本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『モダン・タイムス』

※午前中、編集途中バージョンがアップロードされてしまい、お見苦しい記事となり、すみませんでした。

 

 喜劇王と呼ばれたチャーリー・チャップリンの代表作『モダン・タイムス』のレビューです。

時代は既にトーキーでしたので、有声映画なのですがほとんどの台詞は字幕や身振り手振りで表され、ほぼ無声映画となっています。

 

 

あらすじ

高速で続く工場の単純繰り返し労働で心を病んだチャーリーは、退院後に街を歩いていたところ、共産主義者と間違われて逮捕される。

拘置所で囚人の脱走を阻むという手柄を立て、厚遇されていた彼は間も無く出獄を許されるが、職が見つからず拘置所が恋しくなる。

再び衣食住の保証された拘置所に入るため食い逃げをしたところ、同じく食うに困ってパンを盗み逮捕された浮浪少女と出会う。

 

 

強い政治的メッセージ

資本主義の発展により、過酷な労働や失業によって人間が追い込まれる場面を、ユーモアと皮肉を交えて伝えています。

このため、共産主義的であるとして当時(1930年代後半)のドイツでは上映が禁止されていたそうです。

トーリーに難しさはなく、イギリス出身のチャップリンらしい痛烈な皮肉も込められていますので、資本主義に対する風刺や揶揄はとても分かりやすいです。

工場の歯車の中にチャップリンが吸い込まれていく場面は有名ですが、成長する経済の中で人間が翻弄される様子を端的に表していると言えます。

 冷戦も20年以上前に終わり、社会主義共産主義の崩壊を経験した現代から見ると、時代遅れな主張であることは否めませんが、当時の批判精神がどのようなものだったかを見ることができます。

 

完璧なパントマイム

チャップリンアイデンティティとも言うべきパントマイムが、ほぼ全編を通じて披露されています。

コミカルな動きに思わずクスッとなります。

ヒロインの少女を演じるポーレット・ゴダードの天真爛漫さも相まって、2人ではしゃぐシーンが微笑ましいです。

ただ、台詞の多い映画が好きだったり、濃い展開を楽しむのが好きと言う方には、パントマイムが何回も長い尺で入るのは退屈に感じるかもしれません。

 

無声映画からトーキーへ

 この映画自体は有声映画ですが、まだトーキーになってからの歴史は浅い時代でした。

このことを皮肉ってなのか、再就職したレストランで「歌え!」と命じられたチャーリーが「言葉を忘れた(l forgot the words.)」という場面があり、その後イタリア語のように聞こえる何かでメチャクチャな歌詞を歌うカットがある、と昔大学の講義で紹介されていたのを、もう一度そのシーンをみて思い出しました。

無声映画でも映画を作れたように、言葉はなくても物語は生み出せると言いたかったのか?

ほとんど台詞のないこの映画で、最も多くの言葉が発音されている場面かと思います。

 

おわりに

純粋に映画として楽しむというより、歴史の勉強をしたような気分です。

教養を広げるという意味では良いかもしれません。

フールーで公開されていますので、興味のある方は是非ご覧ください。

 

 

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