本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『エターナル・サンシャイン』

恋の記憶について考えてみたくなる映画のご紹介です。

名作恋愛映画のレビューは緊張しますが盛大にネタバレし、あまつさえ自分でコピーも考えてみます。

 

 

あらすじ 

バレンタインを目前に、ジョエルは恋人のクレメンタインとひどい喧嘩別れをしてしまう。

仲直りしようとプレゼントを持って彼女を訪れたものの、クレメンタインは完全に彼のことを忘れていた。

ほどなくしてジョエルは、クレメンタインが彼に関する記憶を消去する施術を受けたと知る。

ショックを受けたジョエルだったが、自分も彼女の記憶を消し去ることを決めた。

ところが、施術の開始後にクレメンタインを忘れたくない気持ちに気づき、ジョエルは無意識下で記憶の消去に対する抵抗を始める。

 

難易度の高いストーリー

理解するのが難しいストーリーでした。

なんの予備知識もなくTSUTAYAで借りて観始めたはいいものの、

途中から流れが読めなくなり不可思議な思いに駆られたため、

DVDのパッケージの紹介文を読んでようやく劇中の現象を理解しました。

1ミリも事前知識を仕入れずに観るのが至高!と思っていましたが、この映画に関しては意地を張らずにあらすじを読んで正解でした。

ジョエルの脳内の現象を理解するのに少し時間がかかったのと、

切り替わる場面場面の時系列があちこち前後していたのが混乱の理由です。

ジョエルのしみったれた外見と、うじうじしたキャラクターに開始5分で挫折しそうだった上、

途中からストーリーが理解不能になってしまいそうでしたが、挫けずに最後まで観て本当に良かった。

理由は後述します。

 

恋は幸せも悲しみも持っている

ジョエルが、クレメンタインとの思い出を全部忘れてしまいたいと思った気持ち、やっぱり忘れたくないと思った気持ち、どちらも味わったことのある人は多いのではないでしょうか。

恋人との別れは辛いことですが、辛くなる理由は、好きな人と一緒にいた幸せな時間が終わってしまうからです。

幸せな時間だったからこそ、別れが辛いとも言えます。

別れがあってすぐの時には、辛い感情の比重が大きくて耐えられないと思うかもしれません。

しかし、辛さに耐えかねて全ての恋の記憶を消したら、幸せな記憶も忘れてしまいます。

ネガティブな感情、あるいはポジティブな感情、どちらかだけでできている恋ではないのなら、後にその人自身を作る大切な一部になるかもしれません。

幸せなこともあれば辛いこともあった恋なら、時間が経てば「経験して良かった」と思えることも多いはずです。

ヤケを起こして記憶を消そうとしたジョエルが、後から我に返ったのも理解できます。

 

たとえ忘れたとしても

「失恋して辛かったとしても、その経験があったからこそ、今のその人がある」 

ということを決定的に思い知らせる場面がやってきます。

記憶除去手術のスタッフの1人メアリーが、除去手術の発明者であるミュージワック博士に恋心を打ち明けます。

博士は既婚者なのでメアリーを宥めようとしますが、偶然現れた彼の妻によって、あることが明らかになります。

メアリーは過去に一度、博士と不倫関係になっていました。

しかし、叶わぬ恋を解消するため、彼女は記憶除去手術を受けていたのです。

記憶を消したにも関わらず、一緒に働いていたらまた博士を好きになってしまい、告白に至りました。

辛い恋が終わって、その後辛さから逃れるために記憶を消しても、

自分が自分であり、相手が相手である限りは、また恋に落ちてしまう。

何秒間か、何が起こったかわかりませんでしたが、意味が理解できると衝撃に襲われる場面です。

終わってしまった辛い関係でも、人間を1歩前に進ませてくれるのかもしれない。

同時に、一度別れた相手にもう一度心が惹かれてしまう皮肉に何も言えなくなってしまいました。

 

自分を作る記憶

辛い記憶は人間を苦しめるだけかと言うと、多分そうではありません。

痛みを伴う経験に学ぶ機会を得られるからです。

恋愛に限ったことではないけれど、辛い記憶を全てなくしてしまったら、

挑戦しても絶対にできないことに何度も挑んでしまうかもしれないし、

経験則があれば選べたであろう正しい選択肢を見失うかもしれない。

それだけを書いても教訓めいてつまらなくなりそうなところ、

恋愛の記憶に絞ったのが天才的な采配だと思いました。

ジョエルとクレムは記憶を消さなければ「喧嘩なんてするもんじゃない」「お互い優しくしあうのが一番」という結論に辿り着けるわけだし、

メアリーも博士との関係を忘れなければ「不倫なんてするもんじゃない」と軌道修正できたでしょう。

それに、得てして幸せな記憶と切れない関係にあるというのも、恋の思い出の特徴です。

さらに、覚えているのは当事者2人だけというのも恋ならではのことです。

「良いことも悪いこともある」のは恋愛だけではなく、仕事だったり学業だったりも同じですが、大人数で共有する記憶も多い中、恋愛は2人だけの記憶が沢山できます。

当事者が忘れてさえしまえば、なかったことのようになってしまうというのも、恋の記憶の特別感を強調しています。

楽しい思い出も辛かったことも、そこから学べたことも、自分だけの自分を作っていくのだと実感させられました。

 

もしこの映画のコピーを書けるなら

「あなたを忘れたい。もう一度恋に落ちるために」としてみたいです。

この映画を観る前の人は、相手のことを忘れないと新しい恋ができそうにないから、記憶を消したい、という意味にとるかもしれません。

けれど観終わってみると、失恋の記憶を忘れてもう一度「あなたと」恋に落ちることを差しているんだとわかる流れ。

観終わって初めて意味が分かるコピー、私はとても好きなんですが、商業的にはダメかもですね。笑

これから観る人の興味を惹くことが第一ですから。

実際のコピーは「”さよなら”の代わりに記憶を消した」「失恋の痛みを知るすべての人へ」だったらしいです。

まさにその通り。

冬の景色になじむ恋愛映画を観たい方、失恋の痛みを知るすべての人へお勧めしたい映画です。

 

  

 

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