本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

 少し久しぶりにロードムービーのレビューを書きました。

癒されるラブストーリーをお探しの方にご紹介したい映画です。

 失恋のあとにぼんやり観られる映画としてもおすすめです。ネタバレしてます。

 

  

あらすじ

 恋人に別れを告げられて落ち込んでいたエリザベスは、偶然入ったカフェの店主ジェレミーに慰められる。

ブルーベリー・パイはいつも売れ残るけど、ブルーベリー・パイが悪いんじゃない、選ぶ人がいなかっただけ。

ジェレミーの優しさに触れて、しばらくエリザベスはカフェに通う。

それでも失恋から立ち直りきれないエリザベスはニューヨークを離れ旅に出るが、旅先で様々な人物と恋愛を目撃する。

別れた妻を忘れられない警察官アーニー、彼を忘れて新しい人生を始めたい元妻スー・リン、女ギャンブラーのレスリー。

遠く離れた場所で働き、様々な人に出会ううちに、時間と新たな思い出が彼女を癒やしていく。

  

優しいラブストーリー

エリザベスの失恋から話が始まる時点で、悲しくて切ない話かと思いがちですが、結論から言うとそんなことはありません。

切なさはありますが、心が痛むような悲しい話にはならず、失恋や別れがあっても人の心は再生しながら続く、と緩やかに語るような雰囲気になっています。

「それでも人生は続く」というロードムービーらしい流れを持ちつつも、「だから前向いて歩け」といった押しつけがましさは全くない、優しい物語です。

切ないことや寂しいことがあった後に、ゆっくりと背中を押してくれるような作品でもあります。

実際、エリザベスが旅に出て戻ってくるまで結構な時間が経っており、基本的に流れはゆっくりです。

その間、エリザベスの行方をジェレミーが探す描写もあります。

 

様々な人生模様

アーニーとスー・リンの2人を描いている間は、エリザベスの失恋の影響を反映するかのように切ない物語が続きます。

アーニーはスー・リンとかつて育んだ愛を忘れられず、ずっと彼女に執着します。

しかしスー・リンは、彼女を息苦しいまでに束縛するアーニーに耐えられず別れを告げた女性なので、執着し続ける彼を見ればますます復縁できるはずもありません。

失われた時間にこだわり続けるアーニーを見て、エリザベスは自分の中に残る失恋の痛手を見つめ直さざるをえなかったでしょう。

スー・リンは結局、アーニーの長年の執着により、別れた時だけでなく、もう一度心に傷を負うことになりました。

綺麗だけど憂いや葛藤のある女性スー・リンをレイチェル・ワイズが演じています。

主演のノラ・ジョーンズも雰囲気にぴったりでしたが、レイチェル・ワイズも素敵でした。

 

次に出会う女性レスリーは、先に会った2人と打って変わって、あっけらかんとしたファンキーな装いの女性です。

人間としての複雑な背景の気配を漂わせつつも、それをあまり面に出さない不思議な人物。

なし崩し的にレスリーの旅に巻き込まれるうちに、レスリーは父親との確執を抱えた人物であるとわかります。

父が危篤との連絡が入りますが、レスリーは信じず、今までに何度も同じ嘘をつかれたと言いました。

しかし、今回だけは本当で、父は本当に急逝していたのでした。

スー・リンとレスリー、人との別れに直面する2人の人物を目撃して、徐々にエリザベスも新たな一歩を踏み出す気持ちができたのかもしれません。

彼女はレスリーが勝ったギャンブルの報酬で車を買い、ニューヨークへ戻りました。

 

おわりに

恋する惑星』を観てファンになったウォン・カーウェイ監督の映画ということで観始めました。

緻密なストーリー構成があるわけではありませんが、『恋する惑星』にも通じるファンタジックな恋愛や、たゆたうような流れを楽しめる作品です。

ぼんやりと美しい映像や優しいラブストーリーを楽しみたい時におすすめです。

 

 

 

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