本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『ビフォア・ミッドナイト』

『ビフォア』3部作の第3部です。

前2作のレビューはこちら。

ネタバレします。

 

あらすじ

前作の運命的な再会から9年、セリーヌジェシーは双子の娘とギリシャで夏休みを過ごしていた。

ジェシーの前妻のもとで暮らす息子ハンクを送った道すがら、年頃の息子のそばにいてやれないことに悩むジェシーはアメリカへの転居を考え始める。

パリで仕事に就くセリーヌは反対し、これをきっかけとして普段ジェシーに対して抱いている不満が噴出してしまう。

 

恋人から家族へ

『ビフォア・サンライズ』では初々しい学生、

ビフォア・サンセット』では華のアラサー、

ビフォア・ミッドナイト』では責任も家族もあるアラフォーとして、

セリーヌジェシーが描かれています。

縮まっていく距離感にときめいたり、

ドラマチックな再会に運命を感じたりと言った展開を通り越し、

同じ時間と人生を過ごしています。

前作『ビフォア・サンセット』で結婚していたジェシーは、離婚してセリーヌと夫婦になり、双子の娘をもうけています。

冒頭に出てくるハンクは前妻との息子で、思春期を迎えようとしている年齢です。

 

ドラマと現実の比重

第1部、第2部は時間を惜しみながら互いへの思いを募らせる展開でしたが、

第3部はだいぶ趣向が変わり、現実を共有する2人の物語になっています。

セリーヌジェシーが、仕事で上手くいかないこと、ハンクや双子の娘の育児など、日常的なトピックに頭を悩ましていることが描写されています。

互いに人生を預け合うパートナーだからこそ、お互いを好きな気持ちだけでなく、

人生をどう組み立てていくか、どんな生活を送るかという現実的な悩みも共有せざるを得ません。

また、前の2作を観ながら、「素敵な2人だけど、セリーヌは上昇志向が強いし一緒に生きるには自分も頑張って実績を出していないと辛くなりそう」と予想していたのですが、それが的中しました。笑

能力も意欲も高くて、目指すところと自分の距離を常に計っているセリーヌなので、パートナーとなる人にも求める水準が高いです。

加えて、ハンクと親密な会話をしたことを得意げに話して、ジェシーを不安にさせてしまう(知らない間にハンクは父親である自分以外との絆を深めてしまうのではないかと思わせる)ところなんかも、彼女のキャラクターを考えるといかにもありそう。

自立心が強い彼女の場合、ジェシーを立ててあげねば、という考えはあまり浮かばなさそうです(日本とは違うので、ある意味当然でしょうか)。

理想と違う現実に対して、セリーヌの苛立ちが募ってしまったときは、ジェシーが持ち前の優しさで張り詰めた空気を和らげる、という役割分担が描かれているのもリアリティがあって唸らされます。

 

 

夫婦あるある

ハンクの成長を見守りたいジェシーの気持ちをめぐって、 セリーヌジェシーは一通り喧嘩します。

作家という、働きぶりが評価しにくいジェシーの職業について、本当に必死で働いてくれているのかセリーヌは疑問に思ったり、

双子の娘に手を焼いていた時にジェシーが不在で心細かったことを嘆いたり、

本題と関係ないトピックや、過去の出来事にまで叱責が及ぶあたり、古今東西男女の喧嘩って定石があるのかしらと思ってしまいました。

怒り始めたら、もうその怒りが当初の話題に留まらなくなってしまう現象、鉄板のあるあるネタです。

そして、妊娠中や乳児期の子育てで味わった孤独感を、女性は忘れられないということにも言及されています。

唯一無二の恋を実らせた2人が、今度はリアルな夫婦の日常に向き合っており、恋人から家族になったことのディティールが詳しく描写されていました。

 

続いていく人生

山も谷もあるけど、ずっと喧嘩したままというわけにはいきません。

子どもの前で盛大に喧嘩するわけには行かないし、一緒に生活するにはどうしても連携しなければなりません。

好きな気持ちだけでは2人の人間関係を続けていくことはできませんが、

やっぱりこの人と生きていこうと軌道修正を図れるのも、

好きになった気持ちがあるからこそなのかもしれないと感じました。

20代や30代の頃のようなときめきはなくても、2人が現実世界を一緒に生きていることが感じ取れて、この第3部も好きになりました。

第1部や第2部と比べてロマンが足りない!という声も聞いたことがありますが、

「1対1の人間関係をメンテしながら生きる大変さ」を無視したらそれはそれで嘘っぽくなってしまうでしょう。

リアリティに忠実な本作が私は好きです。

 

おわりに

ギリシャで夏のバカンスというと何て優雅なんだろうと思うけれど、

休暇の中であっても日常のトピックが頭を離れない、現実的な親であり夫婦である2人が描かれていました。

前2作と違うテイストでも、この2人をまた観たいという方には迷わずおすすめしたい作品です。

 

  

 

 

 

 

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