本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『シェルブールの雨傘』

フランス映画屈指の名作であり、ミュージカル映画の古典とも言える『シェルブールの雨傘』のレビューです。

トーリーが似てる『ラ・ラ・ランド』も悪くないけど私は断然こっちが好きです。

今回はあんまりネタバレしてません。

 

 

あらすじ

アルジェリア内戦の只中にあるフランス。

港町シェルブールにある傘店の一人娘ジュヌヴィエーヴと、整備工の青年ギイ。

真剣に愛し合い、結婚を約束している2人だったが、ジュヌヴィエーヴの母は結婚するには早すぎると言って良い顔をしない。

ある日ギイはアルジェリア内戦に徴兵されてしまい、ジュヌヴィエーヴといつまた会えるとも知れない別れを迎える。

ギイが町を去ってしばらくした頃、ジュヌヴィエーヴが妊娠していることが明らかになる。

 

 

美しいミュージカル

この映画はすべての台詞が歌になっている完全なミュージカル映画です。

何度も繰り返されるメインテーマはこちらのメロディ。

音声は吹替えなのですが、初めて観たときは気づかないくらいぴったりと俳優陣の動きに合っていました。

歌声のどこを切り取っても綺麗だなあと思える完成度の高さです。

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特にジュヌヴィエーヴの実家の雨傘店で際立っていますが、随所に色鮮やかなデザインや衣装が散りばめられています。

その一方で、ヨーロッパらしい曇りがち・雨がちな陽気も、単に暗い風景というのではなく、素朴な生活の背景として取り込まれていました。

美術的・デザイン的な美しさだけでなく、主演のカトリーヌ・ドヌーヴの美しさも輝かんばかりです。

上品でオーラのある美しさなのですが、その一方で若く可憐な雰囲気も漂わせていて、彼女が唯一無二の演技人だと実感させられます。

フランス映画史を代表する大女優の凄さを思い知った作品でした。

 

人生を描く映画

ジュヌヴィエーヴとギイの関係を軸に展開する物語ですが、本作を恋愛映画と呼ぶのは少しそぐわないでしょう。

人生を描いた映画という方がぴったり来ます。

希望に満ちた青春時代から始まり、抗いようのない社会の趨勢や、現実と直面し、それでも人生の選択をして2人が前に進んでいく姿が描かれています。

誰もが青春時代に思い描いた通りの進路を選び取り、人生を自分の力で切り拓いていけるわけではありません。

しかし、だからと言って人生がすべて暗転してしまうかと言えばそうでもない。

運命の人と思った相手と結婚しなくても、幸せな家庭を持つことはできるし、

大金持ちにならなくても、自身で生計を立てて充実感を味わうことはできます。

唯一の正解はないから、自分自身で過去を振り返って評価するしかありません。

もしかしたら別の選択があったかもしれないと思いながらも、みんな大人なのでそれぞれのやり方で前を向いて生きていきます。

でも時々、かつて住んでいた場所を訪ねたり、昔を振り返ると、切ない思いにとらわれる時もあります。

また前を向いて進んでいくのは変わらないとしてもです。

なぜ雨傘がタイトルになるほど重要な名詞なのか、昔は見当もつきませんでしたが、辛いこともある人生の中で支えになってくれる思い出や、傍にいてくれる人を暗喩していたのかもしれません。 

  

おわりに

いつものようにネタバレ全開で語るのがもったいなくて、要点だけのレビューになりました。

この映画はあまり事前知識を持たず、シンプルだけど深みのある物語を楽しんでいただければと思います。

もちろん眼福としてのカトリーヌ・ドヌーヴや美しい音楽も。

短いですが、今日は此処まで。

 

  

 

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