本と映画と時々語学

書評、映画評、時々語学学習や時事ネタなど書き綴りたいと思います。

小説『白雪姫には死んでもらう』

 以前レビューを書いた推理小説『深い疵』と同じシリーズの次の作品をご紹介します。

ドイツミステリの女王ネレ・ノイハウスによる本格ミステリーシリーズの4作目です。

 主人公であるオリヴァーとピアの他、小さな村に住む少女アメリーの目線で、ある事件が語られます。

謎の緻密さと人間描写のリアルさは前作と同じ完成度です。

原題は”Schneewittchen muss sterben”で、直訳の意味は「白雪姫は死なねばならない」ですが、原語を活かしつつスッと入る日本語になっている良い訳ですね。

  

 

あらすじ

ある空軍基地の敷地から人骨が発見される。

遺体の身元は、11年前の連続少女殺人事件の被害者だと判明した。

折しも連続殺人の犯人として逮捕されていた青年トビアスが、ちょうど刑期を終えた頃の出来事だった。

ビアスは殺人の罪に問われたことについて冤罪を主張していたものの、訴えは受け入れられず刑に服していたのだ。

彼は被害者とともに生まれ育った故郷アルテンハイムに戻るが、冤罪を信じない住民たちによって家族ともども村八分にされることとなる。

そしてある日、彼の母親が歩道橋から転落する事件が起こった。

 

クローズドコミュニティ

村の生徒たちが演劇を演じるはずだった日にシュテファニーという少女が殺され、別の少女ラウラも行方不明となったのがそもそもの事件。
泥酔していて記憶のなかったトビアスは、無実を主張するも聞く耳を持たれず、有罪判決を受け服役します。

 

 トビアスやアメリーの住むアルテンハイムは小さな集落で、人の出入りがあまりありません。

同世代の人間は皆同じ学校に通い、誰が誰とどんな人間関係なのかお互いに把握している、絵に描いたような田舎のクローズドコミュニティです。

殺人犯のレッテルを貼られたトビアスは家族もろとも冷遇され、食べるものすらお前には売らんと言われる始末。

よそ者だったシュテファニーはその美貌に注目される一方で一際激しい嫉妬に晒されました。

ビアスが冤罪なのであれば絶対に他に存在するはずの真犯人も、いつまでもわからない。

そんな中で村人の良識を期待するのは無茶なので、引っ越してきたばかりの少女アメリーが活躍して村内事情を探ってくれます。

彼女の親友である自閉症の青年ティースも、物語中の重要人物の1人です。

 

女は怖い

シュテファニーの死を願うくらい嫉妬していたラウラ、トビアスの運命を操るべく糸を引いていた人物、恐ろしい女性が次々出てきます。

まあ男性も充分恐ろしいことをしてる話なんですけど。

個人的には、ティースとラースの母親だったか、歳の割にやたらと若く見えて服装も幼いという中年女性の描写がリアルでひきました。

若く見えるのが不自然で怖いというわけではなく、彼女の内面もまた幼くて、身の周りで起こっていることの重大さを理解していないばかりか、理解する気もなければ行動する気もありません。

こういう態度が許されがちなのは男性よりも女性だというのは、ドイツでも同じなんだろうかと考えてしまいます。

留学中はあまりこういう人が許されるケースはなく、成人した社会の一員なら男であろうと女であろうと自立した存在であるべし、というように見えたんですが。

 

オリヴァーとその周辺

 主人公2人の私生活も引き続き描写されます。

今回はオリヴァーの私生活が滅多斬りにされるうえ、チームの人間模様も無茶苦茶になります。

そちらの展開も予断を許さないため、事件の謎解き以外にも、続きが気になる要素がいくつもあって読みやめられません。

 

おわりに

あとがきを読んで驚いたのが、閉鎖的な村社会として描かれるアルテンハイムは実在するということです。

「アルテンハイムの皆様こんな風に書いてごめんなさい」と書いてあったけれど、じゃあ何で書いたんや…。

それはともかく、シリーズの中でも『深い疵』と双璧をなすクオリティであることは疑いがありません。

本格的なドイツのミステリーをお探しの方にはぴったりの一作です。

 

  

 

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)

 

 

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