本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『きみがぼくを見つけた日』

タイムトラベラーの男性と、彼を愛する妻の切ない映画のレビューです。
美しい映像と涙なしには語れないストーリーに号泣しました。。。

ネタバレします。

 

 
あらすじ

タイムトラベルの能力を持つヘンリーは、いつ何時どんな過去や未来に飛ばされるかわからない日々を過ごしている。

身1つでタイムトラベルするため、行った先ではいつもまず服を探さなければならなかった。

ある日彼は、タイムトラベルしてきた彼に何度も会ったと話す少女クレアに出会う。

ずっと彼が好きだったと言うクレアと恋に落ちるのに時間はかからなかったが、タイムトラベルで一緒に過ごすこともままならない2人に別れの時が迫ろうとしていた。

 

タイムトラベルと2人

この映画の原題はTime Traveler’s Wifeです。

原題が示す通り、タイムトラベラーであるヘンリーと、その妻クレアの関係が主題です。

タイムトラベルという要素はありつつも、その原因もわからなければ仕組みも明らかにされず、ヘンリーはタイムトラベルに巻き込まれる運命を変えることはできません。

そのため、SFではないという認識のもと観るのをお勧めします。

物語の見どころはあくまで、不意のタイムトラベルに翻弄されながらもお互いを思い合うヘンリーとクレアの関係性です。

2人の互いに対する思いやりが、優しいやら切ないやらで、途中からずっと泣きっぱなしでした。

ヘンリーといられず寂しい思いをしたり、彼の子どもが欲しくて無理をしてでも可能性に賭けたいクレア、

クレアを守るため、クレアに寂しい思いをさせないために最後まで心を砕くヘンリーの姿が忘れられません。


タイムトラベルが意味するもの

運命的な出会いからすぐに恋愛に発展し、温かな結婚式を迎え、2人の仲には何の問題もないように見えます。

実際、2人がお互いを愛していることは最初から最後まで変わりません。

しかし、突発的なタイムトラベルで大事な時間を一緒に過ごせなかったり、授かった胎児がクレアのお腹からタイムトラベルしてしまうことから流産を繰り返したり、人生を一緒に過ごすうちに困難な問題に直面します。

その度に2人は、愛する相手のために最もすべきことは何かを考えて実行します。

タイムトラベルこそなくても、一緒にいられない時間をどう乗り越えるか、辛い課題に際してどのように協力し合うかは、パートナーと過ごす上で誰もが向き合う問いではないでしょうか。

その点では、タイムトラベルは比喩に過ぎず、メカニズムや原因が解明されないのは自然なことなのでしょう。

何でタイムトラベルするのかわからん!というレビューもあったのですが、個人的にはそんな感想です。

 

限られた時間の中で

友人たちと集まって話していたある日、ヘンリーとクレアたちは撃たれて動けないヘンリーが未来からタイムトラベルしてきた瞬間に居合わせます。

すぐに彼の姿は消えてしまいますが、タイムトラベルしてきたヘンリーに小さな頃から会ってきたクレアはあることに気づきます。

年取ったヘンリーに会った記憶がないのです。

ヘンリーは長くは生きられず、クレアとともに年老いていくことはできないかもしれない。

早すぎる別れを徐々に確信しながら、クレアはどうしてもヘンリーの子どもが欲しいと思い続けます。

一方、ヘンリーはクレアと過ごせる限られた時間で彼女の体を大切にしたいと、出産を諦めるよう言い聞かせます。

子どもを諦められないクレアを救いたいと、ある手段で彼女の思いを止めようとするヘンリーですが、クレアは彼の予想を上回る方法で願いを叶えようとします。

限られた時間の中でどう生きるかを一緒に悩むのも、パートナーと生きる上で誰もが向き合う状況でしょう。

この流れもまたタイムトラベルを超えて、自分以外の誰かと生きることについて考えさせられるモチーフとなっていました。


おわりに

幸せな時間も辛い時間もパートナーと乗り越えていくことについて、深く考えてしまう映画でした。

2人の周りの人々の優しさや、最後にもうひと泣きせずにいられないラストシーンなど、切ない中にも救いのある温かい物語です。

特にラストシーンは、ヘンリーとクレアが一緒に生きた時間の幸せと切なさが詰まっていて胸が締め付けられずにはいられませんでした。

泣けるけど前向きさもあるラブストーリーが観たいという方におすすめしたい一作です。

美しいガーデンウェディングの場面も印象的な映画でした。