本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『アンナ・カレーニナ』

ロシア屈指の文豪、トルストイの代表作の映像化です。

 これまでにも何度も映画化されていますが、今回はキーラ・ナイトレイをヒロインとした2012年の映画についてご紹介します。

今回初めて『アンナ・カレーニナ』というものに触れましたが(原作は未読)、何度も映画化される理由がよく分かりました。

ネタバレをかましつつレビューを書きます。

 

 

あらすじ

ロシアの有能な政府高官の妻アンナ・カレーニナは、ある日兄夫婦の喧嘩の仲裁のためモスクワを訪れる。

彼女の美しさに目を奪われた若き将校ヴロンスキーと、アンナは互いに惹かれあう。

忘れるようにと諭すアンナの言葉を無視し、ヴロンスキーはサンクトペテルブルクまで彼女を追ってやってくる。

やがて人目を忍んで思いを通わせるようになる2人だったが、社交界にその仲が知れ渡るまで時間はかからなかった。

 

 アンナ、ヴロンスキー、カレーニン

アンナはサンクトペテルブルク社交界の華で、息子セリョージャを愛する良き母でもあります。

有能な政府高官である歳の離れた夫との間には、激しい恋愛感情があるわけではありませんが、何不自由のない生活を送っています。

しかし、モスクワでヴロンスキーに会った途端、抗いがたい魅力を感じてしまい、ヴロンスキーも同じ感情を抱いたことから歯車が狂い始めます。

昔は結婚が早かったから、強い恋愛感情を知らないまま周りの計らいで結婚をして、家族ができた後に本当の恋愛を知ってしまうということがあったんでしょうね。

アンナも18歳で結婚しています。

その点では、アンナを非難する気になれないというのが正直なところです。

アンナとヴロンスキーの下記の台詞が印象的でした。

アンナ「私に平安を返して」

ヴロンスキー「もう平安などない 悲痛か至福のどちらかしか」

彼女はヴロンスキーを避けようと努力しているし、忘れるべきだと自分やヴロンスキーに言い聞かせている。

それでも、アンナを追い続けるヴロンスキーに彼女も最後には応じるので、全てヴロンスキーが悪いと言うつもりもありません。

2人で選んだことです。

  

アンナに対するカレーニンの態度は、不倫に勘付き始めた当初はよそよそしく、次に寛大に、最後は愛想を尽かします。

初動でよそよそしさをかなぐり捨てて、アンナを失いたくないと率直に訴えていたらどうなっただろうと考えてしまいました。

感情的に激昂していたら、おそらくアンナは迷わずすぐにヴロンスキーの元へ行っていたと思います。

激昂する相手を「自分のことを分かってくれる人」「一緒にいたい人」とは思えないですし、ハードルがあればあるほどこの種の色恋は燃えてしまうと思うので。

そうではなく、普段上手く表せていないけどアンナを深く愛していることを早くに伝えられていたら、アンナは彼のもとに戻っていたでしょう。

 

対極リョーヴィン

 アンナたちの対極として描かれるのがリョーヴィンです。

一途に一人の女性を愛し続け、最後にはともに家庭を持ちます。

火遊びで不倫する親友を「満腹なのにパンを盗むようなもの」と断罪し、他人の物を欲するなんてことにならないよう、一生を共にする相手を慎重に選ぶべきなのだと断言する、純粋な道徳観の持ち主でもあります。

誠実な心で生きることの幸せを体現しているような人物です。

おそらくトルストイが理想の生き方として描いたものと思います。

しかし、個人的には、いわゆる綺麗ごとを言える人物と言うのは大なり小なり恵まれていて、道徳観の転換を迫られることのない幸せな人生を送って来たのではないか、とも考えてしまいます。

でも多分そういうことじゃないんでしょうね。笑

キティに振られても一途に彼女を思い続け、逆境でも誠実な愛を持ち続けることが大事だったというメッセージなのでしょう。

 

また、リョーヴィンは田舎の農村で領民たちと一緒に汗を流す暮らしをしていますが、アンナはサンクトペテルブルク社交界の一員です。

虚飾に満ちた社交界は、不貞を犯したアンナを締め出します。

その悲惨さも、自然の中で素朴に生きるリョーヴィンとの好対照をなしていました。

 

舞台演劇のような演出

 劇中の場面がしばしば舞台に配置されて登場します。

また、場面転換の際には舞台演劇のように大道具の移動が行われたり、背景にいる人物たちが一斉に動きを止めたり、あるいはあるはずのない音楽を奏でていたりします。

舞台演劇のような演出が目を引き、観ていて飽きません。

また、サンクトペテルブルク社交界の場面はどれも華やかで、建物も衣装もダンスも、豪華絢爛の一言に尽きます。

リョーヴィンが暮らすモスクワ近郊の村も、色彩は少ないものの雪景色や農村風景が綺麗です。

とにかく映像の美しさと演出の個性が際立っていました。

 

おわりに

とにかく物凄い長さを誇るロシア文学作品ですが、それでも挑戦したいと思うくらい色々な感情で胸がいっぱいになる映画でした。

結婚してから観てみたら、また違った感想が出てきそうです。

しかし煌びやかなドレスや装飾に目を奪われっぱなしでした。

いつかサンクトペテルブルクに行ってみたい。

 

 

 

 

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