カタルーニャの独立宣言
10月1日、独立を問う住民投票が行われたスペイン・カタルーニャ州より、投票の最終結果は賛成票9割と発表され、先日独立宣言も行われました。
1日の記事以降の経過を整理してみます。
スペインを揺さぶるカタルーニャ独立運動について - 本と映画と時々語学
投票の様子と結果
住民投票自体が、スペイン国内法上、無効な手続きであるとして、中央政府は断固阻止の立場を取っていました。
このため、投票所の閉鎖や投票阻止を狙って、中央政府からの警官隊が大量に現場に押し寄せ、住民との衝突がありました。
SNS上に、警官が市民を殴打する動画なども次々に投稿され、ニュースでは負傷者が800人以上にのぼると発表されました。
投票結果は先述の通り投票率4割、開票結果は独立賛成が9割。
独立派勝利の結果であれば、州法に基づいて2日以内に独立宣言を行うこととされていました。
スペイン王室・中央政府の反応
スペイン国王フェリペ6世は、選挙の翌々日にTV演説を放映。
カタルーニャ自治州政府はカタルーニャ社会の分断を招いており無責任だとのコメントを発表しました。
その上で、スペイン国家を永続させることに全力で取り組むとしています。
スペイン中央政府も、ラホイ首相らを中心に自治州政府を非難。
強硬姿勢を崩さない中央政府は、対話の機会を提供する素振りはなく、カタルーニャ自治州の自治権停止を警告しました。
カタルーニャ自治州政府の行動
住民投票の根拠となった州法では、投票で独立賛成の結果が出れば2日以内に独立宣言を行うとされていました。
しかし、少なくとも投票からしばらくの間は、EUの調停を待って中央政府との対話をするつもりだったようです。
突然注目を浴びたEUですが、EU域内には他にも分離独立を巡ってセンシティブな国が点在します(まだEUにいるイギリスのスコットランドや、EU加盟申請中のセルビアのコソヴォなど)。
できれば関わりたくないのが本音のようで、カタルーニャ問題はスペインの国内問題であり、EUは不干渉を貫くとトゥスクEU大統領が宣言しました。
これにより、カタルーニャ自治州政府は自ら中央政府と対峙しなければならなくなりました。
州議会の独立宣言
住民投票で独立派が勝利したら2日以内にするとされていた独立宣言ですが、色々あった末に27日に州議会にて実施されました。
スペイン中央政府は独立絶対反対だし、EUも助けてくれそうにないし、
だからと言って黙って引き下がったんじゃカタルーニャ州の独立派有権者が納得するはずないし、
傍から見ても州政府は独立宣言するしかない状況だったと思います。
ちなみに10月に入ってからカタルーニャの独立派指導者が2名逮捕されるなど、独立派の「黙って引き下がれない」気運を補強するような事態も発生しています。
スペイン中央政府は自治権の停止で対抗するようですが、今後互いにどのような対応をとるのか、対話による軌道修正が図れるのかが注目されます。
独立騒動による影響
カタルーニャ州には、州都バルセロナを中心に大企業が数多く本店・支店を置いています。
しかし、今般の騒動により既に多数の企業が本社の登記を移転しました。
経済の担い手である企業が多く離脱することになれば、今後中央政府との交渉ができたとしても弱い立場に立たされる可能性があります。
個人的には、スペインの一地方と言う位置を脱してしまうことは、経済的にはあまりいい影響がないように思われます。
しかし、独立派有権者の勢いが衰えず、避けられるかと思われた独立宣言も実施されたところを見ると、経済上のメリットを独占したいということだけではなく、もっと根深い理由があるようです。
私はまだその理由を理解しきれていませんが、こちらにカタルーニャの経済的背景を詳しく追った記事がありましたのでリンクを掲載します。
おわりに
スコットランド独立は残留の結果に終わりましたが、カタルーニャの独立騒動はまだ収まりそうにありません。
今後も新たな展開があれば経過を見ていきたいと思います。
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