本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『この森で、天使はバスを降りた』

余韻の残り続ける名作映画をご紹介します。

静かな田舎町を舞台としたヒューマンドラマです。

途中までネタバレします。

 

 

あらすじ

片田舎の小さな町に、刑期を終えて出所した若い女性パーシーがやってくる。

町の食堂スピットファイア・グリルに住み込んで働く彼女に、女店主も住人も好奇の目を向ける。

パーシーはどんな罪を犯して服役し、この町に来ることになったのか。

彼女の過去はわからないままだったが、パーシーと日々を過ごす町の人たちに変化が訪れる。

長く硬直していた人間関係が、パーシーによって変わり出そうとしていた。

しかし、新しい変化を快く思わない者の手によって、彼女はいわれなく陥れられようとしていた。

 

 

スピットファイア・グリルの人間関係

パーシーがやってくる町は、昔ながらの人間関係がずっと続いており、長らく大きな人の出入りはありませんでした。

よそ者で、しかも前科のあるパーシーの経歴を皆知りたがります。

彼女を受け入れる女店主のハナもその1人です。

しかし、詮索されても淡々としている彼女を見直したハナは徐々にパーシーを仕事仲間として受け入れ始めます。

ハナの療養中、パーシーと一緒に店を切り盛りした嫁のシェルビーも同様。

一方、今まで母ハナと妻シェルビーに対して影響力を持っていたハナの息子ネイハムは、新しい登場人物の存在が面白くありません。

ネイハムは猜疑心が強く、妻シェルビーに対して威圧的に振る舞う男性でした。

一方パーシーは、スピットファイア・グリルの近所の森に一人の男性が住んでいることに気づきます。

誰にも知られず自給自足の生活をしているようでした。

 

訪れる変化

ハナの経営する食堂スピットファイア・グリルを譲渡するため、一同は作文コンテストを開催することを決めます。

参加費100ドルで作文を募集し、食堂が欲しい理由が書かれた作文を審査し、優勝者に食堂を譲るという企画です。

他人の事情に口を出さずにいられない住人たちは、ハナの手伝いと称して審査に加わりました。

次第に審査にも熱が入り、作文コンテストの行方に誰もが注目するようになります。

しかし、作文提出者たちから集めた参加費が消えてしまったことで町中が混乱に。

ちょうど前夜から姿が見えなかったこともあり、パーシーが犯人だと決めつけられ、町中が彼女を捜索し始めました。

 

パーシーの過去

この映画の英語版のコピーは

To a town with no future, comes a girl with a past.

(過去を持つ女性が、未来のないまま、ある町にやってくる)

でした。

その言葉通り、パーシーは誰にも言えない過去を持ち、将来のあても何もないまま町にやってきました。

町の住人ジョーが彼女に思いを寄せるようになっても、気持ちを受け入れられません。

明らかに彼女自身が過去に負い目を感じているようなのですが、何があったかを話すこともできませんでした。

そして終盤、誰もいない場所でシェルビーにだけ過去を打ち明けます。

どうしても他人に言えなかった、そして今も痛みを持ち続ける辛い記憶でした。

物語の序盤でパーシーとシェルビーがいち早く互いを理解しあえたのも、故なきことではないのかもしれないと思わざるを得ません。

この映画のこの場面を見てから、何らかの罪を負って償うべきとされた人にも、何か事情があったのかもしれないと考えることが、如何に大切か思い知らされました。

辛い過去を抱えた人が救われるにはどうしたら良いんだろうか、とこれほど考えさせられた映画も、なかなかありません。

実話ではなくフィクションですが、人間は再生できるのか、そのためには何が必要なのか、深い余韻を残す作品でした。

 

おわりに

参加費消滅騒動や、森の男の謎が解けたあと、町がどのような一歩を踏み出すかがラストの重要なポイントです。 

 初めて観たときには、傷ついた人がどのように立ち直れるのか、立ち直れず救われない人は今もどこかにいるのではないか、という点に最も考えさせられました。

 しかし、今思い返してみると、閉鎖的な町のコミュニティに新しい展開があり、共同体が変わっていくという点も、この映画のみどころだと思います。

派手なところはないけれど、静かな感動のある映画として間違いなく筆頭格です。

短いですが、今日はここまで。

 

  

 

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