本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』

ドイツを代表する文豪ゲーテの、若き日の恋を描いた映画です。

映画にするにあたり大幅に脚色がされているとのことなので、偉人の実話というよりは独立したストーリーとして楽しむのが良さそうです。

ネタバレします。

 

 

あらすじ

枢密顧問官の息子ヨハン・ゲーテは、詩作に夢中になって法学博士の試験に落第する。

彼は父の勧めにより、ヴェッツラーにある裁判所で実習生として働くことになったが、仕事は特段面白くない。

しかし、ある日美しい娘シャルロッテに出会って恋に落ちたことで生活が一変する。

シャルロッテもヨハンに惹かれ、彼の詩作の才能を激励するが、彼女の父はシャルロッテゲーテの上司であるアルベルトと結婚することを望んでいた。

シャルロッテの父は貧しい地方役人で、大勢の子どもたちを養うにはアルベルトの協力が必要だった。

アルベルトもまたシャルロッテを慕い、遂に彼女に結婚を申し込むことになる。

 

ゲーテと『若きウェルテルの悩み』

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは、ドイツを代表する文豪として広く知られています。

少年時代には英語、フランス語、イタリア語、ラテン語ギリシア語ヘブライ語を習得するという秀才で、16歳の時にライプツィヒの大学で法学を学び始めます。

しかしこれは彼の父の意向で、本人は文学の研究をしたかったとのこと。

学業を終えた20代前半に法曹関係の仕事に就きますが、あまり身が入らず執筆活動のほうに力を注いでいたようです。

その頃、本作に出てくるシャルロッテ・ブッフと出会い恋に落ちますが、じきに彼女が友人のケストナーと婚約していることを知りました。

ひっそりと出会いの地を離れ、故郷フランクフルトに戻ったものの、シャルロッテを忘れられず苦しい日々を送ります。

この数年後にゲーテの人気を確立する2つの小説が完成しますが、そのうちの一つが『若きウェルテルの悩み』でした。

小説の内容はシャルロッテとの恋や、失恋に悩んだ友人が命を絶った経験が色濃く反映されています。

ゲーテはその後の人生でも数々の恋愛をしますが、初期の名作『若きウェルテルの悩み』に彼女の面影がみられることから、シャルロッテとの恋が特に有名です。

 

18世紀の賑やかさと美しさ

この映画は18世紀のドイツを舞台としており、自然豊かな郊外の風景や、賑やかな町中の喧騒が美しく表現されています。

未舗装の道路を馬車が行きかう騒がしさ、少し粗野に覚えるほど活気のある市場など、ややカオスな街の風景の臨場感が印象的でした。

主にシャルロッテの家の近くに映し出される森や平原も、南欧やフランスのような雄大さ・華やかさはないけれど素朴で美しいです。

イギリスやフランスの王族貴族を扱った映画に観られるような豪華さはないけれど、ドイツ特有の寒々しい雪景色や、荒涼とした農村風景、地味な街並みも、絵画のようにサマになっていました。

 

ヨハンとシャルロッテ

社会的地位のある父親のもと育ったヨハンは、若々しく豊かな感受性を持った男性です。

読書や執筆が好きで、書いた文章や詩を出版社に送ってみるも、採用されず自信をなくしかけています。

シャルロッテはヨハンに対し「こんなに素晴らしい詩なのに、自信がないなんてありえない」と彼を激励。

幼い兄弟姉妹の世話をする包容力を、ヨハンに対しても発揮しているかのようです。

彼女はヨハンに思いを寄せながらアルベルトと結婚することなどできないと悲嘆にくれますが、彼女の父は裕福なアルベルトと彼女の結婚を望み、「最初は愛せなくても時間が解決する」と言うだけ。

時代が時代だけに、家の事情が事情だけに、シャルロッテには逃げ場がありません。

アルベルトが本気で彼女を好きなことも状況をますます複雑にします。

ヨハン、アルベルト、家族のためにシャルロッテは終盤ある決断をしました。

 

シャルロッテの決断

シャルロッテはアルベルトと結婚することを決めます。

アルベルトと家族は喜ぶものの、ヨハンは嘆き悲しみ、すっかり生気を失くしてしまいました。

しかも、ヨハンが恋敵だと知って怒ったアルベルトの策略で牢屋に拘束されます。

失意の中で彼は突然看守に「紙とペンをくれ」と頼み、一気に書き上げたのが『若きウェルテルの悩み』。

これを読んだシャルロッテは、ヨハンに静かに告げに来ます。

「私と貴方が結婚したとして、貴方はどうするの?」

「裁判所で出世して裁判官になる?」

「出世して地方の裁判官となる男性を支え、子どもに囲まれて暮らすのが私の人生」

「人々を魅了する物語で世界中で有名になるのがあなたの人生」

知性と感受性豊かなシャルロッテは、ヨハンの才能を見抜いたうえで覚悟を決め、人生の選択をしていたのでした。

抜け殻のようになりながらも、ヨハンはどうにか生きていくことにします。

 

おわりに

シャルロッテが文筆家になるようゲーテの背中を押す場面が切なくも感動的でしたが、終盤にはもう一つ彼女によるサプライズが待っています。

このへんは実話ではなく脚色らしいのですが、とてもドラマチックで粋な展開なので、ネタバレせずにレビューをおしまいにします。

主演の二人の初々しい恋の様子と、18世紀の景色の美しさを楽しんでいただきたいです。

あと、18世紀のやんごとなき言葉遣いだからなのか、ドイツ語がとても聞き取りやすかったです。

ドイツ語の聞き取りの練習にも丁度いいと思います。

 

 

 

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