本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『真夏の方程式』

暑くなってきたのでこの映画を思い出しました。

探偵ガリレオシリーズの劇場版第2弾で、原作は同名の長編小説です。

以前、劇場版第1弾『容疑者Xの献身』のレビューを書いたので、第2弾もご紹介したいと思います。

遠慮会釈なくネタバレします。

 

 

あらすじ

海洋探査に関する説明会に、識者として出席を依頼された湯川は、海の美しい片田舎・玻璃ヶ浦を訪れる。

玻璃ヶ浦で探査反対を唱える反対派住民の中には、過激な環境活動家のような若い女性・川畑成実もいた。

ある日、玻璃ヶ浦の海岸で、湯川の滞在する民宿に同じく宿泊していた中年の元刑事が死亡しているのが見つかる。

死の背景を探るため警察の捜査が始まり、湯川も協力することになるが、徐々に、事件の発端は29年前のある出来事にさかのぼることが明らかになっていく。

  

親子の愛

玻璃ヶ浦で行われようとしている探査は、最新技術を駆使してほとんど環境影響を及ぼすことなく海中の調査ができるものです。

しかし、成実は海に人間の手が加わることを頭ごなしに否定し、中立な識者である湯川の発言も全く聞き入れません(その理由も後に明らかになります)。

成実の父母は、湯川や死んだ元刑事の宿泊していた民宿の経営者であり、元刑事の死因は民宿の室内で一酸化炭素中毒に見舞われたこと、その原因は自分たちの過失であるとして自首します。

しかし、湯川や岸谷刑事が捜査を進めるにつれ、一酸化炭素中毒は過失ではない可能性が高まります。

実は、元刑事は成実が過去に犯してしまった犯罪を探るため玻璃ヶ浦に現れていました。

成実の両親は過去にも、その罪を隠すために打てる限りの手を打ち、秘密を守り続けていたのです。

それなのに、定年後の元刑事が現れてしまった。

成実は両親(とその協力者)が自分のためにしてくれたことを一部既に知っていたものの、今回新たに、自分のために如何に大きな犠牲が払われたかを知ることになります。

 

夫婦の愛

 成実が過去に犯罪を犯してしまったのは、彼女の母・節子が抱いていたある秘密が原因です。

成実を庇うために、そして自らの秘密を守るために、節子は協力者の助力を得て罪の隠ぺいを図ります。

結果としてそれは成功しますが、秘密の内容は成実に知られてしまいます。

そして、必死に隠したにも関わらず秘密は夫・重治(成実の父)にも知られてしまっていたのでした。

 重治にとっては節子の裏切りであるその事実を知りながらも、彼は妻と成実とともに暮らし、一家の大黒柱として二人を支えていました。

そして今回また、元刑事の追求から家族を守るために行動します。

前作『容疑者Xの献身』でもそうでしたが、誰かのために罪を犯す、という行為の重さが淡々と伝わってくる映像作品です。

成実を守るために父も母も罪を犯していますが、結果として成実は重い秘密と罪悪感を持ったまま生き続けることになります。

湯川は成実を責めたり断罪したりすることはせず、「君はみんなから愛されている」と彼女に言い聞かせます。

それは真実なのですが、成実を愛する誰かが彼女のために罪を犯せば犯すほど、成実自身も重い荷物を負うことになり、やるせない気持ちにさせられました。

 

おわりに

なるべく謎の核心に触れないようにしつつネタバレを含んだレビューを書いてみましたが、難しいですね…消化不良になってしまった気もします。

此処に一切書いていないけれど重要な役割を果たす人物も登場しますので、ネタバレしていない部分を楽しみに鑑賞できるよう心掛けたつもりです。

『容疑者Xの献身』では、湯川はすべての謎を明らかにして判断を刑法に委ねますが、本作では当事者たちが秘密にしようとしたことをすべて暴いてはいません。

前作では自らの友人に対する真摯な姿勢としてその行動を選んだのでしょうが、今回は罪のない人の人生も変えてしまうことから、一部を謎のままにしておいたのかもしれません。

夏を感じる暑い日に観たいミステリとしてご推薦します。

 

kleinenina.hatenablog.com

 

  

 

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