映画『風と共に去りぬ』2
大作映画『風と共に去りぬ』のレビューの続きです。
前記事でヒロインのスカーレットについて書いたので、本記事では彼女にとって重要であり続けた2人の人物と、故郷への愛、小説との違いを書きます。
レット・バトラー
レット・バトラーは、故郷の家を出奔し、ふらふらと暮らす怪しげな山師として登場し、後に南北戦争を利用して巨万の富を築きます。
しかし、そんな彼は人生の分岐点にいつも現れ、スカーレットを助けてくれる存在になります。
スカーレットと対照的にレット・バトラーは、他者に対する親愛や敬意の示し方を心得ています。
その証拠に彼は、同性の仕事仲間だけでなく娼婦ベルや、愛娘ボニー、スカーレットの義妹メラニーとも信頼関係を築いていました。
何より彼は、自分の信念や感情に嘘をつかない姿勢を持っています。
南部への忠誠なんてないし、金儲けができればどうでもいいと言いながらも、ひとたび故郷への思いを胸にすると即行動を起こします。
そして、タフな状況を自分の人脈やコミュニケーション能力で乗り越えていくクレバーな人物でもあります。
しかし、正義感や情熱を感じさせる言動をあまりせず、偽悪的な振る舞いをしてみたりします。
自分で時代を生き抜く力を持っていると言う点、欲しいものに対して遠慮も躊躇いもしない点では、彼はスカーレットと共通しています。
それゆえに彼女を愛するようになるのですが、彼女を良く知っているからこそ、愛していることを全面に出して遜る態度はとりません。
(もしそうしたら、愛し合う関係ではなく、スカーレットを上に置く上下関係になってしまうことを察しているため)
彼女の苛烈さをからかったり、他の女性との違いを冗談めかして指摘していました。
結末を知ってからそうした場面を思い出すと、とてつもなく切ない気持ちになります。
義妹メラニー
物語の中でもう一人、スカーレットとの対称軸になるのは義妹のメラニーです。
彼女は優しさに溢れた穏やかな女性ですが、愛するものを守るためには毅然とした対応ができます。
スカーレットが目的達成のために冷酷にもなれる一方、メラニーはそうしたことが決してできない人物です。
一方、誰に対しても友好的に接して敵を作らないところは、スカーレットにはない強みだと言えます。
彼女はスカーレットが少女時代からずっと好きだったアシュリと結婚し、スカーレットの嫉妬の対象になります。
それなのに、美しく人気者の姉として、後には戦場での命の恩人だといってスカーレットを慕い続けます。
これもスカーレットには決してできないことです。
戦争が終わり、生活が落ち着いてくるにつれ、スカーレットは以前ほどメラニーへの反感を抱かなくなったように見えます。
それでもやっぱり彼女を誉めたりする言葉が少ないのは、恋敵と言う関係性だけでなく、自分と正反対の彼女を認めること=自分を否定することと思ってしまったからかもしれません。
故郷への思い
南北戦争の戦場となったアトランタで、スカーレットは故郷タラへ遠大な道を旅して帰ることを決めます。
荒廃し、北部軍がうろつくタラまでの道を無事に通過できる保証はありません。
若く健康なスカーレットだけでなく、産後で死にそうになっているメラニーや、幼い息子ウェイド・ハンプトンも連れて行かねばなりません。
加えて、タラが無事かすらも分からない時のことです。
それでも、彼女は何を置いても故郷に帰ると言って聞きませんでした。
故郷タラに戻ることは、彼女にとって本来の自分に立ち返り、新しい時節へ踏み込むための重要な行動なのです。
冒頭、若い少女であるスカーレットに、父ジェラルドが語って聞かせる場面があります。
「この世で頼りになる唯一の者が土地だ」
「土地は母親と同じだ」
「お前もいつか土地への愛に目覚める」
物語の舞台はタラを離れて何度か変わることになりますが、オハラ家の娘スカーレットの心の中で、タラは重要な場所であり続けます。
小説との違い
映画も素晴らしい大作ですが、映画が気に入った方には是非とも小説も読んでいただきたいです。
スカーレットを取り巻く人間関係についてよりたくさんのエピソードがあるので、心理描写や人間模様についてより詳しく楽しめると思います。
また、南北戦争後も続いた南北の対立感情の所以や、黒人奴隷と南部人との絆についてとても詳細な描写がされています。
奴隷解放についてもっと勉強したうえで、再度見返してみたいと思っています。
長くなってしまいましたが、スケールの大きいドラマチックな作品に触れたい方に、是非映画も小説もお勧めしたいです。