映画『あと1センチの恋』
幼馴染同士のじれったい恋を描いた珠玉の名作のレビューです。
近すぎて遠い二人の様子が観ていていじらしいです。
あらすじ
ロージーとアレックスは6歳の頃からの親友で幼馴染だった。
ロージーの18歳の誕生日に、アレックスはずっと好きだった彼女にキスする。
しかし、酔い過ぎた彼女がキスのことを覚えていなかったため、 アレックスは自分が振られたと思い込んでしまう。
高校卒業後は一緒にアメリカへ留学しようと約束していた2人だったが、ロージーが予期せず妊娠してしまったことで出発できなくなる。
イギリスとアメリカで、学業と子育てという別々の道を歩み始めた2人は、お互いを大切に思いつつもすれ違いを繰り返す。
回り道の末に自分の本当の気持ちに気づいたロージーだったが、その直後、アレックスが昔の恋人と婚約したと知らされる。
彼女は最後の奇跡を願って、結婚式のため愛娘を連れてアメリカに向かうことを決意する。
少年少女と大人のあいだ
ロージーとアレックスは、18歳を迎えて自立し始めた少年少女ですが、まだ自分の恋愛感情を率直に表現できるほどの余裕はありません。
一人暮らししたり、子どもを産んだり、どんどん責任ある行動をするステージに進んでいくものの、ままならないことも多々あります。
ロージーは想定外の妊娠に戸惑い、最初は子どもを養子に出そうとしますが、産まれてきた娘を見て手放せなくなってしまいます。
それは同時に、彼女自身が進学したり働くのを諦めることを意味しました。
懸命に母親業に奮闘するロージーですが、かつての同級生の女子と平常心で向き合えなかったり、娘の父親に翻弄されたりと数々の試練が訪れます。
アレックスはアレックスで、アメリカでの新生活が順調かと思いきや、恋人が意識高い系過ぎたり、上手くいかなかったり、ロージーのことが心配だったりします。
学校を出て、答えのない人生を歩き出す2人は若くてひたむきで思わず応援したくなります。
そんな時に本当の気持ちを打ち明けあえる友人の大切さを、わかりやすく伝えてくれるストーリーです。
ところが人生は上手くいかないもので、
好きな気持ちを確認したと思ったらアレックスの恋人が妊娠したり、
やっぱりロージーを守らねばと思ったところで彼女が娘の実父グレッグと復縁したり、
とにかくタイミングの悪い2人は何年もすれ違いを続けます。
ロージーを支える人々
遠くアメリカからロージーを心配するアレックスの他にも、ロージーを支える名脇役がいます。
彼女の父と、親友ルビーです。
ロージーの父親はホテルで働いており、ホテル経営を学んで自分の宿を開きたい彼女を応援します。
夢を語りつつ、母の心配も知っているロージーが「私って欲張り過ぎかな」と言うと、優しく激励します。
「欲張らないほうがもったいないと思うよ
お前の好きにしなさい」
子育てに翻弄されるロージーも見守ってくれる父親は、彼女の生涯を通して尊敬できる人物の1人です。
優しさの権化のような父親と対比してコミカルなのが友人ルビーです。
妊娠・出産で環境が激変し、娘の実父は軽薄なチャラ男だし、アレックスとはすれ違いばかりのロージーに本音で寄り添います。
「あんたは最高の友達よ
ヤなことがあってもあんたよりマシだと思える」
そんな踏んだり蹴ったりなロージーに、逆境に立ち向かえ!とばかりに背中を押してくれる頼もしい存在でもあります。
ロージーより結構年上に見えるのですが、年齢差を感じさせないフランクさもかっこよかったです。
人生は待ってくれない
とにかくタイミングが合わないロージーとアレックスを観ているうちに、人生には躊躇ってる暇なんてないのかもと思わされます。
好きなら伝えなきゃ、会いに行かなきゃ、でも今まで近しすぎてかえってきっかけがないし、大人になって毎日の仕事や義務に追われていると機会がない。
でも、時間が限られている以上は、好きな人と過ごす時間を失うわけにはいかないし、タイミングも好きな人もいつまでも待っていてはくれません。
アレックスの結婚式に向かう途中、親友ルビー姉さんがポーターの男性に「結婚しましょう」と初対面で突然プロポーズされるのが象徴的です。
ルビーは躊躇いもなんもなく良いわよと答え、あっさり婚約します。
「そんな簡単な話があるか!」とロージーが憤激するのですが、本当はこのくらい簡単なことだったんだろうなと思わされる一場面でした。
おわりに
すれ違ったりお互いを思って悩むロージーとアレックスのいじらしさがじれったい一方、2人を全力で応援したくなる映画です。
30歳近くなってくると、20歳くらいの若者が可愛らしく見えてきて困ります。
自分がその歳だったとき、心も大人のつもりでいつつ、そうじゃない実態と格闘していたのを思い出して煩悶したりもしますが。
太眉が可愛いロージーも、知的でハンサムながらロージーのこととなるとあと一歩のアレックスも、終始目が離せませんでした。
いつか原作の小説も読んでみたいです。
切ないけど勇気をもらえる青春映画をお探しの方に、ぜひお勧めしたい作品です。