本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『月曜日のユカ』

日活の名作、加賀まりこの代表作と言われた60年代の邦画をご紹介します。

フランスのヌーベルヴァーグに影響を与えたとも言われる中平康監督作品です。

ラストまでネタバレします。

 

 

あらすじ

18歳のユカは、横浜のクラブ『サンフランシスコ』で働く可憐な少女。

気さくな性格で誰からも好かれており、日曜には教会に通っている。

一方で、どんな男性にも体を許すものの、キスだけはさせないことでも知られていた。

彼女は「男を喜ばせることが生きがい」と公言して憚らない。

最近は専ら、初老のパトロンのパパか、同世代の恋人・修と過ごしている。

ある日、修と町を歩いていたユカは、パパが妻と娘と買い物をしているのを偶然見かける。

パパが嬉しそうに娘に人形を買うところを見て、ユカは自分もパパに同じ幸せな顔をさせたいと思うようになる。

 

ユカの信念

ユカは擦れたところが全くなく、無邪気でコケティッシュな魅力を持っています。

「女の生きがいは男を喜ばせること」と考えていて、どんな男も等しく喜ばせることが良いことだと信じて疑いません。

映画には彼女の元彼たち、同世代の恋人、初老のパトロンなどが登場し、ユカは彼らの誰に対しても笑顔で接し、惜しみなく相手を愛そうとします。

パパに囲われながら生計を立て、パパと会っていない間は同世代の若者たちと会ったり、クラブで働いたりしていました。

しかし、穏やかに続いていた生活と、揺るぎなかった彼女の信条が、揺らがざるを得ない事態が少しずつ発生します。

最初はパパが家族といるところを見たことでした。

ユカはいつもパパを懸命に喜ばせようとしているのに、彼女がいないところでパパはいとも簡単に幸せそうな顔になっていて、どうしてなのかユカには理解できません。

家族と他愛ない時間を過ごす幸せが彼女には分からず、日曜日にユカと人形を買い物に行けば、パパは嬉しくなると勘違いしていました。

修から諭されるも、彼女は凝りません。

「日曜ってのはな、家族サービスデーだ
    家族と歩くから日曜が楽しいんだよ
    お前と一緒じゃ日曜はだめさ」
      「あたしとの日曜じゃだめなの?」
「日曜日は家族と過ごすもんなの!」
      「…日曜は家族と?」
「そう!」
      「いいわ、日曜がだめなら私は月曜
         月曜なら私にくれたっていいと思うわ」

 


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ユカと母

「女の生きがい」についてユカに教えたのは彼女の母でした。

米国軍人の現地妻として生計を立てていた母は、ユカにも「どんな相手でもその時は一生懸命に愛すること」が大事だと説きます。

言葉通りにユカは、元彼の命じるままに見知らぬ相手と踊ったり、一度きりだと分かっている相手にも尽くそうとします。

しかし、霊廟の中で服を脱いで誘うなど、あまりに積極的なユカに男たちが戸惑って逃げ出してしまいます。

どうしたのよ!早くいらっしゃいよ。うんと愛してあげるわ。ここには神様たちが大勢いるけど、だから嘘なんかつかないわ!

 自分は精いっぱい男を愛しているはずなのに、どんなに言うことを聞いても、どんなに積極的になっても、何だか相手は心から幸せそうな顔をしないようです。

母の教えに沿っても望む結果が得られないことで、心の底に疑問が頭をもたげ始めます。

また、ユカがキスを許さないのは、小さな頃に母が米兵とキスしているのを見てしまったとき、牧師から「あれはいけないことだ」と言い聞かせられたのが理由でした。

ユカの信念は母との記憶の中で作られたことが描かれています。

 

ユカと恋人

ユカは当時の加賀まりこだからこそ演じられた役と言っても過言ではありません。

他の人が同じ台詞を言っても、「何言ってんだこいつ」となるリスクは非常に高かったはずです。

つぶらな瞳もふっくらした唇も綺麗な肌も、少し幼い感じもぴったりです。

現恋人の修は、そんなユカに夢中で、ユカがパパに幸せな笑顔になってもらおうと空回りするのを心配します。

パパから、人形を買いに行く約束をすっぽかされ、しかも大口の客になる米国人船長と寝てくれと頼まれ、それでもユカは承諾してしまいます。

激怒した修はそのままユカをはたいて飛び出しますが、数日後、彼が船長を殺しに出かけて事故で亡くなったと知らされます。

死んだ修にユカは初めてキスしました。

 

 

長いので次の記事に続きます。

 

  

 

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