映画『エスター』
初めてガチホラー映画のレビューをご紹介します。
今までスペインのホラーコメディ『スガラムルディの魔女』以外はホラーの領域に足を踏み入れていませんでした。
好き嫌いなく観ますと いいつつも、ホラーだけは怖くて観られなかったためです。
珍しく苦手なジャンルの映画を観られたと言うことで、記念に書いてみます。
あらすじ
3人目の子どもの死産から立ち直りきれない夫婦ケイトとジョン。
前向きに傷をいやすために養子を取ろうと決め、施設を訪れたところ、ひとりで絵を描いていた少女エスターと意気投合。
長男ダニエル、長女マックスとの4人家族に、エスターを新しく迎え入れることを決意する。
しかし、大人びて個性的に見えたエスターは徐々に攻撃的で危険な一面を現し始め、ケイトは彼女に不信感を抱くようになる。
ところが、エスターが危険人物であると訴えても夫やカウンセラーは聞く耳を持ってくれない。
焦るケイトを尻目に、エスターはケイトたちを追い詰める計画を着々と進めていた。
何かがおかしい少女
初対面では、絵が上手な一匹狼の女の子としか見えなかったエスターですが、徐々に「個性的」という言葉で片付けてしまえない面を現していきます。
首と両手のリボンを決して取らない、
入浴する時には必ず脱衣所に鍵を掛ける、
頑として歯医者に行かない、
ケイトとジョンの夫婦生活を巧妙に邪魔する、など。
目立つ洋服や、いつも抱えている聖書に対する異様なこだわりもあって、小学校のクラスメートにも馴染めません。
当初は、妹になるマックス(難聴で、補聴器と手話の助けを借りて日常生活を送っている)へ優しく接したり、死産のトラウマを抱えているケイトに心を開く様子を見せていました。
しかし、クラスメイトとの諍いなどを経て、だんだんと攻撃的で狡猾な性格が明らかになっていきます。
その攻撃性は家の外の人間だけでなく、やがてマックスやダニエル、ケイトへも向けられていきます。
子どもと思えない一面
自分の服装や行動に異常なこだわりを見せ、それに踏み込んだり邪魔したりする人間を容赦なく排除する攻撃性。
それ以外にも不審な点がありました。
音楽を専攻し、仕事にもしていたケイトがピアノのレッスンをしてあげると、エスターは初心者ながら一生懸命弾き方を学ぼうとします。
しかし、しばらく経ってから一人でピアノを弾いているところを見てケイトは驚愕。
ピアノを教えようとするケイトの意に沿うよう、彼女は全く弾けないふりをしていたのでした。
また、父ジョンと近所の女性の会話の内容を、ケイトが浮気の疑いを持つよう巧妙に伝えたりします。
単に攻撃的で怖い子というだけでなく、子どもと思えない能力や頭の回転を具えているところも恐怖を煽ります。
「何かがおかしい」と思ったケイトは、養子縁組を取り持ったシスター・アビゲイルから「伝えていなかったけれど、実はエスターには問題がある」と聞き、焦ります。
しかし、シスター・アビゲイルはケイトたちの家から帰る前に消息を絶ち、後に殺されているのが見つかりました。
エスターがアメリカに来る前の資料は探しても出てこないため、ケイトは独自に彼女の素性を調べようと決意します。
ヒントは、エスターがいつも大事に抱えている聖書のみ。
ケイトは表紙に刻印されていたサールン・インスティテュートを調べ始め、やがて先方の医師と連絡を取ることに成功します。
しかし、すでに彼女の子どもたちへ深刻な害が及び始めていました。
パニックになるケイトと、何も気づかない夫ジョン、それを冷静に眺めるエスター、家族の危機が迫る中でクライマックスとなります。
エスターが家族を壊そうとするのはなぜか?
エスターの知能が異様に高いのはなぜか?
それらの謎も終盤ですべて明かされます。
おわりに
ホラーというだけでなく、エスターの出自や行動の原因を探るミステリー的な要素もあったので最後まで引き込まれました。
この子怖い、見てられない、でも謎が解けるまでは止められん、とひたすら思考をループを最後まで続けました。笑
序盤のケイトの夢はスプラッタとしか言いようのない絵面ですが、血まみれグロ画像で怖がらせるだけの映画ではないのでご安心を。
グロイのは最初の数分だけで、あとはエスターの謎めいた存在に対する未知への恐怖にさらされ続ける映画です。
その昔、TV番組『しゃべくり007』で有田さんがおすすめしていたのを思い出して観てみたのですが、手に汗握る展開や、謎解きなど、おすすめ作品になるだけのことはあると納得しました。
怖いミステリーが観てみたい、というかたに推薦したい作品です。