車小屋で、親方に弟子入りします。

そこでは同じ年頃の徒弟11人が暮らしており、やがてカラスに姿を変えられる魔術を身に着けることになりました。

クラバートはある少女を好きになりますが、水車小屋の徒弟たちはなぜか1人ずつこの世を去っていきます。

ドイツを代表する児童文学作家オトフリート・プロイスラーの作品です。

呪われた運命に立ち向かうクラバートと、少女の絆が印象に残りました。

少女がクラバートに「あなたは恐れていた。だからわかったの」と言う場面があるのですが、誰かを好きになること=失いたくない存在ができること=恐れを知ることなんだ、と初めて教えてくれた作品でした。

終始暗さがあるファンタジーで、キャッチーなところは全くないのにぐいぐい引き込まれて読みふけった思い出があります。 

映画も製作されており、原語ドイツ語のコピーはAlles auf dieser Welt hat seinen Preis.(この世のすべてには代償がある)で、実に内容にぴったりでした。

クラバート

クラバート

 
クラバート 闇の魔法学校 [DVD]

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魔法使いハウルと火の悪魔

荒れ地の魔女の呪いで老婆に姿を変えられた少女ソフィー。

居場所がなくなった彼女は魔法使いハウルの城に、押し掛け掃除婦として転がり込むことにします。

元の姿の時にはとても異性と会話なんてできなかったソフィーが、老婆の姿になって羞恥心を捨てたあと、美男ハウルと丁々発止のやり取りをこなし、喧嘩友達から恋人同士になった展開が、当時ローティーンだった自分には新鮮でした。

人を好きになることには、相手にときめくだけではなく、お洒落した姿を見てもらうだけではなく、恥ずかしがらずに共有できる内面を増やしていく過程もあるんだと教えられました。

ジブリで映画化された『ハウルの動く城』の原作ですが、正直原作のほうが何倍も魅力がある!と断言したいです。 

著者のダイアナ・ウィン・ジョーンズはイギリスを代表する児童小説家で、他にも魅力あふれる作品を多数発表しています。

魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉

魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉

 

 

アブダラと空飛ぶ絨毯 

 『魔法使いハウルと火の悪魔』の続編です。

 偶然空飛ぶ絨毯を手に入れた若者アブダラは、恋をした姫君"夜咲花"と駆け落ちしようとしますが、魔神に攫われてしまいます。

ハウルとの子モーガンを攫われ、取り返そうと奮闘するソフィーの冒険も絡んで、一大活劇が繰り広げられます。

アブダラは素朴で一途な若者ですが、優しかった"夜咲花"が、女友達に要らんことを吹き込まれて急につれなくなったり、現実世界のあるあるネタが巧みに織り込まれていました。

前作に続き登場するソフィーは、息子モーガン奪還のために何でもする強くて素敵な母親になっています。

大好きなハウルと家族になったソフィーが、新たな家族のために全力で闘う姿が印象的でした。

アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉

アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉

 

 

空色勾玉

最後に日本代表をご紹介します。

輝(かぐ)の勢力が治める古代の日本(葦原の中つ国)が舞台。

羽柴の里で暮らす少女沙耶は、祭りの夜に現れた楽団一行から、沙由良姫の生まれ変わりだと言われ、勾玉を託される。

その後、月代大王に見初められてまほろばの宮に召された沙耶は、不思議な美少年・稚羽矢と出会い、闇(くら)の一族としての戦いに身を投じていくことになる。

月代大王が沙耶の中に彼女自身ではなく沙由良姫を見ていたこと、外界を知らない稚羽矢と沙耶の不思議な絆など、冒険ファンタジーの中にも多彩な人間ドラマが描かれています。

続編の『白鳥異伝』でも、特別な力を持った少年・小俱那と、幼馴染の遠子とのつながりを中心に物語が展開します。

冒険の中で生まれる絆の描写が印象的な作品です。

空色勾玉

空色勾玉

 
白鳥異伝

白鳥異伝

 

 

おわりに

児童小説と言うと冒険や友情の要素が強いので、恋愛について書いてある作品は印象的だった覚えがあります。 

だからこそ、描写の巧みな作品はいつまでも記憶に残っていました。

大人が読んでも楽しめる作品ばかりですので、ぜひ機会があればお読みいただければと思います。