映画『グランド・ブダペスト・ホテル』
架空の国を舞台とした渋めなコメディをご紹介します。
ある意味クライムコメディでしょうか。
登場人物に強い個性を持たせてストーリーへの興味を掻き立てさせるのはとてもイギリス的な手法だと感じます。
そんなこともあってイギリス映画にカテゴリ分けをしましたが、イギリスとドイツが共同製作国となっている映画です。
ネタバレをかましつつご紹介します。
- あらすじ
- 伝説のコンシェルジュ
- 次々に訪れる新しい展開
- おわりに
あらすじ
ズフロフカ共和国のグランド・ブダペスト・ホテルで休養していたとある作家は、毎日ホテルに現れる老人に興味を示して彼の過去を尋ねてみることにする。
すると老人は少年時代に、このホテルで見習いとして働いていた時のことを語り出す。
彼は伝説的な存在であったコンシェルジュのグスタフ氏の徒弟として、移民後にベルボーイとして働き始めたのだった。
一部の顧客から熱狂的な支持を受けていたグスタフだったが、ある日彼を贔屓にしていた顧客が死んだのを機に事件に巻き込まれる。
ゼロはグスタフの騒動に問答無用で巻き込まれると同時に、彼の苦境を打破すべくともに奮闘することとなる。
続きを読む映画『エヴァの告白』
しみじみと愛について考えたいときにお勧めの映画をご紹介します。
ストーリーはシンプルですが、いつまでも印象に残る映画です。
- あらすじ
- エヴァの強さ
- ブルーノの弱さ
- おわりに
あらすじ
ポーランド人のエヴァは、妹とともに移民するため長い船旅の末にニューヨーク・エリス島へ到着した。
しかし、入国審査で妹だけが病気のため隔離されてしまう。
親戚の迎えもなかったために審査を通過できなかったエヴァは、表向きは興行師をしているブルーノの手引きで不法滞在することになる。
妹の療養費を払うため、ブルーノの仲介で娼婦に身を落とすエヴァ。
信仰と妹への想いだけをよすがに懸命に生きるエヴァを、いつしかブルーノは愛するようになる。
しかし、エヴァの美しさがブルーノのいとこオーランドの目に止まったことから歯車が狂い始める。
続きを読む映画『サラの鍵』
第二次世界大戦下、ナチスドイツに占領されたフランス国内で、ヴィシー政権(ナチスによるフランス傀儡政権)により多数のユダヤ人が一斉検挙される事件がありました。
ヴェル=ディヴ事件と呼ばれるこの出来事を扱ったフランス映画をご紹介します。
- あらすじ
- ヴェル=ディヴ事件について
- ジュリアの視点
- おわりに
あらすじ
2009年のパリ。
アメリカ人ジャーナリストのジュリアは、ヴェル=ディヴ事件の取材をしていたところ、現場付近に住んでいた人物から、ユダヤ人一斉検挙の惨状について衝撃的な証言を聞かされる。
更に、娘やフランス人の夫と住もうとしていた家が、事件時に検挙されたユダヤ人から没収された家であることが判明する。
ジュリアはかつてその家に住んでいたユダヤ人について真実を突きとめようと動き出すも、夫たちはあまり良い顔をしない。
また、第2子を授かったことについても、夫は出産と子育てに否定的だった。
1946年のパリでは、サラという小さな女の子が、両親と弟とつましく暮らしていた。
しかしある日、ヴィシー政権による一斉検挙が行われ、ユダヤ人地区の人々は根こそぎ連行される。
連行先は冬季競輪場(通称ヴェル=ディヴ)。
サラはとっさに弟を寝室の納戸に隠し、鍵をかけて両親とともに家を出る。
すぐに家に戻り、納戸から弟を出して再会するつもりだった。
しかし、サラは両親とともに遠方の収容所へ送られることになってしまうのだった。
続きを読む映画『アンナ・カレーニナ』
ロシア屈指の文豪、トルストイの代表作の映像化です。
これまでにも何度も映画化されていますが、今回はキーラ・ナイトレイをヒロインとした2012年の映画についてご紹介します。
今回初めて『アンナ・カレーニナ』というものに触れましたが(原作は未読)、何度も映画化される理由がよく分かりました。
ネタバレをかましつつレビューを書きます。
- あらすじ
- アンナ、ヴロンスキー、カレーニン
- 対極リョーヴィン
- 舞台演劇のような演出
- おわりに
あらすじ
ロシアの有能な政府高官の妻アンナ・カレーニナは、ある日兄夫婦の喧嘩の仲裁のためモスクワを訪れる。
彼女の美しさに目を奪われた若き将校ヴロンスキーと、アンナは互いに惹かれあう。
忘れるようにと諭すアンナの言葉を無視し、ヴロンスキーはサンクトペテルブルクまで彼女を追ってやってくる。
やがて人目を忍んで思いを通わせるようになる2人だったが、社交界にその仲が知れ渡るまで時間はかからなかった。
続きを読む映画『キューティ・ブロンド』
ヒロインが成長・活躍する痛快なアメリカンコメディをご紹介します。
思い切り笑ってスッキリした展開を楽しみたい時にお勧めです。
あらすじ
学内クラブのスター学生エル・ウッズは、誰もの目を引くルックスとファッションセンスの持ち主。
彼女には将来を約束された恋人ワーナーがいたが、ある日「ハーバードの法科大学院に行くから遊んではいられない」と突然振られてしまう。
彼を取り戻そうと、猛勉強してハーバード法科大学院への入学を目指し始めたエル。
その先には、彼女自身も予想しなかった学生生活が待ち受けていた。
可愛いだけじゃないヒロイン
天然ブロンドと可愛らしい顔、完璧なファッションに身を包んだエルは女子学生の羨望の的です。
ファッションビジネスを専攻しながら、自らのセンスを活かして課外活動もしています。
そんなキャラクターなので友人も沢山おり、こうしたコミュニケーション能力や人脈を作る力が後々にも活きてきます。
序盤では可愛いだけのヒロインに見える彼女ですが、それだけでは乗り越えられない壁にぶつかって真面目に勉強したりします。
また、持ち前の明るさと機転で厳しい状況でも味方や友人を見つけたりと、問題をきちんと解決してストーリーが進んで行くところが見所です。
基本的に育ちが良いので、見返りを期待せず誰にでもぽーんと善意のオファーができるところも彼女の強みです。
ポーレットや、同級生の真面目くんと友好関係ないしは同盟関係を築く過程は丁寧な伏線が張られていました。
可愛いだけで自然と何もかもうまく行ってしまう、という展開ならこんなにファンの多い映画にはならなかったでしょう。
エルが自力で目の前の課題に取り組んでいるところが、ヒロインとしての最大の魅力かもしれません。
第一印象にとらわれないこと
ブロンドの女性は可愛いけど頭が空っぽ、というのは英語圏のメジャーなジョークネタのようです。
実際にヒロインは「頭の良くない残念な女の子」と見られて不本意な扱いを受けたり、見た目だけを目当てに近づいてくる人間に出会ったりします。
しかし、基本的にまっすぐな性格のエルは、悔しさをバネに一念発起し、彼女をバカな女の子だと思っていた学生や教授を見返したり、実力がなければ手にできない実績やポストを手に入れていきます。
自分に対する第一印象を次々覆して行く過程が痛快で、見ていてスカッとすること請け合いです。
また、彼女が本気でぶつかって行ったことによって、第一印象とは違った一面を見せてくれる人も出て来ます。
嫌な奴だなーと思っていたのに、自分が一生懸命やっている姿を見ていつの間にか応援してくれる人になっている。
そうした嬉しい驚きが隠されているのも、この映画の楽しみの1つです。
頑張った成果は思わぬ形で
最終的に彼女は、当初思い描いていたのとは全く違う未来を手にします。
しかし、それもリアルな人生っぽくていいですね。
「こんな自分になりたい!」と思って勉強や仕事を頑張っていても、報われたのは当初の想定と違う形だった⇒だけど結果オーライ、この道で頑張ろう、ということは良くあります。
映画序盤での観客の期待・想定を良い意味で裏切っているところも憎い演出です。
続編ができるのも納得の面白さでしたので、こちらも是非観てみたいと思います。