本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『エヴァの告白』

 しみじみと愛について考えたいときにお勧めの映画をご紹介します。

トーリーはシンプルですが、いつまでも印象に残る映画です。

 

 

あらすじ

ポーランド人のエヴァは、妹とともに移民するため長い船旅の末にニューヨーク・エリス島へ到着した。

しかし、入国審査で妹だけが病気のため隔離されてしまう。

親戚の迎えもなかったために審査を通過できなかったエヴァは、表向きは興行師をしているブルーノの手引きで不法滞在することになる。

妹の療養費を払うため、ブルーノの仲介で娼婦に身を落とすエヴァ

信仰と妹への想いだけをよすがに懸命に生きるエヴァを、いつしかブルーノは愛するようになる。

しかし、エヴァの美しさがブルーノのいとこオーランドの目に止まったことから歯車が狂い始める。

 

エヴァの強さ

 エヴァは貧しいけれど美しく、素朴な強さを持った女性です。

妹がエリス島に留め置かれている間はニューヨークを離れようとせず、アメリカで姉妹揃って新しい生活を始めることを決して諦めません。

その彼女を嘲笑うかのように次々に困難が襲い掛かります。

ニューヨークに着く前にも、船で素行不良の烙印を押されています。

また、ブルーノに売春をさせられ、頼りにしていた叔母夫婦にもなかなか会うことができません。

その唯一の職場ですら、いざこざが原因で居られなくなったりします。

皮肉なことにいつも、彼女の美しさに目を付けた男たちによって困難がもたらされました。

外見は変えようがありませんので、彼女の行く先にはいつも波乱が付きまといますが、そんな中で彼女の支えになったのは信仰でした。

ニューヨークでエヴァポーランド正教会の教会を訪れて、祈りを捧げ告解をする場面があります。

静かなシーンですが、エヴァの内面を描写する重要な場面です。

とは言え、宗教は大事だとか、キリスト教は偉大だとかそう言ったメッセージは一切出てきませんので、宗教に馴染みのない我々にアレルギーを起こさせるような内容ではありません。

ただ、貧しい人や、苦しい状況にある人たちの心の中に居続ける信仰と言うのは、特別な存在なんだなと思わずにはいられない場面でもありました。

 

ブルーノの弱さ

 ブルーノはエヴァに惹かれて彼女を手元に留め置くように手を尽くす一方で、彼女が買春される状態を変えようとしません。

 あいにく、このあたりの彼の心情は全く理解できませんでした…。

理解できる人っているんだろうか。

しかし、いとこのオーランドがエヴァに興味を示したり、彼女と接近しようとすると過剰なまでに反応します。

素朴なエヴァや、気ままなオーランドとは対極的に、彼は見栄や欲にがんじがらめになっており、全てを自分で自分の思い通りに行かなくしてしまいます。

しかもオーランドにそれを指摘されて激昂したりと、本当に良いところがないのですが、ストーリーの最初から最後までエヴァの運命を左右します。

 

おわりに

舞台は1920年代のニューヨークですので、アメリカもまだ豊かになる途上です。

そのアメリカに、第一次世界大戦で疲弊したヨーロッパのポーランドからエヴァはやってきました。

おそらく彼女がいたシュレジエン地方は、戦争の影響もあってニューヨークよりずっと貧しかったでしょう。

女たちが新入りのエヴァにくれたバナナを、皮をむかずにそのまま食べようとした場面などは印象的でした。

序盤でブルーノが「みんな必死なんだ」と言う場面がありますが、彼の言葉通り、登場人物たちは誰もが決して裕福でも安泰でもありません。

大都会の片隅で肩を寄せ合って懸命に生きています。

その様子が描かれているからこそ、決して潔白でも公明正大でもない登場人物たちの様子を断罪する気が全く湧き起こらない、不思議な映画でした。

ブルーノに対しては辛口な書き方にならざるを得ませんが、どちらかと言うと同情の気持ちが強いように思います。

苦境の中でも必死で生きようとする人々の姿に、考えさせられ勇気づけられる映画でした。

 

話の内容には関係ありませんが、主演のマリオン・コティヤールはフランス人なんですね。

チラッと聞いたことのあるポーランド語と照らし合わせて違和感がなかったので、ポーランド人か、東ヨーロッパの出身者かと思いました。

調べたらこの映画のためにポーランド語を学んだそうです。

素直に凄いなあと感心したエピソードでした。

 

   

 

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