映画『サイダーハウス・ルール』
胸がいっぱいになる、若者の成長物語をご紹介します。
ある孤児の成長と半生を描いた映画『サイダーハウス・ルール』です。
同名の原作小説がありますが、未読のため映画に絞ってレビューを書きます。
タイトルの意味は、サイダー用のりんごの収穫小屋に掲げてあった規則のことです。
主人公の育ての親を演じたマイケル・ケインがアカデミー賞主演男優賞を受賞した作品でもあります。
核心まで惜しみなくネタバレしながらお送りします。
感動しすぎてレビューが長大になったので、2つの記事に分けて書きます。
あらすじ
メイン州ニューイングランドの孤児院で生まれたホーマーは、何度か養子にもらわれかけるも決まって孤児院に返されてきた。
彼は成長して小さな子どもたちを世話するようになった他、禁じられていた堕胎を施術していた院長、ウィルバー・ラーチ医師から医術の薫陶も受けていた。
ある日ホーマーは、堕胎のために訪れた女性キャンディと、その恋人で軍人のウォリーに出会う。
外の世界を知りたかった彼は、2人に連れ出してくれるよう頼み、孤児院から巣立つことになる。
惜しまれながら旅立ったホーマーは、ウォリーの実家のりんご農園や、キャンディの父が営むロブスター漁を手伝いながら、これまで知らなかった世界を知っていく。
タイトルの意味
「ルールが全てではない、信念に従って人を助ける」というテーマがある映画だと感じました。
タイトルであるサイダーハウス・ルールは、ホーマーたちが農園で寝起きするサイダーハウスに掲げてあるルール。
ベッドでは禁煙、屋根に上るべからず、など、労働者たちが既に破りまくっている規則ばかりです。笑
でも、屋根に上って彼らが心を休められたり、それによって気持ちよく仕事ができるのなら、このルールにどんな意味があるのでしょうか。
ルールと信念、あるいは浮世で人を助けることについて、深く掘り下げられた作品です。
劇中でどのように描写されているか、後半で詳述します。
主人公ホーマーについて
孤児院という小さな世界のなかで生まれ育ってきたホーマーは、穏やかで、小さな子どもたちやラーチ医師、看護師たちからの信頼の厚い青年です。
子どもたちの面倒を見たり、医師としてラーチを(無資格だけど)手伝ったり、
働き手としても優秀。
それもこれも、ラーチや看護師たちの手によって孤児院がつつがなく、子どもたちへの愛をもって運営されてきたからでしょう。
子どもたちは寝る前に本の読み聞かせをしてもらい、こんな言葉で眠りにつきます。
おやすみ
ホーマーも特別の思い入れを持って育て上げられました。
しかし、広い世界に出て成長したいと思い、ウォリーとキャンディについていくことにします。
ラーチはホーマーの思いを知りつつも反対します。
自分の面倒で精一杯の貧しい人ばかりの世の中で
誰かを助けられるとでも思ってるのか?
孤児院は、ラーチ院長とベテラン看護師たちがいたからこそ成り立っている、落ち着いた世界です。
外の世界に出れば、混沌のなか生きていくことに必死な人ばかりで、正義や愛なんてどこにもないかもしれない。
描かれている時代は第二次大戦中ですので、一層その側面が強かったでしょう。
それでもホーマーは旅立つことを決意し、惜しまれながら孤児院を去ります。
ウォリーとキャンディが優しい人物だったこともあって、仕事もすぐに見つかり、まずまずのスタートを切りました。
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堕胎というテーマ
愛情深く育てられた彼がラーチ医師に唯一異議を唱えるのが、堕胎手術です。
助けを求めて来院する女性たちに、ラーチ医師は堕胎手術をしていました。
しかしホーマーは、「育てられるお金がないから孤児院で育ててほしい」と
出産しにくる女性の分娩は手伝っても、堕胎は手伝わないようになります。
ラーチは禁じられている堕胎を行う理由をホーマーに諭します。
「最終的に苦しむのは、相対的に弱い立場にある女性だ」
「我々がやらなければ、悪辣な奴に彼女たちがさらに蹂躙される」
望まれない妊娠による出産をしても、子どもを抱えて困窮するのは女性です。
また、堕胎させるために相手の男(素人)が闇雲に手を出した結果、
重篤な状態になってしまった女性も登場します(この場面はとても辛かった)。
少なくとも後者については、適正な施術を提供できる医師がいれば早くに助けられたでしょう。
しかしホーマーは納得できない部分があったようで、ラーチからドクターズバッグを贈られても、長いこと使わずにしまったままでいました。
レビューが長いので、次の記事に続きます。