本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』

初日に行った方たちが絶賛していたので、観に行ってみました。

映画館で観て大正解だったと思ったのでネタバレにてご紹介します。 

 

 

あらすじ

70年代のロンドンで、ペルシャ系インド人の青年ファルークは空港の荷役の仕事をしていた。

彼は、お気に入りのバンド・スマイルからボーカリストが脱退して困っていたところに、自身を加入させるよう売り込む。

ギターのブライアンと、ドラムのロジャーは彼の加入を承諾し、ベースにジョンを引きれて新しいバンドをスタートさせる。

ファルークは後にフレディ・マーキュリーと改名し、バンドは後に音楽史に伝説を残すQUEENの始まりとなった。

伝説的な成功の軌跡と、活動期間の後半に訪れた決裂、そして1985年のライヴエイドの舞台までを描く伝記的映画。

 

クイーンとボヘミアン・ラプソディ

ボヘミアン・ラプソディはクイーンの楽曲の中でも驚異的なセールスを記録した一曲であり、多くの人に知られています。

有名曲のためそもそも引用される回数の多さもありますが、一度聴いたら忘れられないインパクトがあることから、誰もが聞き覚えがある曲の一つではないでしょうか。

前衛的な表現が多々盛り込まれていることに加え、6分と言う長さ、バラードやオペラやロックと言った複数の分野の曲が組み合わされていること、歌詞の奔放さなど、どの部分を取り出しても規格外な楽曲です。

まさに芸術は爆発だと体現しているような狂想曲。

ロックミュージックの枠に囚われず、あらゆる音楽を表現の対象とした彼らの活動を象徴する一曲と言っても良いと思います。


Queen - Bohemian Rhapsody (Official Lyric Video)

本作には、タイトルにも掲げられているボヘミアン・ラプソディを始め、数々のクイーンの代表曲が挿入されています。

クイーンのメンバーであるブライアン・メイロジャー・テイラーが音楽プロデューサーを務めていることもあり、音楽の大盤振る舞いです。

また、『We will rock you』や初期の代表曲が生まれた背景や、レコーディング風景も物語に織り込まれています。

聴いたことのある名曲を聴ける楽しみと、「こんな風にあの曲が生まれたのか!」という驚きがありました。

個人的には、『We will rock you』がブライアン・メイの「オーディエンスと一つになりたい」「バンドと一緒に曲に参加してほしい」という思いを背景に作られたということを初めて知って感動しました。

あのスタンピングとクラップにはそんな理由があったんですね。


Queen - We Will Rock You (Official Video)

 

成功と孤独

フレディは無名の時代から知っているメアリーと結婚しますが、バイセクシュアルであることをカミングアウトした後、彼女と別れます。

彼女を失った後の孤独と悲しみは、常にフレディの心について回ったことが描写されていました。

メアリーはずっとフレディのことを真に思いやる友人であり続けるのですが、セクシュアリティを捧げるパートナーの席をフレディが占めることはその後なかったようです。

バンドの他のメンバーと違い、フレディだけに自分自身の家族がいないという点も彼の寂しさを募らせます。

孤独に付け込んだマネージャーのポールに、ソロ活動開始後は公私ともに手綱を握られ、本当に彼を思いやる人々から隔絶され、精神的にはますます追い詰められていきました。

連絡がつながらないことを怪しんだメアリーが彼のもとを訪ねたことで憑き物が落ち、ポールを叩き出すと、バンドメンバーに謝ってクイーンに戻ります。

事実を辿ると、メアリーとの破局はカミングアウトではなくフレディの浮気によるもののようです(他のメンバーも浮気はしていたようなので映画では掘り下げなかったのかも)。

音楽メインの映画なので、ドラマとしての完成度は標準的ですが、どんな成功も寂しさを埋め合わせることはできないんだと思わされます。

そう考えると、映画冒頭で流れる曲が『Somebody to Love』だったのは秀逸な采配です。

できれば彼のセクシュアリティによる葛藤や、ソロ活動誘致による亀裂だけではなく、バンド活動の中での4人のぶつかり合いを(描かれているよりもっと多く)見たかったですが、時間の制限上難しそうなので致し方なし。

全編を通じて印象的だったのは、多少調子に乗ったり、無神経な発言をすることはあっても、フレディが基本的には素直な人に見えたことです。

音楽に対する真剣さや、メアリーへの思い、猫への愛着など、人間としての素朴な感情が伝わってくる場面が多かっただけに、終盤の運命はやりきれないものがありました。

フレディの無邪気さを受入れていたからか、そして各人が高学歴なこともあってか(なぜか全員理系)、他の3人のメンバーは理性的にフレディを支えていたように見えます。

 

バンドメンバーの再現度

主役でボーカルのフレディ・マーキュリー、ギターのブライアン・メイ、ドラムのロジャー・テイラー、ベースのジョン・ディーコン、それぞれについてかなり高い再現度でした。

特にブライアンとジョンは生き写しで、スクリーンを観ながら何度も「もうこれ本人じゃん…」と思っておりました。笑

当時の映像や、本人との交流などを通して振る舞いや雰囲気を研究しているらしいのですが、もはや再現のレベルを超えてました。

一番似ている人を決めるとしたらブライアンだと思いますが、それもそのはず、ブライアンが最も俳優陣の役作りに積極的に貢献したようです。

『ボヘミアン・ラプソディ』役作りの苦労をキャストらが語る - シネマトゥデイ

ロジャーは本人のほうがスレた感じがあるのと、フレディは体格がめちゃくちゃいいので演じたラミ・マレックと若干サイズ感が違いますが。

なおフレディの音声は、ほとんど本人の歌声を映像に当てているそうです。

私はそれを知らずに観ていて「本人みたい!」と勝手に感激していました(本人でした)。

 

おわりに

この映画の特徴は一にも二にも、クイーンの名曲が惜しみなく盛り込まれていることでしょう。

楽曲の魅力に充分に浸るためにも、少しでも興味のある方には映画館で観ていただくことを強く勧めます。

大抵の映画について「面白い作品は映画館で観たってPCで観たって魅力は味わえる」と思っている私ですが、本作については見解を改めております。

特に、クイーンにとって特別な場所であるウェンブリー・スタジアムでのライヴシーンは圧巻です。

クイーンをよく知らない方にも、彼らの楽曲を知る導入編として、是非お勧めしたいと思える映画でした。

 

 

 

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