本と映画と時々語学

書評、映画評など書き綴りたいと思います。

映画『天使にラブ・ソングを…』

パワフルなゴスペルと笑いに元気をもらえるコメディのご紹介です。

脚本としては大味な感もありますが、それを補って余りあるパワーに圧倒されます。

 

 

あらすじ

しがないクラブシンガーで、ヤクザのヴィンスの愛人デロリスは、ある日偶然ヤクザの殺人を目撃してしまう。

愛人ヴィンスの一味から追われる身になった彼女が警察に保護を求めると、身を隠すために送り込まれたのは辛気臭い修道院だった。

デロリスはストイックで味気のない修道女生活に辟易するが、ある日聖歌隊の指導を任される。

音楽を楽しみ、表現することを教えると、静かで大人しいだけだった修道女たちに活気があふれ、悲惨だった合唱にも変化が訪れた。

ところが、噂の修道院としてTVで紹介されてしまったがために、 ヤクザたちがデロリスを発見してしまう。

 

音楽の力

厳粛で荘厳な讃美歌を歌うだけ、しかも惨憺たる有様のシスターたちを見て、デロリスは最初ドン引きします。

礼拝に参加している人たちも、それが行事の一環だから着席して聞いているだけでした。

しかし、素直なシスターたちはデロリスの指導内容も柔軟に吸収し、次第に歌うことに積極的な楽しみを見い出していきます。

普段から音楽をしている人でなくても、小さな頃からレッスンをしているエリートでなくても、上手に歌えたら楽しいし、自分の表現に他の人が反応してくれたら嬉しい。

素朴な音楽の楽しみ方を思い出させてくれる映画でした。

今までの古典的な讃美歌ではなく、エネルギッシュなゴスペルを歌い始める聖歌隊の、あまりに楽しそうな様子にこちらも引き込まれてしまいます。

教会なんかに見向きもしなかった若者たちも、音楽を聴きに来ます。 

さらに、地域との交流を積極的にするようになって、静かなだけだったシスターたちは見る間に活力を得ていきます。

 

新参者とベテラン

新参者、かつ期間限定で修道女のふりをしているだけのデロリスが活躍することに、良い顔をしない人物もいます。

厳粛な修道院をまとめている院長です。

彼女は、デロリスが楽しく過ごしたがることや、地域との交流をしたがることに反発します。

楽しく過ごすことは規律を緩めることになり、修道生活と両立しないし、地域との交流も(最初は上手くいっても)いずれ壁にぶつかると考えているためです。

ベテランの彼女なので、実際にどこかでそうした経験をしたことがあるのでしょう。

苦労を知っているからこその言葉だと思います。

デロリスは、良い意味でも悪い意味でも何も知らないため、どんどん変化を仕掛けていけますが、その道が長い院長にとっては問題に見えることばかりです。

しかし、そうした葛藤にぶつかった時に手助けできるのは真のベテランしかいないのも事実です。

正反対の二人がぶつかり合い、お互いを認め合うまでの女の友情ストーリーとしても楽しめる映画です。

 

コメディの力

突拍子もない設定の中に、現実要素も少しだけ盛り込みつつ、全体を通してパワフルなコメディ展開に溢れています。

「ヤクザから身を守るために修道院にってそんなわけないだろ」から始まり、

「はすっぱなクラブ歌手がお堅い修道院改革に臨む」という信じられなさ、

ゴスペルと言う音楽の力で何もかもが力強く変わりだす豪快さ、

どれをとっても文句なしに明るく、エナジェティックです。

終盤、世間知らずのシスターたちが、文字通り総力を挙げてデロリスを助けに行く場面は、爆笑と感動を禁じえません。

人の役に立ちたい奉仕の精神を持ちながらも、今まで質素で静かな生活に徹していた彼女たちの、本来のエナジーが噴出しています。笑

 

おわりに

ウーピー・ゴールドバーグの演技に終始惹きつけられる映画でした。

さらに、彼女と仲良しになるシスター3人組や、院長を演じるマギー・スミスなど、秀逸な脇役に固められた作品でもあります。

ゴスペルと言う力強い音楽の魅力もさることながら、音楽は人を変える力があると実感させてくれる一本です。

音楽やコメディで元気になりたいという人にお勧めしたいです。

 

 

 

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映画『カスパー・ハウザーの謎』

生まれてからほぼ誰とも接触せず成長した男性が19世紀のドイツで発見されました。

実話を下敷きに、人間の愚かさや傲慢さを描き出した映画をご紹介します。

ネタバレしています。

 

 

あらすじ

南ドイツのある町で、身寄りのない青年が発見される。

彼は言葉がまともに話せず、歩くこともできなかった。

自分が誰かも説明できない彼は、どうやら生まれてから今まで人間と全く接触せずに生きてきたようだった。

彼に紙とペンを渡すと「カスパー・ハウザー」と書いたことから、その名前で呼ばれることになる。

カスパーは孤児として市に預けられるが、その生い立ちに興味を持ったダウマー教授に引き取られ、言葉や生活にまつわる知識を教えられる。

しかし、カスパーの奇妙な人生が遠方にまで広まった頃、彼を外界に連れ出した人物が再び姿を現す。

 

カスパー・ハウザーとは

カスパー・ハウザーは19世紀のドイツに実在した人物で、本作は実話に基づいた物語となっています。

カスパー・ハウザー - Wikipedia

生まれてから人間と関わることなく育ち、16歳ごろにニュルンベルク市の広場で発見され、ヴェッセルニヒ大尉あての手紙を持っていました。

しかし大尉は彼の身元について心当たりがなく、孤児として市に預かられましたが、宗教哲学者のダウマーをはじめ、カスパーに興味を持った学者たちから言葉などを教えられます。

その後、カスパーは断片的に自分のことを説明したりできるようになりましたが、ほどなくして口封じをするかのように何者かに殺されてしまいました。

カスパーが語ったのは、生まれてからずっと地下牢のような暗く小さい場所に閉じ込められ、おもちゃの馬だけを与えられて生活していたことだけで、彼の身元については判明しないままでした。

 

人間の愚かさや偏見について

カスパーは非常に鋭敏な感覚の持ち主だったことが記録されています。

大勢の人の前に出ることが当初苦痛だったことが、映画の中でも描かれています。

それに加えて、大人しく繊細な心の持ち主である姿が印象的でした。

生まれてから話すことも、人と関わることも知らなかったカスパーは、普通の人間の振る舞いを知らないので、周りから奇異の目で見られることがありました。

彼を笑いものにする人々を見て、カスパーは涙を流します。

言葉がおぼつかず、目の前の状況も、自分の中に渦巻く感情の正体も、それをどうしていいかもよくわからないカスパーには、とても辛い状態だったに違いありません。

みんなが自分のことを笑う、でも笑っている原因はよくわからず、笑いの背後に何か悪意があるようだけれど、一体自分が感じている気持ちは何なのか…という混乱があったでしょう。

そんなカスパーを見て、自分たちのほうが賢いと思って笑う人々と、預けられた家の赤ちゃんを抱いてしみじみと喜ぶカスパーと、どちらが優しい心の持ち主かは明らかなように思います。

また、学者たちはカスパーに神の存在を感じたことがあるか尋ねます。

当然カスパーは「見えない偉大なものの存在」なんて知る由もありません。

しかし、その回答を聞いた学者たちは「これは一体どういうことなんだ」と腑に落ちない様子です。

人間の社会が築いた偏見の中で生きてきた学者たちが、自分たちより遥かに客観的なカスパーを前に戸惑う姿が忘れられません。

 

秘密を握る人物

この映画は、暗く閉ざされた場所に閉じ込められているカスパーが、中年の黒ずくめの男に外界へ連れ出される場面から始まります。

敷き藁があるだけの粗末な空間で、カスパーは話したり抵抗したりといった人間らしい反応は示しません。

しかし、時間が経って人間社会にも順応し始めた頃、再び黒服の男が現れます。

今度は彼を殺すために現れ、淡々とカスパーの命を葬ります。

黒服の男からは全く感情が感じられず、カスパーもまた何が起こっているのかわかりません。

殺害の場面では混乱と恐ろしさを感じずにはいられませんでした。

1人の人間を閉じ込めて人間らしい生活を奪ったかと思えば、今度は放り出し、挙げ句の果てに殺したのが誰かはわかりません。

しかし、カスパーが別の環境なら全く違う人生を送っていただろうと思うと、こうした仕打ちに傲慢さと残酷さを感じざるを得ません。

 

おわりに

静かだけれど重い余韻を残す映画でした。

カスパーの謎に迫ることや、彼の出自について推理をするものではなく、カスパーの周りの人々を通して人間そのものへの洞察を描いた作品です。

哲学的な映画を観たい人におすすめしたい作品です。

 

 

 

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映画『バチェロレッテーあの子が結婚するなんて!ー』

女友達の結婚式前夜に、スレたアラサー女子たちが青春時代を思い出しながら奔走するコメディをご紹介します。

知名度低いけど、SATC的な下ネタがOKな人はばっちり楽しめるコメディです。 

割とネタバレします。

 

 

あらすじ

高校時代の女友達ベッキーが結婚することになった。

高校ではチアリーダーで、同学年の誰よりも目立っていたレーガンは、ふくよかな体型のベッキーが一番に結婚することに動揺を隠せない。

だが、結婚式と前夜のバチェロレッテ・パーティーの幹事、メイド・オブ・オーナーを引き受けることになる。

結婚したいと思いつつその道に進んでいないレーガンと、その友人ジェナとケイティは、バチェロレッテ・パーティーを盛り上げようとするも空回りする。

さらに、ベッキーの体形に合う貴重なウエディングドレスを破ってしまい、翌日の結婚式のために深夜に奔走することになる。

 

三十路の元高校生

高校時代のレーガン、ジェナ、ケイティは美人で派手で目立っていた超絶リア充な女子生徒たちでした。

ベッキーレーガンは長年の友人ですが、自分のほうが美人なのに太めのベッキーが先に結婚すると知り、レーガンは顔面蒼白になります。

ジェナとケイティも、高校時代は輝いていたものの今では私生活の乱れからかスレた感じが否めない様子。

最初はベッキーへの嫉妬半分、お祝い半分の気持ちがやや醜く見えますが、女の友情ってこんなものかもしれません。

ずっと一緒にいるわけではない友人だから、離れて成功している時には少しやっかんだりするけど、会ってゆっくり話せば昔を思い出せるような間柄です。

人生道半ばの迷いと、ヤケクソが入り混じった、何て情けないアラサー女性たちなんだと序盤は思わされますが、我慢して後半まで観てほしいです。笑

 

少女時代と現在の葛藤

しかし、浅薄の極みに見えた3人の女性たちにも、秘密や葛藤があったことが徐々にわかっていきます。

新郎も高校の同級生なので、新郎友人として出席したかつての同級生の男性たちと話したりするうちに、内容が明かされました。

ケイティは外見が良いのでモテてきたにも関わらず、内面を見てくれる人に出会えない、肝心の内面も度々ラリっているため自分にもよくわからない。

彼女を好きだったジョーと再会しますが、ケイティは彼のことを覚えていません。

ジェナは高校時代の元彼と付き合っていた時に妊娠してしまい、中絶したことをずっと自分の中で受け入れられないでいました。

当時の元彼クライドと再会するも、やはり認識の違いに苦しみます。

レーガンはままならない人生に葛藤していますが、やはり日ごろのストレスに負けそうだった高校時代にベッキーに助けられたことを思い出します。

高校時代は、自我は形成されても社会的には大人になり切れず、葛藤の多い時期でしょう。

その時に決定的な戸惑いに直面すると、処理しきれないまま大人になってしまうことも多いのではないでしょうか。

やり残したことや、青春時代の戸惑いにもう一度向き合い、どうにか前に進むアラサーたちの姿がコミカルに描かれています。

前半のバカっぷりとのギャップも手伝って笑、思わず見入ってしまう展開です。

 

目まぐるしくラストへ

真夜中のニューヨークを走り回った彼女たちは、ベッキーのドレスを無事結婚式までに届けることができるのか、

青春時代の戸惑いや悩みは十数年の時を経て解消できるのか、

道に迷ったヒロインたちは新たな方向を見つけられるのか、

終始笑わせつつも複数の気になる要素が走り続けます。

中でも見どころはレーガンベッキーの奇妙な友情です。

二人の間で交わされる激励の言葉が重要な伏線になります。

「他人は気にするな(Fuck "Everyone"!!)」

成長するにつれ、人の目が気になってしまうことは増えてきますが、それを乗り越えようとする二人の友情は映画の見どころの一つです。

 

おわりに

中盤までは「こんな30代になってはいけない…」と思いながら観ていましたが、後半に次々明かされる事実に、最後までじっくり見入ってしまいました。

スレたキルスティン・ダンストが見られる貴重な作品であると同時に笑、意外と数が少ない女の友情ものとしてもおすすめできる作品です。

笑って元気をもらいたいアラサー女性に勧めたい一作です。

 

 

 

映画『百万円と苦虫女』

平凡なヒロインのちょっと不思議な成長物語をご紹介します。

ネタバレします。

 

 

あらすじ 

ルームシェアするはずだった知人に逃げられ、赤の他人と同居したら、トラブルで警察沙汰になってしまった鈴子。

地元の実家に戻るも、前科者であると噂されてしまい、家族といても居心地が悪い。

鈴子は百万円を貯めたら家を出て、遠く離れた土地で一人暮らしすることにする。

縁もゆかりもない土地に行き、百万円貯めるたびに新たな街へ行く、彼女の不思議な生活が始まった。

 

自立しそうでできない若者

鈴子の物語は踏んだり蹴ったりなスタートを切ります。

短大を出たものの就職が決まらずフリーターになり、実家に居づらくなったのがそもそもの発端です。

しかし、ルームシェアを持ちかけてきたバイト仲間は、知らぬ間に彼氏もメンバーに引き入れ、かつ自分は彼と別れて離脱してしまいます。

ひょんなことからその彼と警察沙汰になり、前科つきで実家に出戻りますが、

親からは腫れ物、弟からは邪魔者、学校時代のいじめっ子からは社会不適合者扱いされます。

いじめっ子には反撃できても、家族に迷惑をかけたくない鈴子は、百万円貯めて家を出ると決めます。

20歳ごろの不安定さは、中学生や高校生とは少し違って独特です。

年齢的には大人だけど、周りと比べて自分はうまく自立できていないように見える、

他の人と比べてちゃんと社会人できている気がしない、と焦りを覚えることは珍しくないのではないでしょうか。

本作は、そんな気持ちを持ったことのあるすべての人に観てほしい映画です。

 

そこに人間がいる限り

誰も自分のことを知らない土地に行けば、一からやり直せる、気楽に暮らせると考えた鈴子は、インスピレーションのままに引っ越し先を決めます。

海辺の町、山の中の田舎町、ちょうどいい規模の都会の町などなど。

海辺の町では海の家で夏らしい雰囲気の中アルバイト、山の町では農家の人の距離感に戸惑いながらも桃の収穫バイト。

でも、誰ともつながりがないから選んだはずなのに、なぜか一人で暮らしていてもしがらみができてしまいます。

彼女のことを好きな人が現れたり、若い女性が少ないからと町のPRに担ぎ出されたり、かたちは色々です。

そのたびに鈴子は新たな町に引っ越します。

人の目や、煩わしい人間関係は気にせずに、自分のペースで生きていきたいからです。

他の人のレビューを読んだときに、「ヒロインは自分探しの旅をしているのではなく、自分から逃げ続ける旅をしている」という表現がありましたが、まさに核心をついたコメントだと思いました。

 

自分と向き合うためには

彼女を好きになって内面に踏み込もうとする人が現れたり、理不尽な要求をしてくる人に包囲されたりしたら、その場所を去っていた鈴子に転機が訪れます。

逃げずに向き合いたい男性が現れて、順調に付き合いが始まります。

けれど、彼はどうも鈴子にお金の面で頼りたがっているようでした。

今まで、とことん他人と向き合ったことのない鈴子は、彼との関係をどうしたものか考えあぐねていましたが、そこへある人物からの手紙が届きます。

地元でいじめっ子に詰られたあと、反撃していた鈴子を見て頑張ろうとしていた、鈴子の弟です。

実家では面と向かって鈴子を罵っていた弟ですが、自分も小学校でいじめられており、彼女のように相手にやり返せるようになろうと決意していました。 

どんな叱責より、彼の手紙は鈴子の心に揺さぶりをかけます。

何かが起こるたびに町から逃げ出していた百万円の旅の中身を、鈴子は変えることに決めます。

 

居場所と自分

大人になってある程度の額を稼げるようになると、家や仕事など、自由に自分の居場所を決めることもできるようになります。

何かあったら場所を変えてやり直せばいいと気持ちを切り替えて、人生が上手くいくこともあるでしょう。

でも、一人で生きられる気がしていても、人間の集まる場所で暮らしていればしがらみができます。

比較的簡単にそこから立ち去れることもあれば、 お世話になった人の手前難しかったり、離脱が難しい役割を負っていてままならない時もあります。

留まるも去るも自分の選択ですが、自分が何をしたいのか、何を始めたくてそこへ来たのか、考えることなく進んでいると壁にぶち当たるときがあります。

そんな時に自分の中身と向き合うことを知っていれば、場所がどこであっても逞しく生きていけるのかもしれません。

 

おわりに

あらすじだけ書くとシンプルなのですが、海や山の景色、映像の雰囲気を楽しみながら観ているうちに、最後の転機で鈴子と一緒に涙してしまいました。

山の田舎の恐ろしさはあまりにリアルだったので、監督か脚本家のどちらかがド田舎出身なんじゃないかと思います。

学生さんや、社会人なりたての若者たちにぜひお勧めしたい作品です。

 

 

 

 

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真冬に聴きたくなる懐かしのJ-Pop

真冬に雪が吹きすさぶ日に聴きたい懐かしのJ-Popをご紹介します。

クリスマスソングは除外しています。90年代の曲中心です。

 

 

A Message Song (Pizzicato Five)


A Message Song - Pizzicato Five

子どもの頃にNHKみんなのうた』で流れていたのですが、こんなお洒落な曲を子ども向けの枠に選ぶなんて太っ腹ですね。

ボーカルの野宮真貴さんの艶っぽい声が大好きですが、冬の光景が浮かんでくる歌詞も好きです。

 

Winter, Again (GLAY)


GLAY / Winter, again

2000年ごろの日本を生きた人なら、聞いたことがないはずはないJ-POP名作の一つ。

冬の雰囲気漂う歌詞が秀逸で、ビジュアル系ファンじゃない層からも幅広く愛されたのも納得です。

北海道の誇りGLAYが歌う冬の名曲と言うことで、PVも北海道美瑛町で撮影されています(雪で真っ白だからどこだかわからないけど)

CDの売上が165万枚に達したという驚異的な楽曲。サビがあまりに有名です。

 

White Love (SPEED)


SPEED - White Love

サビから始まるドラマチックさと、当時人気が爆発していたSPEEDの切ないウィンターソングとあってこちらもバカ売れしました。

累計売上は200万枚に達し、SPEED最大のヒット曲です。

常夏の国沖縄出身の4人組でしたが、そんなことは忘れてしまうくらい、寛子と絵里子の透き通った声が冬の雰囲気にぴったりでした。

サビの振付を学校でみんな一生懸命覚えていたのを思い出します。

 

Departures (globe)


globe - DEPARTURES

奇しくも先日話題になった小室哲哉氏と妻のKeiko氏のユニットglobeの名曲です。

globe最大のヒット曲で、累計228万枚を売り上げています。

JR Ski SkiのCMソングになりましたが、それ以外にも多数の場面で使用されたので、「どこまでもーかーぎりーなくー」のサビをご存知の方は多いと思います。

White Love』と同じくサビから始まる大胆さが素敵ですが、こちらはより大人で切ない歌詞や、THE 小室哲哉プロデュースなメロディが印象的でした。

 

やさしいキスをして (Dreams Come True)


Dreams Come True/やさしいキスをして

上の3曲ほどあからさまに冬ではないけど、冬シーズンのドラマの主題歌になりヒットしました。

2000年代のドリカムのシングル最大のヒット曲です。

ドラマの切なさによく合うドラマチックな歌詞とメロディがインパクトありでした。

余談ですがドリカムの吉田美和さんも北海道出身です。

 

M (浜崎あゆみ)


浜崎あゆみ / M

最近、本業で噂になることの少ない浜崎あゆみですが、90年代後半から2000年代の彼女の活躍と言ったら半端じゃなかったです。

歌詞の鋭さ、映像作品のかっこよさ、ビジュアルの美しさ、すべて制してます。

彼女は季節感のある曲や、具体的な場面の浮かぶ曲はあまり多くありませんが、この歌は冬の曲として真っ先に思い浮かびます。

この曲も当たり前のようにミリオンヒットとなり、131万枚を売り上げました。

 

硝子の少年 (Kinki Kids)


1997년 kinkikids 硝子の少年

当時は小学生だったため、ジャニーズ勢の歌唱力の怪しさは気付いてませんでした笑

寒々しい曲調とイケてる作曲と切ない歌詞がかっこよさど真ん中だったのか、178万枚の売上げを記録しました。

 

おわりに

どの曲も懐かしくて涙が出そうですが、調べ直していて驚いたのは売り上げの数字がどれもミリオンとかダブルミリオンとか、少なくても数十万枚に達していることです。

数万枚売れればチャートに食い込む現在とは隔世の感があります。

90年代や00年代は、現在より娯楽の幅が限られていましたし、流行りもの=TVに出ているもの、音楽と言えばデータ配信ではなくCDを買って楽しむものでした。

だから、人気が出てTVに登場したアーティストにはますます人気が集まり、みんなこぞってCDを買いに行くというのが当たり前でした。

それに、ポピュラー音楽を聴く10代~30代の年齢層の人口がそもそも現在より多かったことでしょう。

娯楽のかたちは時代によって変わっていきますが、偉大な作品は今聴いてもしみじみ感動します。

これからも記憶に残る音楽に出会っていきたいです!

 

 

 

AND I LOVE YOU

AND I LOVE YOU

 

 

映画『ホーム・アローン2』

笑って泣けるクリスマスホームコメディのレビューです。

今更な時期ですが!笑

 

 

あらすじ

家族旅行でクリスマスはフロリダへ行くことになったマカリスター家。

昨年と同じように、出発日は寝坊してパニック状態になりつつ家を出る。

混乱の中で末っ子ケビンは、空港で父親と思しき背中を追いかけて飛行機に飛び込んだところ、家族と違うフライトに乗ってしまう。

皆がフロリダへ向かう中、彼はひとりニューヨークに到着してしまったのだ。

折しも、昨年ケビンに撃退され服役中だった泥棒2人組が脱獄していた。

彼らはクリスマスのニューヨークで、売上がピークになるおもちゃ店から現金を盗もうとしていた。

さらに、2人は憎きケビンを見つけ復讐しようとするが、おもちゃ店の売上を守ろうとケビンが彼らに宣戦布告する。

 

相変わらずのケビン

前作に比べるとケビンがフィジカルに成長していますが、可愛さは相変わらずです。

賢さやいたずら心ももちろん健在で、単身ニューヨークについた後も、お父さんのカードと現金で立派にサバイバルしています。

CMでたまたま観たプラザホテルに宿泊し、ルームサービスやリムジンエスコートを使って豪遊します。

子ども1人で泊まっているのかと訝しむスタッフたちも、録音テープや映画を駆使してケビンが撃退。

余談ですが、プラザホテルの当時の所有者だったドナルド・トランプ氏がカメオ出演しています。

ホテルのスタッフが子どもに出し抜かれるような話、お堅い会社なら断られることもありそうですが、さすが柔軟です。笑

また、泥棒2人組との闘いも容赦なくパワーアップしています。

映画じゃなければ泥棒たちは2、3回は死んでいることでしょう。

途中から可哀想になってきます。

 

新しい出会い

ケビンは今回もひとりで大人たちと印象的な出会いをします。

一人目はニューヨークの巨大おもちゃ屋を経営するダンカン社長。

一人で買い物するケビンと、病気の子どもへの寄付を巡る会話を通して、一種の男の友情が生まれます。

この出会いは終盤までの伏線になっており、ダンカン社長は粋な重要人物です。

二人目はセントラルパークで鳩に餌をあげているホームレスの女性。

最初は彼女の暗い雰囲気に気圧されて逃げ出したケビンですが、助けてもらったことを機に仲良くなります。

彼女はカーネギーホールの天井裏でクラシック音楽に耳を傾ける、教養のある女性です。

しかし、かつて信じた人に裏切られた経験から社会との関りを絶ち、自分の内面に閉じこもって生きることを選んでいます。

もう二度と誰にも裏切られたくない、誰かを信じて無防備に心を預けるのは怖い、と思ってしまったためです。

彼女の呟きに対してケビンが言った一言が、前作から通じる本シリーズのメインテーマかもしれません。

「一人になりたいと思っても 一人になるとつまんない」

ケビンはいつも「こんな家族嫌だ」と言いつつ、離れると家族が恋しくなる素直な子どもです。

「人間の心も、使わなければ、本当に使いたい時に使えなくなってしまう」と言われた彼女は、果たしてもう一度誰かを信じて人間関係を作ろうと思えるのかどうかが、映画の見どころの一つです。

 

裏テーマは母の愛

ケビンの他にもう一人、スクリーンに登場する時間が長いのは彼のお母さんです。

前作同様、ケビンを心配して懸命に再会しようと手を尽くす、愛情溢れる姿が描かれています。

大都会ニューヨークを1人で歩いて探そうとする彼女が、警察官と交わした会話にぐっときました。

「こんな大都会で子どもを一人で探そうなんて無理」「警察に任せなさい」という警察官ですが、自らも子どもを持つ親である彼は、「貴方だったらどうする?」と訊かれて「きっと貴女と同じことをする」と答えます。

「息子さんはこんな時、きっとどこに行くだろうと思いますか?」と一緒に考えてくれた彼のおかげで、ひらめきを得たお母さん。

彼女とケビンが再会するシーンは思わず泣いちゃいます。

 

おわりに

舞台をシカゴの自宅から、大都会ニューヨークに移したことで、ケビンのいたずら心も、新しい出会いも大幅にスケールアップしました。

個人的には1より2のほうが好きです。

特にヒューマンドラマ要素が確実に深みを増していて泣けます。

全然関係ないんですが、フロリダに到着したマカリスター家が、現地のホテルでつまんなそうに『素晴らしき哉、人生!』を観ている場面があります。

というのもスペイン語吹き替えになっていて彼らには全く理解不能なためです。

 フロリダのヒスパニック人口がどれくらいなのかわかりませんが、前作パリでフランス語の映画をつまんなそうに観ていた場面と同じだったのがシュールでした。

期待を裏切らない続編として、ぜひおすすめしたい一作です。

 

 

 

映画『アンジェラの灰』

貧しかったころのアイルランドを舞台とした、少年の成長物語をご紹介します。

暗いヨーロッパ映画の代表格と言ってもいいけれど、余韻が残り続ける不思議な物語です。

 

 

あらすじ

アイルランド人の女性アンジェラは、新天地を求めてアメリカにやってきた。

彼女はニューヨークで夫マラキに出会って結婚し、5人の子供をもうける。

しかし極貧の生活が好転することは一向になく、一家はやむなくアイルランドに戻ることとなる。

働かずに酒を飲んでばかりのマラキは家族を支えることができず、彼の代わりにアンジェラがいつも子どもたちのために手を尽くしていた。

貧しい中でもたくましく成長した長男フランクは、進学の夢は叶わなかったものの、やがて渡米して新たな人生を歩むことを考え始める。

 

貧しい生活の中で 

アンジェラの夫でフランクの父マラキは、 無職の酒飲みのため一家は収入がなく、いつも苦しい生活を強いられます。

希望が見えない中で、懸命に生き続けるアンジェラやフランクたちの姿が淡々と描写されていました。

慈善団体か教会かで生活に必要な品々をもらう場面で、アンジェラがベッドの前の持ち主について尋ねる場面があります。

前の持ち主が結核で亡くなっていたら怖いと思ったためですが、係の男性から「施しを受ける側の人間が何で選べると思っているんだ?」と冷たくあしらわれます。

また、アンジェラが生んだ小さな娘は、栄養状態がよくなかったために物心つく前に亡くなってしまったり、

フランクの学力を評価した先生に勧められて、教会に大学進学の相談をしても門前払いされたり、

家族の前に立ちはだかる現実はひたすら厳しく辛いものでした。

 

フランクの成長と青春 

貧しく厳しい生活の中にも、フランクの思春期の成長や青春が描かれています。 

フランクは初めてお酒を飲んだ日、深夜に酔って上機嫌で自宅に帰ってきたことを母から咎められます。

一家を支え切れなかった父マラキのようだったからです。

しかしフランクは、日ごろの貧しい生活でたまった鬱憤を母にぶつけてしまいます。

一家を家に置いてもらうために、彼女が家主の男と関係を持っていることを詰ったのでした。 

翌日、後悔に打ちひしがれたフランクは教会で神父に懺悔します。

決して許されないことをしたと涙に暮れるフランクに、神父が言った言葉が印象的でした。

「自分を許しなさい 愛ある人間になれる」

個人的には、宗教をまったく意識しないで生活していますが、こうした救いのない状況で「赦す」人がいることや、救いを求められる場所があることが、カトリックが生き続けてきた背景なのかもしれないと感じました。

また、少年になったフランクが電報配達員として出会った少女と初恋をする描写もあります。

厳しい現実に晒されつつも、一人の人間としてフランクが逞しく成長していく様子が描かれています。

 

おわりに

貧しさは人間の暮らしや心の持ちように辛い障害をもたらしますが、その中でも母アンジェラを支えながらフランクたちの様子を通じて励まされる作品です。

おそらく、普段映画を観ない方からすれば「こんな暗くて重い話を見て一体何が面白いんだ!」と言いたくなることでしょう。笑

でも、直面した現実が厳しかったからこそ、フランクたちがそれを生き抜いたことに驚き、できることなら自分も強く生きられたらいいなと思えます。

本作の原作は同名の小説『アンジェラの灰』で、原作者のフランク・マコートのその後の人生や、弟と母の遺灰を運ぶ旅を描いた『アンジェラの祈り』も刊行されています。

原作もいつか読破してみたいです。

短いですが、今日はここまで。

 

 

 

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